4:勇者目覚めた振りをする
「ワシが悪うございました、ミイヤンドリヤシュレ・リョイミンデッシャワ王女様」
「ごめんなさいミイヤ様」
「俺悪い?なんかした?ひどくね?特にミイちゃん」
「ああ、うっさいうっさいしうっざい!」
またしても土下座。今度は爺も自然に土下座、しかも隣で真似する少年、彼は当然である。それほどミイちゃんの機嫌は悪いらしい。悪いのかな、と男は不思議だった。機嫌悪いにしては口調もいつもと同じだし顔が赤いだけで般若じゃない。男の方には顔を向けてくれないけど。爺は結局十分くらいで済んだ土下座の後ニヤニヤしていて、少年もやるじゃん、て言ってくれたのは嬉しいが何がやるじゃんなのかわからないし、分かりたくない、と男は思う。しかもどっから見てたかは教えてくれないのだ。首投げされた首はそんなに痛くないのでまあいいんだけど、と男は首を鳴らした。変な風に曲がってた筈。
「まったく、私これでも王女なのですから、不埒な噂は本当に困るんですの」
「噂じゃなくないか」
「ミイヤ様は末っ子アイドルだからねえ。ファン多いし」
「ファン?誰がそのような?」
「母ちゃん」
「うそ!確か王宮騎士団付きよね今?そうかラリルリルレリだったかあ。把握」
「ひい!なんで母ちゃんの名前!今まで笑って何にも言わなかったのに!何で!」
少年の母の命が危ないが、ミイちゃんはもう誰彼構わず当り散らしたいモードであり、男以外に向けている顔が般若つまり半分般若。少年は悲鳴をあげる事しかできない。爺は少年の肩を叩いて首を横に振った。いや、やめよ少年?にっこり笑う爺の胸中はいかばかりか。
というか何故少年がいるのか。ミイちゃんは露骨に話を逸らしたのだった。
「王都に着いたくらいで少年が起きてな」
「ごめんなさい、けどどうしても今日は皆に着いていきたいんです。明日はちゃんと休むから」
「つうわけでワシが守るって連れ帰ってきてな、まあついでに着替えさせたり、明日には全員から報告させますって言って。いやお母さんは可哀想すぎだわ。生きててよかったってギュッてして、はいじゃあまた明日とか。よっぽど一緒に連れてこようかと」
「うん。母ちゃんとは明日も一回ギュってするよ」
なんだか爺と少年が仲良しである。結構な事だとミイちゃんは横目で見ながら、しかしまっすぐ見つめると男が目に入ってしまうので視線を動かすわけにもいかない。大体なんであの時抱きしめてあげようなどデリート!しかし消去エラー。うわあああああああああああああああああ!
ミイちゃんの思考停止波つまり絶叫が全員の思考を中断した。そんなミイちゃんの状態異常「羞恥」は放っておくと大変危険だ。最悪目撃者を全員殺しにかかりそう。
男は男で爺と少年が仲良しそうでちょっと苛つき、「イラつく」という感情の正確な意味が自分でもまだよく分からずに思わず首を傾げる。なんだろう今日は首が曲がったり折れたり酷いやと思った。
そんな二人に何か言うのも無粋と言うものだ。つまり面倒。爺は露骨に話を逸らした。
「後は勇者と戦士を叩き起こすだけだ。二人頑健だしそれこそワンパン入れりゃいいか」
そして爺は、そろそろかな、とそわそわした。わかりやすい。気を取り直し、分かってる分かってるぞと頷く一番バカ弟子とキラキラとした目で爺を見る少年もわかりやすい。うっそ少年いつの間にそっち側に着いたんよ?とミイちゃんは不思議に思ったが、おそらく転移中に「うっかり」爺が何か、具体的には亀の美味なる肉の味などを漏らしたに違いなかった。
バカな男どもだ。ため息ついて眺めているうち、いつしか先ほどの記憶を心の奥底に沈めることにミイちゃんは成功していた。実に何回目のセービングスローだろうか。男達のバカっぽさがボーナスになったに違いないが、とりあえずミイちゃんは自分の努力を褒めた。自力でも他力でも、これはサルベージしないさせない事は既に決定済。
「じゃあ鎧は置いといて、勇者ですかね」
「え、お姉さんはいいの?」
「少年君は知らなくていいこともあるのよ」
遠い目をするミイちゃん。あえて鎧を見ようとしない男。少年は不思議そうだが、爺は気づいた。鎧は置いといて、で何かがビクッと動いた。怖くて直視出来ないのだが爺はそこに触れず、ただ「それ」を少年の視界から匿すよう少し体をずらす。爺とミイちゃん、バカ弟子の目が合った。両人とも黙って目で合図する。意味は了承もしくはよい判断てなんだこれ。
