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天涯記  作者: 浅黄 東子
第2章 ブレリナ国
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祈りと願い

きっともうここに帰ってくる事は無いのだろう。




1ヶ月と言う期間は現実味があり、それでいて長くも短くも感じられ曖昧な感覚に少し困惑する、と言ってもこの期間を決めたのは私なのだが……、彼女等が来たことで騒がしかったこの島は何処か寂しげを取り戻したように風の音が支配する、ルチルも日課である散歩に出掛け狭かった家がもっともっと広く見えるのはきっと私の心の弱さなのだろう。




この思い出のある島を出るのは正直、悲しいここに居たいし出来るならここで待ちたいがあそこまで配慮してもらったのにこれ以上の我儘は言ってられない。




そんな事を考えてもう歩き慣れたこの島を心に残すため歩いては止まりを繰り返す、すると羽などが毟られみすぼらしい姿のきっと雌鳥が弱々しく泣きながらその命を終わらせようとする姿が見えた。


儚げにそれでいて弱々しく声を振り絞る小鳥はきっと助けを求めているのだろう、しばらくその鳥は羽を懸命に動かしていたがそれも虚しくだんだんその力は弱まったと思った時、大きな鳴き声と共に綺麗な翡翠色が見えた。




雄鳥であろうその鳥は満身創痍の雌鳥を必死に自身の体と重ね合わせ威嚇するようにこちらを見る、例えどんなにみすぼらしい姿であってもこの雄鳥は雌鳥を助けに来たのだ。




「そうか……」




これが本当の愛してる。




何回も心の中でそれを呟く、それが嬉しくって泣きたくってどうしようもない気持ちに陥る気がするけど、私は何故か勇気づけられたように慣れた道を走った。




″愛してる″


「愛してる」




その言葉が無意識に出て来る、その言葉はまるで魔法がかかっているかのように私の体に染み込むような感覚さえした。




木々をよけ君がいつも居る場所に向かって走る少し洞窟のようになっている場所に行くために駆ければ視界が晴れる、まぶしさに少し目を閉じればそこには綺麗な翡翠色が見えた。




緑とも言えるようなだけどそんな平べったい色ではなく美しく気高い翡翠色、反射するような錯覚さえするその瞳が大好きだった。




「ルチル」




そう呼べばルチルは一瞬唖然としたような表情を浮かべたがすぐにそれも無くなりいつもの様に無愛想にこちらを向いた、私はゆっくりとした動作でブルカをとる、突然の行動に驚いたのかルチルは瞬きを数回すると平然を装うように首の後ろを掻いた。




「私、この島を出る前にちゃんと」




言いたいことがある、と言う前にルチルに手で遮られてしまった。あぁそうだルチルにとっては迷惑だったのかもしれない、こんな事息巻いてするんじゃなかった……っと後悔していると額に冷たい感覚に肩が少し跳ね上がる。




「お前が予定より早く来たからあんまり整ってないが……やる」




つけられた物は残念ながら私からは見えないが額に存在するネックレスのような物は確認出来る、そっとそれを手に取るため触れようとすると私より少しだけ大きく暖かな手が私の手を掴んだ。








バシッ!!!!






「じゃあな」




輝きを持っていた瞳は一気に無機物のような物になりはて私を洞窟へ突き飛ばしたと同時に地面に手をつける、そこから魔法陣の様な何かができその何かは石で出来た扉の様な物になりドシン!!と音を立てて唯一の出口を塞いだ。




塞いでしまったのだ。






……








塞がる間際、ルチルの口角は上がっていた。




「ま、待って」




手を伸ばすがそれも虚しく扉が閉まったことにより光が遮断された空間は真っ暗だった、何もいないはずなのにそこに何かいる気がして、不安と恐怖が煽られていく。




「ッ!!お願い!!出して!!!」




押しのけられたことにより背中を打ち痛む体に鞭を打ち必死に扉に体当たりする、何度も壁を殴り必死に赦しを呼応とするがもうそこに居ないのか返事も何も聞こえない。




もしかしたら、ルチルは私を置いて最初からヴァルレオーネ帝国に行こうとしていたのかもしれない、今日1日あの道は続いているし元々、科学的魔法と言うよく分からない物を持っているのはルチルだけなのだから、持っていない私には拒否権も選択肢もない。




そうか、浮かれていたのは私だけだったのだ。




辛い時も話を聞いてくれて、どんな時にも助けてきてくれて、ずっと支えてくれた……だから私は本当にルチルが好きで隣にいるだけでも良かったのに、ルチルが本当は私のことを邪魔だと思っていたのに余計な事をしたからきっともっともっと嫌われたんだ。




「あは……は……ダメだったよやっぱり私どうしようもない人間なんだ……」




涙がポロポロ堕ちてくる、胸が締め付けられていくように痛い膝から崩れ落ち額にある何にかに手を触れ祈るように握り締めた。




私の体温を受けたからなのかそれは暖かみを出し、寒かったはずなのに暖まる体は何だか励ましてくれたルチルと似ているような気さえした。




謝りたい、本当の気持ちを知りたい。




「……彼に合わせて」




そう願えばまるで意志を持ったように私から離れていくルチルからの貰い物……白く発光するそれがこちらを向くと私はやっとそれが宝石だと理解した。




真っ白で透明度のある綺麗な宝石。




私は宝石に手を伸ばした。




「お願い、ルチルの居場所を教えて!!!」





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