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天涯記  作者: 浅黄 東子
第2章 ブレリナ国
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日常


さっきとは逆方向である島に向かって私は走った、なりふりなんて構ってられない必死に腕を振り足を動かし荒れる呼吸を見て見ぬふりをする、海がまるで2つに割れているようにしてできた道は銃痕や科学的魔法の使用痕跡が戦いの傷痕が虚しくも残っていた。


既にクリフィオ人と交戦したのかその跡は私を動かすには十分すぎる物理的証拠だ、多すぎる足跡が島の入口に残っているという事はきっと海岸から回れば間に合う、そう思い背中に背負っていた銃を持ちいつでも科学的魔法を使えるように抱きしめた。


バチャン!!!


その音に反射的に視線をそちらに向ければ海にのまれるような形で人が落ちていった、赤色の血を含んだ水飛沫があがり伸ばされた腕も海の中に吸い込まれていく。


なんの決めても無いはずなのに私はそれをアウラと判断してさっきまで大事に抱きしめていた銃を捨て海に飛び込んだ、一生懸命足をバタつかせ落ちた人に向かえば黒髪で顔が見えないが女性が確実に沈んでっていた。


私はそれに手を伸ばし助けようとするが焦って海に入ったせいか呼吸が短くなってしまい酸素を欲するように肺が痛む。


息が続かなくって喉も肺も全てが痛くて苦しい怖い。


瞬間、強い力で上へ引っ張り上げられる驚きのあまり抵抗も出来ず水中から逃げ出せば隣に銀色のキラキラと光る髪が見えた。


「お前!何やってるんだ!!」


海に浮かびながら胸ぐらをつかまれ怒鳴られる、生理的に涙が浮かび上がりポロポロと零れ私の胸ぐらをつかむシルバーを思いっきり睨んだ。


「邪魔しないでよ!!アウラが!アウラが死んじゃうんだよ!?どうして助けさせてくれないの!!」

「お前が死ぬ気か!!?」

「じゃあなにさ見捨てろって言うの!?」


そう言ってもう1回潜ろうと水面に顔を入れるとまたつかまれ戻される、今度は力を強く入れ私を逃がさないように手首を掴んできた。


「離して!!」

「アウラは諦めろ!!」

「っ!?見殺しにしろって言うの!?」

「…あぁそうだ!!」

「いやだ!!離して!!」


私は手足をばたつかせシルバーを蹴ったり殴ったりする、水中だからこそ威力が落ちるがここで力さえ抜けてくれればきっと助けれると思った、何回も肩を掴まれてない左腕で殴り水中で足を何回も蹴る、だけどシルバーは全く離してくれなかった。


「お願い……離してよ……」

「……無理だ」

「お願いだから……」

「いやだ」

「離して…………」

「……」


どんなに頼んでもどんなに抵抗しても離してくれない、次第に疲れが溜まり始め抵抗する力も無くなった、声がうわずり目頭が熱くなり喉が震える。


気づいたら情けなく頬を濡らしていた、声を押し殺し情けなくポロポロと涙を零した、それでも黙ってシルバーは私を抱きしめるだけで「ごめん」とも言ってくれない。


酷い人、寄り添ってくれるくせにあくまで貴方は離れていくのね。


気づけば上の方から「おーい」と懐かしい声が聞こえた、少し上を向けばきっとシルバーから連絡を受けたか何かを察したかどちらかで来たウィンがその背中に科学的魔法を安定させ空中を飛ぶために開発された機械をつけてこちらに向かってきていた。


「うーん2人は流石に重量オーバーか……いや、でも……」

「おーい、もう1つ持ってこなかったのか?」

「あーあるわ」


まるでいつもの様子のようにシルバーは減らず口を叩き笑う、ウィンが自分がつけているそれよりも一回り小さい機械をこちらに投げた「旧式じゃないか」と文句を垂れるシルバーに「コンパクトなのはそれしかねぇーんだよ」と返し何気ない日常を繰り出すように2人して笑っている。


それが私にとっては日常な筈なのに異常に見えて怖かった。


「いきなり音信不通になるから流石のユキノも怒りを通り越して心配してるぞ」

「まじか早く帰ろ、な?シトリン」


いつものような笑顔でいつものような声で微笑むシルバーに胸が締め付けられるような頭が痛むような息が苦しいような生きにくいような何かが私を襲う。


「?どうした?」



喉が肺が痛い。



「ううん、なんでもないよ行こう」


手を押さえつけ差し出された手を握る、後頭部分の痛みが腹を重くさせて手を震えさせる。


「いや、でもなんかあったのか?一気にこの島の生存反応がお前ら以外無くなったから反乱軍の制圧はお前らがしたのか」

「?私達以外の生存反応無くなったの?1つも??」

「??あぁ全部ないぞ?」


途端胃から逆流してくる物の感覚にみっともなく吐きそうになるが抑える、心を包み込む虚無感と孤独感に不安が煽られ上手く手に力が入らない。


「ごめん、わからないや」

「?そうか」


頭をまるで土器で殴られたような感覚に一瞬ふらつきを覚える、シルバーが私を抱えた後上昇しそのまま空を飛び本土の方へ向かう、その間も私はただ呆然と何も考えられるずに流れる景色を眺めていた。


何事も無かったかのように繰り広げられる日常に私はまるで「あの二人が死んでも世界には支障がない」と告げられているようで虚しく感じられた、それとは別に浮かぶ襲いかかるような感情の名前をまだ知らない。


私の世界の時間がまた1つ止まった気さえした。

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