じゃあ起こすか、と弟子がワンパンを勇者の腹に入れた。股間の異物つまり中身入りの兜は極力無視。なお気絶している人間の腹を殴ってはいけないが、相手はもう勇者だからして仕方ない。気絶してる筈の勇者の腹筋はかなり力が込められていたが、男はそれに構わず拳を腹の奥までめり込ませた。親指の付け根までめり込んだので、もう気付けの一撃どころではない。下手すれば内臓破裂で死ぬ威力。
勇者の青年が盛大に呻いて、吐瀉物が顔やら床に落ちる音がした。これは少年の耳を塞いでおいた方がと思ったら既にミイちゃんが壁になって耳を塞いでいたのでよかった、と爺は思う。
そして勇者が目覚める。もしくはやっと目覚めたふりをした。腹に力入ってたし。
勇者は股間に顔を埋める鎧女こと女戦士の涎で汚れる股間に驚き、涎でべとべとの股間から女戦士を持ち上げそっと床に置き、少年が差し出した布切れでまず彼女の顔を拭った。その布切れを枕代わりに女戦士を再び寝かしつけてから立ち上がって、ああ、顔と股間の汚れを拭いてなかった、と女戦士の枕にしていた布切れを引っ張ったので女戦士の兜がゴン、と床に落下した。いやそこは気を遣えよ、と爺。
布切れで顔と股間を拭い、勇者は布切れをポイッと捨てる。枕にするんじゃないの、という男の発言は無視し、勇者はミイちゃんに笑顔で近づいて無事だったかと問いかけ、何だか様子が微妙だけど無事のようで何より、あとは女戦士の復活を待つばかりだな、と言った。だから布切れ、と男が蒸し返す。
爺に向き直った勇者は、剣王様、お初にお目にかかります、私が勇者ですなど殊勝にも挨拶は真面目にした。そもそも伝説の剣王を相手に、初対面の格下勇者から声をかけて慇懃な挨拶をするなんて、とはミイちゃんの解説。だから布切れ、と男がしつこいのだが。
勇者は爺に挨拶をし終わると、女戦士を待つか起こすか、どうする、とミイちゃんに問いかける。ぬーのーきーれー、とゆっくり声を掛ける男に微妙な顔の王女様。王女からの答えが無いので、では起きるのを待つか、と女戦士の隣に勇者は改めて座った。
勇者はその場にいた剣王様の一番バカ弟子である男を、無視し続けていた。
「流石に無視は酷くない?」
「アンタ存在自体がトラウマだから」
「いやいや王女様、ワシも若干怖い。何、何したのお前」
「お爺ちゃん、バカ弟子はね、聖剣をブチ折ったんだよ」
「聖剣?ブチ折った?」
女戦士の脇で優しい笑顔で彼女を気遣う、いや気遣う姿を皆にアピールしている勇者の脇にそう言えば折れた長剣らしきものがあったな、と爺は思い出す。男とミイちゃんと少年と爺は車座で普通に話していた。男と会話してると無視されるため、つまり全員で喋ってれば勇者は黙るのだ。楽でいい。
「なあ少年、なんで少年まで俺をバカ弟子と呼ぶかな」
「悪魔の手先よりマシでしょ。お爺ちゃんが可哀想だからバカ弟子で我慢してあげるよ」
「はああん?少年は何を調子に乗っちゃってるんですかね」
「やめい!」
「うっそアンタ十歳と本気で喧嘩する気なのバカなの死ぬの?」
「酷い」
ちょっと本気で問い詰めたら舌を出して爺の後ろに逃げ込みやがった少年を追うも、師匠から拳骨を、ミイちゃんからは冷たい視線と侮蔑の言葉を賜り大変に胸が痛い男。あ、胸が痛いって不思議だ刺されてもいないのになあ、と男は不思議に思った。そしてすぐにそれを忘れた。
「それで、何しやがった、バカ弟子」
「師匠酷いですよ。お追従ですか?」
「いいんだよお前の弟になるんだぞコイツ」
「はあ?弟子に取るの?」
つい父親に向かうかのようなタメ口。師匠って実は十歳くらいの男の子がお気に入りなの、と皮肉を飛ばそうにもその言葉を口に出す前に爺の本気怒気と本気殺気が飛んできて男は倒れ大地は大きく揺れる。ミイちゃんはミイちゃんで、立ち上がる男に「師匠とられて拗ねてやんの」とか理不尽極まりなく明後日の言葉をかけて笑ってきた。違うよ!と慌てて体全体を振って否定する男に、怒ってた爺も苦笑い。
少年は少年で「僕は、こんな怒気だけで大地を揺るがす程に、ありえないほどに、絶対強くなる」という怪しい信念に燃える目を爺に向けていた。男はそこが少し心配な様子。いや俺と同じどころか多分俺より凄くなるんだろうけどさ、師匠ちょっと厳しすぎる時があるから潰されちゃわないか心配なんだよ、と彼は自分では真っ当で建設的な意見を述べているつもりだった。あくまで主観としてであり、客観はまあ、拗ねてる。
「てい!話を戻すわよ。勇者君は昨日、今まで散々バカにしてた荷物持ちのアンタに、突然ここ第四魔王城に拉致された」
ブツブツつぶやく男に安定の延髄チョップをしてから、ミイちゃんが話を再開する。一回倒れて、首をさすりながら復活した男が答えた。
「そうだね、連れてきたね」
「連れてきたじゃないよ。拉致略取って言うんだよ。犯罪だよ」
「師匠何つう事を子供に教えるんですか」
「ああもう話が進まん!アンタ黙れ」
「ええずるい!少年と師匠は、あ、はい、わかった黙る」
ミイちゃんの顔が一瞬般若に見えた気がして男は黙る。
「それで、勇者君が怒りまして」
「そりゃそだわ。コイツこんなんだし」
「ミイちゃんの方が怒ってたよ」
しみじみと爺は頷き、似たような顔をして彼も頷いた。
普通の人間にとって魔王とはまさしく死の象徴であり、第四魔王もその出現こそ稀ではあるが、穀倉地帯を這いずり回って飢饉を引き起こしたり、なんか我の進路に都があるぞ、よーしすり潰しちゃえ〜と国を滅ぼしたり、亀の癖に無意味に凶悪極まりない。その第四魔王が住まう城など、はっきり言って死地だ。そんなところに連れてくるとかオカシイ。
そもそもがこの百年で数十の国を滅ぼし神獣のごとく人間からも崇拝されるくらいの魔獣、古竜の長である第一魔王を素手で殴り殺して丸焼きで食べるコイツは絶対にオカシイ。本格的にオカシイ。誰がどう見てもオカシイ。
大前提としてミイちゃんは以上のような事を宣った。そんな世界の危機を説明されても、のんびり車座で話をしている四人の空気は変わらない。ダベリ場。危機の原因が二人ほど同席してるからだな。
「第四魔王と言えば、先代の第百八最終魔王の城、ここね、この城を奪い根城にしていることで有名。その巨体から動きこそ遅けれど一度動けば誰にも止められない、魔王界のブルドーザーとも呼ばれる地上及び水中系最強魔王の一角」
得意気に魔王の知識を披露するミイちゃんだったが、男に質問された。
「ミイちゃん詳しいけど、ブルドーザーって何?」
「うそ!いいのいいの!おっかしいな注意してんだけどなあ」
思わず変な知識でも零れたか、ミイちゃんは焦った。
「う、可愛い」
「だから思ったこと何でも言うんじゃない!」
「言った方がいいって言ったのミイちゃん!」
かわいい!うるせえ!そこも好き!やめろお!胸ぐら掴んで怒鳴りあうバカップルを眺める爺と少年。
「ここは第四魔王城、死地って今言ったよなあ」
「そうだね」
しばしのご歓談タイムが終わり、ぜえはあと息をつく二人が落ち着いてから話は再開した。
「さてと。そんな第四魔王城に突然連れてこられて、いよいよ実食ですっ、て叫ばれて。挑戦状も叩きつけた、準備万端だよ、とめっちゃ良い笑顔で宣言されたアタシたち」
「すまんなあ、うちのバカ息子が」
「師匠!」
「てい!」
感動する間もなく、男すら反応できない速度で延髄斬りするミイちゃん。泡吹いて倒れる男と唖然とする爺。ミイヤ様は太股も眩しい大胆なチュニックが恥ずかしいんじゃなかったかなあ、とボンヤリ思う少年だった。
泡を袖で拭いながら男が立ち上がったので再開。
「そもそもアンタは最初の晩の食事に致死量一歩手前の毒入れて三人の疑いを買った男。勇者が上から下から漏れ漏れで草むらを肥溜めに変えたのはアンタのせい。少年と鎧がトイレから出られなくなったのもアンタのせい。あのメッチャバッチイ事件を今更どうとは言わないが、アンタが実は魔王の手先ではないかと疑う声は大きかった」
「具体的には勇者君と鎧と少年の三人のね」
「そうアタシ以外。つまり被害者全員。後ろを歩かせればいつの間に魔獣を引き連れ、先を歩かせれば必ず魔獣の巣に行き当たる。埋め尽くす魔獣を死力を尽くして倒したところでそらよ、と別口引き連れて戻ってくる男。言っとくけど褒めてない」
「それは聞いたなあ、すまんなうちのバカが」
「弟子も息子も消えてます師匠」
「アタシを含む四人が必死に戦う中、何もせずアンタはお茶なんか飲んで実況する始末」
得意気に男を責めつづけるミイちゃん王女様だが、そこに少年が物申す。
「え?ミイヤ様も結構一緒にお茶飲んで解説役してたよね」
「うっそ見てたの?そんな余裕あったっけ少年君?」
「少年、ミイちゃんはきっちりノルマを果たしたからいいんだ。休憩してたんだよ」
「そ、そうよアタシは、ちゃんと半分近く一人で倒したりしてたから。自分へのご褒美よ」
「それで自分の強さに無自覚とかコイツ責めるのって無理ないですか王女様」
爺の的確なコメントには顔を逸らしノーコメントを貫くミイちゃんである。
「ミイちゃんとお茶したり、一緒に実況ごっことか楽しかったなあ」
「やっぱりすごいなあバカ弟子は。真似できないくらいすごいなあ」
「少年やめよ?ワシがまた監督責任とか言われるからやめよ?」
「少年、好きな人に好きと言う素直さが大事なんだって、ミイちゃんが言ってたぞ」
「言ってねえ!」
「言ったよ!」
言った!言ってない!じゃあ言って?テメエわかってふざけてるだろ!またもや胸ぐら掴み合うバカップル。
爺はお茶を用意し、少年がふう、ふう、と冷ましながら飲む。
「おいしいね」
「ここが何処だか忘れちまうなあ」
ぜえはあ、と落ち着いたバカップルに、お茶を渡してあげる爺と少年だった。お茶を全員で啜って再開。
「つまり、散々酷い目にあわせる、とにかく非常識で攻めてくる、何考えてるか分からないアホで、剣王の弟子を名乗るくせに剣を使わない、ぶっちゃけ魔獣引き寄せ係なアンタに日々イライラを募らせ、止めろと言っても何をと聞かれ、バカにしようが柳に風で、地獄のような日々がひたすら半年続き」
「酷いなあ、すまんなあ」
「ある日いきなり絶対死ぬ場所、第四魔王城に連れ込まれというか拉致」
「お爺ちゃん。このバカちゃんとシメてね後で」
「いやいや、まだその死地に居るからね。全員理解してるよね?ワシそこが不安」
「怒りのあまり怒鳴り散らす勇者君とアタシたちの目の前にいきなり現れたのが、身の丈三丈(約9メートル)にも及ぶ雲をつくような馬男」
おっと突然マジ話。そりゃ魔王の本拠地である、敵の一体や二体遭遇していてもおかしくないか。
「おお馬頭が魔王側近とは珍しい」
「牛頭の首を送りつけても返事なかったのにいきなりですよ」
「ああ、反応が無かったってアレか」
うんうんと頷きあう師弟。違う、アイツの部下は誰で何処?みたいなラスボスダンジョン攻略の話じゃないから、とミイちゃん。
「アタシたちは動けなかった」
「僕死んだ、て思った」
「勇者君の聖剣が大きく震えて、女戦士は、あれ何してたっけ戦士ちゃん?」
「すごい!大きいな!て喜んでたよお姉さんは」
「今の話の中で一番怖えなそれ」
魔王側近を前にして普通でいられる人間など限られる。爺は一瞬該当人物に目を向けそうになり、男とミイちゃんに止められた。触れてはいけないらしい。
「アタシはこんなデカいの爆殺したら血まみれになっちゃうどうしよう、てパニックになって」
「やっぱり王女様は意味が違ったかあ」
「使えそうな最大呪文を必死で構築しようとして、そしたらコイツがいきなりその大男の顔面をグーで殴ってた」
「すごかった」
少年がそこだけは真剣に彼を眺めて頷く。ミイちゃんも頷く。突如現れた巨大な馬面を、気づいたらもう殴ってたのだ。轟音と爆風の後、馬頭は吹き飛んでいて、残ってたのはヘソのあたりまでの下半身のオブジェだけでした、とミイちゃんが語る。まあそれくらいなら軽めのジャブでいけるよな、と爺が言い、え?と少年が振り向くがミイちゃんはシカトした。もういちいちツッコんでたら終わらないのだ。
「自分たちが死を覚悟するような怪物が突然現れたと思ったら、それを一発で倒すというか消す。今まで散々バカにしてきた、荷物持ちだと思ってた奴が、しかも聖剣など使わず素手で。勇者君のプライドはその一発で吹き飛んだのだけど、それで終わりにはならなかったのよね」
「勇者兄ちゃんはプライド高いから」
「俺、悪くないと思うんだけど」
三人がてんでバラバラで喋るものだから爺は何がなんだかわからない。
「まあ、剣王様もお弟子様も悪くはございませんが」
「急に嫌に礼儀正しくなりましたね王女様」
「それはもう、勇者様が、よくも今まで俺を騙したな、騙してくれたなあ!と大変身勝手にもお怒りになりまして。そんなん半年も旅して気づかねえテメエがクソだろって話はお聞き入れいただけず。聖剣をお弟子様に向けるなど以ての外とは思いますが、その半分首に刺さりかけの聖剣を指でつかみ、あまつさえ指だけでポッキリ折っちゃったお弟子様は悪くないです。無いです。そう思いますけど嘘でしょ、とは思いますよね」
「指二本でポッキリ折ったら、そりゃ兄ちゃん壊れると思う」
「いや少年、俺、首ガッツリ斬られてたんだけど」
「とまあそういうわけで、聖剣がぱっきりポッキリこれっきり。お弟子様も流石に首半分刺さりかけで、そのままとはいかず勇者様のボディにグーを決めまして。ゲロ撒きちらすゲロ者様もとい勇者様はお前なんか嫌いだ出てけえ!と泣き叫びました」
「ゲロ者様」
さっきも見たな、と脱力する爺である。「半分斬られかけ刺さりかけ」の絵面を思い出して地味に怖かったか、少年がブルっと震えた。
「アタシもまあ、色々あって顔も見たくないとマジビンタ」
「ミイヤ様もサイテー信じらんない女の純情弄びやがって大嫌いとか」
「ゴホン!」
「やめろ少年。アレは俺が悪いそうだ。一生土下座らしい」
「ゴホン!少年も、やだもう帰ると話も聞こえず」
「ごめんなさい」
自分に振られて慌てて謝る少年。誰に謝っているのかは謎である。
「戦士ちゃんは、そういえば戦士ちゃんは」
「泣き叫んでる勇者君を黙って、ニンマリ笑顔でハグしてた」
なんだそれは。爺は弟子の言葉に微妙な空気を感じるもそれを口にはしなかった。
「そうだっけ。まあいいやそれは。それでもう帰る!お前は来るな!出てけ!とコイツを放って四人で城の出口を探しに行ったんですが、あの馬頭みたいなのが来たらと思うと怖くなり、ここに隠れることに」
「俺は、ミイちゃんまで勇者君に同調して消えろ!帰れ!て言うし、少年も泣き叫んで嫌だって。それでどうしていいか分からなくて。気づいたら師匠んところに帰ってました。すいません」
「うっそゴメン。勇者君に取られたと思った?」
「違う!ミイちゃんは俺の!」
「いや待て!違う!そういう意味じゃない!」
ミイちゃんは、少年に師匠取られて拗ねてる男を思い出し、軽くジャブのつもりだったが自爆。男の反論でその意味に思い至りカアッと顔が赤くなる。ミイちゃんがとても可愛いアホの子。
違う!違わない!俺の!やめろ!おれの!わかったからもう!などよくわからない内容で、胸ぐら掴み合う勢いで怒鳴りあうバカップルを見て爺は天を仰いだ。お前らここ第四魔王の城だからって何回も言ってるぞ。
爺が天を仰ぐばかりなので、仕方ないと少年が二人の前に立ち「ねえ、喧嘩するのが楽しい気持ちも分かるけど、場所は考えてね」と説教する。ミイちゃんは男に床に下ろして貰い、その赤い顔のまま土下座で少年に謝った。ごめんなさいと謝るミイちゃんが凄い可愛い、と男が呟きミイちゃんに足を刈られ倒れ、ミイちゃんはさらに少年に諭される。残念なアホの子。
立ち上がった男が「ミイちゃんは俺の友達だし」と拗ね続けて少年に呆れられ、「友達って部分ちゃんと言えよ!」と飛び上がったミイちゃんがまた男をぶん殴ったので、ミイちゃん再度の土下座。王女様の振る舞いじゃない。解せぬとか呟くミイちゃんはもう放置だ、放置推奨という言葉がなぜか心に浮かんだ爺だった。
四人が一斉に咳払いした。話進まねえなあ。
「まあ、というわけで、勇者君はコイツ自身がトラウマ」
「そりゃそだわ」
「正直、勇者君はさっさと消すべき」
「結論早いしエグいです王女様」
「あんな巨人を一撃なコイツに、その場で殺そうとか狂ってるでしょ」
「色々言いたい事はわかりますが、個人的な怒りに任せてそれに同調した魔法使いが」
「それは!だってコイツが。そもそも自分が悪いんだからそっちから追いかけてこなかった、謝らなかったアンタが悪い!」
しどろもどろの言い訳を素早く諦めミイちゃんは見事に彼に責任を転嫁した。いきなり首を締められ慌てる男。少年はこれはイカン、またバカップルに場を乱されると、王女様を無視して真面目に謝ることにした。
「けど、バカ弟子の事、僕も怖かったんだ。僕を責めてるんだってずっと思ってた」
「責めてないだろう少年」
首を締められつつも、少年に答える男。もう「バカ弟子」については諦めることにしていた。だってミイちゃんも師匠もスルーなのだから。
「そうなんだね。けど怒られてるとはずっと思ってたよ、お爺ちゃんに色々聞くまでは。ごめんなさい。僕も怖がらずにちゃんと聞けばよかったんだね。今後は色々聞くようにする。教えてね」
「王女様より少年の方が度量が広いってなあ」
少年は素直に自分の非を認め男の非に触れることなく、謝って今後の関係につなげようとしている。そこに爺は感動した。立場が一気に危うくなったミイちゃんは憮然とする。直前の責任転嫁が悔やまれた。
兄弟子になる男は困った顔だった。素直な少年の謝罪にどう応えればいいのかわからない。考えれば自分が悪いのに年下の少年に謝られている時点で人間として上級の問題だ。人間としてはまだまだ初心者の男に正答なんか出せるわけがない。
「おお、少年の謝罪とは大変気持ちの良いものなんだな」
「茶化すな」
ちょっと恥ずかしくて茶化そうとしたらミイちゃんに怒られたので、仕方なく男は頭を下げた少年の髪の毛をぐしゃぐしゃとかき回して、気にするな、とだけ言った。
言葉にすることの大事さを教えられたものの、この状況は気恥ずかしいったら無い。もう弟弟子、身内なんだからいいんだよ、と言えればよかったのだが、なんとなく恥ずかしい男だった。ふと横を見るとミイちゃんがニヤニヤしており、
「いいって。どうせ弟の教育は兄の義務だから、だって」
と勝手に言葉を補完したので男は更に顔が赤くなり、ミイちゃんの肩を軽く叩いた。止めてよ、いいじゃん、恥ずかしいよ、そういうとこ直すんでしょ、とお互いの肩を軽く叩き合うバカップル。
放置だ。うん、もう関わらない方がいい。少年は何となく理解した。
少年への態度に、男の成長を見る爺である。男自身はまだ気づいていないだろうが、この二日間は彼の人生において、もっとも重要な二日間になっていくのだろう、と爺は彼の様子を見て思う、てか思いたい。うまくまとめてしまいたいな、とは爺の実感。さっさとまとめて帰って風呂入って寝たいよワシ、って考えてた爺に、
「上手くまとめたつもりで、また話が止まってる件」
とミイちゃんが冷酷な現状を報告した。爺は改めて勇者を見る。そうね元々勇者君の話だったね。何も進んでないね。
周りを無視し、戦士、君はいつ起きるんだい、など柔らかな微笑みを浮かべて女戦士の兜から少しはみ出した髪を、くるくる指に巻きつけたりして微笑んでいる勇者である。周囲に薔薇とか舞ってそうな勇者のポーズにミイちゃんがイラついてた。
「けっ、なあにイッケメンのふいんき吹かせてんだかあの野郎」
ミイちゃんが人として間違った言い回し。ちょっと面貸してもらおうか、つうかジャンプしろよ〜とチンピラ風を吹かせオラオラ出ていきそうなので、ここ魔王城だから、と男がミイちゃんを止めた。王女様としてはもう諦めるしかないが、人間としてもその振る舞いはアウトだから。
爺も勇者をよく見たが、いや、勇者の指先はかすかに震えているし、勇者君は先ほどの「ゲロ者様」発言に顔を赤くしてた。恥ずかしいんだよな自分の大失態に。止めるに止められないのかな。困ってるのかな。
「わかっちゃいるけど止められない、て感じかなあ」
「す、スーダラ!」
「え?」
「あ違う!すいません剣王様!つい!」
「いや、何がつい?」
爺の言葉に変な反応をしたミイちゃんだ。いや、懐かしい単語出てくるとつい反応しちゃうって事あるじゃないですかあ、など言い訳するミイちゃんだが全員意味が分からない。ミイちゃんは力技で話を勇者に戻した。具体的には男の首をねじ曲げて勇者の方を向かせる。
「てゆーかさ、剣王様の事知ってたし、もしかしてずっと起きてた?」
「話逸らすミイちゃんも、あ何でもないです」
ありえない方向に曲がった首のまま男が口を挟もうとして、そして黙った。別にミイちゃんに追加で何かされたわけではない。自分から口にチャックだ。なんか学習しだした!と少年は吃驚した。
「多分、トリップも白目も気絶も演技だな」
「では問答無用で消せばいいですね。師匠は少年とミイちゃんをお願いします。俺が送ります」
「うっそ、ダメよ」
ミイちゃんの意向もあり、状況を理解してるならさっさと消して構わないよね、逆らって一生土下座も怖いしと、男はさっさと転移でそこら辺の森の奥に勇者とついでに鎧戦士を放逐しようとしたのだが、当のミイちゃんから反対された。意味がわからない。
「ええ?面倒だからさっさと帰ってほしい、て言ったのミイちゃんじゃ」
「やっぱさ、ざまあしてから消した方がいいのかな、て」
「ざまあ?」
少年が聞くと王女様は、それはもう良い笑顔をニッコリ浮かべて続けた。
「ざまあってのはね、調子こいて偉そうに周りに迷惑かけまくる、弱者を虐待して当然だと思ってる顔だけイケメン貴族やらハーレム大好き色ボケ勇者やらの勝ち組っぽい人たちが、自分たちは勝ち組だ俺たちの勝利だと万歳するまさにその瞬間、一発渾身のボディブローをぶちかまし、反吐はいて蹲る勝ち組を上から目線で貶めて足で頭をグリグリし、歯向かい立ち上がった所を二度と立ち上がれぬようフルボッコ。顎とボディとローキックの嵐。ゲロ吐いてもう止めてください、と命乞いしてくるのを最後まで聞いてから階段からどんと蹴落とし、そのまま底の底まで転がり落ちて足掻きながら泥海に沈んでいく、そんなクズの最後をニヤニヤ見届けてあげる『お遊び』のことよ」
晴れやかな笑顔でなされるミイちゃんの説明。
全員が恐ろしい勢いでドン引きしている。それこそ嘘だろっと男も爺も少年も、聞こえないふりしてた勇者も全員が両手で口を押さえ、絶叫を必死に抑えていた。ガチ怖。そんな恐ろしいお遊びが王宮のどこで流行ってるのか、一体何人が露と消えてしまったのか、そんなツッコミは誰からも出てこなかったし聞きたくない。今の説明、たとえざまあを知ってても怖い。
大胆なチュニックから覗く太股も眩しい、うら若い純情可憐な末っ子アイドル、そして超絶魔導大王女様であるミイちゃんではあるが、とにかくこういうわけの分からない概念や言葉を周辺にまき散らす悪癖があった。
そしてそんなミイちゃんは「ざまあ」遊びをするのが絶対に正しいことだと一旦思い込んだら止まらず、「勇者に最適なざまあ」を全員で議論しようとしたので、いやいやいやと爺も男も少年も引き止めにかかり、勇者も顔色悪く首を振っていた。
ざまあなんて必要無い。今の勇者見てそんなトドメを刺せるわけがない、全員で熱心に抗弁した。持ってる聖剣を荷物持ちが指二本で折ったなんて、勇者としてすでにトドメ刺されきってるでしょ。ざまあ済んでるでしょ。熱弁する爺と少年である。
この半年、こんなミイヤ様の突発的暴走って何回あったっけ、と少年は思った。男に比べれば頻度こそ少ないが、ある意味ミイヤ様の方が悪辣だった。
「だから、聖剣折られてんだろ?」
「はい師匠。それはもうはっきりくっきりぽっきりと折りました」
「バカ兄ちゃんから逃げる時にどっか置いてきちゃったし、今勇者兄ちゃんは折れた柄しか持ってない」
「少年、それはそれとして略し方?」
流石にそこまで略さないでよ、俺はそこまでバカじゃない、という男の抗議は「うっそ、アンタがバカじゃなかったらなんなのよ」というミイちゃんの一言で切って捨てられた。ミイちゃんと少年が、ね〜、と言い合い二人で笑う。あれオカシイなと呟いたら、いやおかしくねえよと師匠からツッコミが入る。師匠も笑ってた。おかしいな、と男。
しかし、なんとなくミイちゃんのざまあ熱が冷めた感じになったので、男が急いで話を戻そうとし、首を傾げた。
「師匠、どこまで話進みましたっけ?」
「勇者をどうするか、だな」
「まったく話進んでないですね!」
「最初からだわ、ずっとだわ。お前らに、そもそも話進める気ないんだわ」
男が天真爛漫に状況を把握し、爺はため息だ。
「勇者が狸寝入りしてた理由って、お前らのペースに巻き込まれたくないだけじゃねえの?」
「失礼な、なぜ複数形なのですか。私極めて普通の王女ですわよ」
「そろそろ王女だってのも怪しいからなあ」
「うっそ!ひど!剣王様がひど!アタシ王女だし!普通だし!」
「もう破門って言いたいくらいだってああ、それコイツにさっき言ったわ。お似合いですな」
「うそ!やめて!」
「今更かよ」
「お爺ちゃん!お爺ちゃん!飲み込まれないで!戻ってきて!」
少年が必死に爺の肩を掴んで揺さぶった。爺はハッと気づいて現世に戻った。危なかった。少年はあらためて男と王女様に向き直る。
「あのさ」
「ごめん!少年君ホントごめん!」
「少年、あまりミイちゃんを責めないでくれ」
「ワシ、それ言う役ワシ」
「そこ!そういうとこ!」
しゅーんとする男と王女様に爺が加わった。
「勇者の兄ちゃんをどうするかでしょ?」
「その通りでございます」
「ごめんな少年」
「ワシ黙る」
「なんかね、ずっと寝たふり、で思ったんだけどさ」
「どうした少年?」
「僕とお爺ちゃんがいなかった時も寝た振りでしょ。いいの?」
おっと少年がミイヤ様に爆弾を落としたぞ。
勇者が「おいやめろ」と呟く声を爺の地獄耳が拾った。爺が振り向くと、相変わらず顔を背けたまま、右手を横に振って否定の意思を示す勇者。会話出来てるじゃねえか。まあ、命の危険ではなりふり構っていられないか。
せっかくのセービングスローが台無しだ。全てを思い出し、さらにアレを全て狸寝入りな勇者に聞かれていた新事実に、ミイちゃんが新たな状態異常に陥る。
「コロス!」
状態異常「羞恥で逆上」に陥ったミイちゃんこと般若が叫び、そこら辺の石っていうか岩をいきなり投げた。勇者が思わず折れた長剣の柄でそれを弾くが、ミイちゃんの魔力が篭められた子供くらいの岩はその場で爆発し、柄が少し欠ける。爆発を避けて脇に飛び退く勇者。勇者に突進する般若。岩と同時に動いていた男は勇者の背後をとっていて、勇者の両脇を抱え込もうとする。勇者は脇に飛びのくが一瞬早く男が勇者の袖を掴んだ。勇者は体勢を崩しつつ袖を引きちぎって離れ、崩れた体勢から前回り受身で素早く立ち上がりつつ、折れた剣の柄をミイちゃんに投げつけた。
般若ことミイちゃんは魔力を左手から放出して剣の柄を弾き飛ばし、魔力の放出で少し崩れた体勢のまま強引に右ストレートを撃ち抜く。既に勇者は避けており、背後の男の顔面にめりこむ勢いのストレート。しかし男は大きく屈んでミイちゃんの右を避けた。
ミイちゃんは右ストレートから体を回転させつつ、軽く跳んで男の背中を蹴った。男も踏み込みに合わせて背中のミイちゃんを飛ばす。二人の息はぴったりだ。勇者に向かって槍のように飛ぶミイちゃん。
空中から前転踵落しのモーションに入るミイちゃんに対し、勇者が両手で踵落しを防ごうとする。ミイちゃんのマントが伸びる。いつの間にかミイちゃんは肩から外したマントを両手で掴んでいた。踏み台になった男もマントを掴んでいる。マントを引っ張りあって、ミイちゃんが空中で一瞬ピタリと静止したように見えて、勇者が眉を動かした。
実際は軽く減速しただけのミイちゃんは軌道をずらし、勇者の首にかかと蹴り。勇者は腕で防御しきれず気合で耐える。蹴った反動でくるりと回り、両手両足で着地するミイちゃん。その脇からダッシュして、男がマントを勇者に投げた。
膨らむマントの風圧でごうっと風が鳴った。
マントを目くらましにどこから攻撃されるかわからない。男とミイちゃんを警戒して一歩下がる勇者。ミイちゃんは屈んだ体勢から左アッパーの構え。
そして男は、マントを目眩ましに再び勇者の後ろに回り込んでいた。視界を塞ぐマントとミイちゃんの蛙アッパーに気をとられる勇者の背中が男の正面。男は勇者の腰を両手で抱えてスープレックスの体勢に入る。
しかし直前、勇者は回転する。勇者と男の体の隙間に両手をねじ込み、男の脇腹に近距離寸勁を連続でぶちかます勇者。反動を利用してさらに回転し、スープレックスする男の両手をねじ切った勇者は、そのまま空高くひねり回転しながら寝転ぶ女戦士の横に綺麗に着地した。ミイちゃんのマントがふわりと床に落ち、遠くでゴスゴスゴスと最初に投げた岩の欠片が落ちる音がして、マントの風が届いた辺り一面が大きく音をたて揺れる。
勇者、男、般若が三人同じタイミングで息を吐いた。ウォーミングアップは引き分けか。
「すごい!」
「いやあ、女戦士はまだ寝てるのかい?もしかして王子様のキスが必要?」
「ええええ!」
目を瞠って叫ぶ少年だが、ここまでやらかしといてイケメンアピールを再開する勇者に脱力した。爺もげんなりしたが、放っておくのも可哀想なので声をかける。
「いや勇者とやら、もういいんじゃねえかそれ?」
「そうか、では止めよう」
勇者がアピールを止めた。素直な勇者に少年はちょっと驚く。
「ミイちゃん、抑えて抑えて、いや勢いで手伝った俺も悪いけど」
「殺す!殺す!殺させて!アイツあれ見たんだよ!ダメじゃん!いやあああ!」
「ミイちゃん!いいから!いいから!落ち着いて!ほら!」
「うそおおおおお!いやああああ!」
一方で状態異常が反転、「激しく羞恥」に陥ったミイちゃんの絶叫も聞こえる。真っ赤な顔して泣いてると思うが、男の胸元で顔を隠してるからわからない。ミイちゃん王女様って凄い可愛いんだなあ、男への態度とかあんなにわかりやすいのに恥ずかしいんだなあ、と少年すらそんな感想を抱いたのだが。
「二人の青春は二人のものだ。言うつもりはないから安心しろ」
すっとぼけた事を言う勇者。ついに言語機能がオーバーヒートしたミイちゃんが、男の胸に顔を隠しながら地獄の底から響くような声ですすり泣き始めたので全員それどころじゃ無くなるのだった。目撃者として全員抹殺されかねないからね。