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天涯記  作者: 浅黄 東子
第1章 術士と自由の革命
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力とすべ

ゴゴゴ!

地割れのような音に地面が揺れる、その音はまるでこの世のどんな物よりも重く低く周りの木々が激しく揺れる。瞬間、轟音と共に地面が引き裂かれる、えぐれた地面が俺とシトリンの目の前に迫る。

俺達は左右に転がり避けるさっきまで居た場所は陥没と共に地面だった土の塊が突き刺さっている、砂埃がたつなか黒い影が視界にちらつく、鎧のような鋼色の硬い皮膚が見える。紅色の瞳が見え俺とシトリンが映る。


「やっぱりな、春先になると餌になる春柳魚(はうの)を追ってコイツも海を渡ってくるんだ、コイツにとって陸も海も関係ない。それに春柳魚は好物なだけであって腹が空いてりゃ人も食う、お前1人でコイツを倒せれば上出来だ」

「わかってる」

「それと簡略的に言えば〈魔物(まがもの)〉であるコイツは科学的魔法を使うから気をつけろ」


蜥蜴と鮫が混じったような顔、そして太陽の光を反射するように額から生える角が存在感を出していた。

魔物(まがもの)〉である不竜、その見た目から【竜になりきれなかった出来損ない】と言われてる。その攻撃法方は重力を操る以外と厄介な物だがコイツの最後の調節にはもってこいだった。

シトリンは静かに科学的魔法ファラル増量補助武器ガンブレード型VLN-735を構える。

106000フィナの高価な補助武器なだけに黒い刀身に金と赤の模様と見た目も性能もとても良い物だ、ギルドマスターに無理言って送ってきて貰ったかいがある。


シトリンにある科学的魔法の根源ファラルは安定しない微量なものだが元々奴隷としてつけられた異常なほどの体力と筋力で補い、それに加えVLN-735のファラルを上げ安定化させる効力によってもはやシトリンの敵は少ない。

刃渡り70㎝のVLN-735を軽々と持ち上げ左手で持つとシトリンは疾走する、不竜の科学的魔法〈重増(アビック)〉の効果でシトリンの走る地面は陥没しあたりに木や岩、地面が重力を軽減され浮く、シトリンの足が地面から離れそうになった瞬間、踵からつま先に重心を切り替え跳躍、俺はシトリンの邪魔をすることは出来ないので安全圏である場所に転がり回避する。

シトリンは軽減された重力により人間の跳躍の限界である2m45㎝を越え大幅に跳躍し不竜の目の前に到達する、浮いてる岩を蹴ると同時に不竜の重力操作が停止、急降下を利用しVLN-735を右手に持ち不竜の太い筋肉質な首に振られる。

見事命中。

シトリンは首を落とした勢いで着地する。


「やっぱりな…このぐらいならどうにかなっただろう?」

「…っシルバーちょっと待って…足…足が…じんじんするっ」

「…それがなかったらカッコイイで終わるんだが」

「むりむり」


動くことのない不竜の首と胴体を見て俺は顎に手を置く、やはり子供の不竜だ。案外呆気なかったなと思いぶーぶ文句を言うシトリンを連れて帰ろうと思い半回転するとどこからか足音が聞こえた。

俺は瞬時にシトリンの首根っこを掴み膝を蹴る、後ろに倒れるシトリンをそのまま抱え木の裏に反転、空気を読み静かなシトリンには本当に助かる。そう思いながらも俺達がさっき居た場所に視線を向けた。


「あれ~?ねぇ!!ガナス!!本当に不竜でたの?」

「出てなかったらさっきの揺れは何になる?」

「えっと…地震?」

「馬鹿を言うな」


女の声と男の声が耳に入ってくる、足音の数は二つなのでそれ以外居ないだろう王宮の者なのか鎧のような防具にモリージェリー王国の紋章であるペガサスが描かれてる。

近づいて来たのかその声は段々と近くなって来る、ごくりと俺かシトリンか分からないが唾を呑む音が耳の中で反響するように聞こえた。俺はとっさに得意である科学的魔法応用〈化変(フェキラ)〉を発動。


「あれ?ここ人が居る音しなかった?」

「何を言ってるただの八重烏(やえからす)じゃないか」

「ほんとだ!!あっ見てみて!!向こうに不竜の死体」

「なっ」


俺とシトリンが一息吹いた、シトリンの金色の両目はまるで何をしたの?と訴えるように見えたが今ここで喋れば八重烏が喋った事になってしまうのでそれは俺としてもまずい。ウィンの浮気がユキノにバレた並みにまずい。


「死んじゃってたか…今回のコロシアムで使おうと思ってたのに」

「まぁいい、女王陛下には本当の事を言おう、なにこの近くには鼠が居るらしいからな」


違和感がます。シトリンの事はバレてないのか?と思ったが結論が出た、シトリンはVLN-735を構え引き金を引こうとするのが見えそれを遮る。

シトリンは目的のためなら殺害を厭わない、小さい頃から死体に埋もれるような生活を送ってたからそれもそうだ、人の死に一番疎い者だ。考えたくもないが逃げて来たときに見られた奴全員皆殺しとかやって無くもなさそうで寒気がした。

俺はまだ死にたくない、可愛いお嫁さんもまだ貰ってないから。

そんなことを考えていたらシトリンは察したのか頭を必死に振っていた。


さてここからどう逃げるかと考え相手の行動を見た、1人はがたいの良い高身長の筋肉質な男、その右手には補助武器と見られる科学的魔法ソードブレイク型範囲拡張MJL-225を持ち足と腕だけ鎧を装着してる。

その隣に立つ低身長の女はやけに派手な色の髪以外目が行かなかった。


「じゃあ一回帰るしかないね」


女の一言で再び歩き出す。さっきの2人組はコロシアムと言った、科学的魔法を使うならば俺達の敵になる者だ。


「今、殺った方が良いんじゃないの?」

「流石にそれはユキノに怒られる」

「それは…やだ」


シトリンのやられる前にやっとけの根性は嫌いではない、俺は隣に居るシトリンの頭を雑に撫で歩き続ける2人組を見た、シトリンの透明度の高い瞳が俺の瞳とかち合う、何処かで見たことがあるような視線だが俺はそれがなんだかいつもわからなかった。



「さぁ、シルバー白状して貰いましょうか」


ユキノの鬼のような声が俺の体を3㎜浮かせた、冷や汗が額から頬を伝って流れる。何時間たっても鬼のような形相とユキノの後ろに居るウィンとシトリンの固まり具合は変わらない。


「シールーバーこれは?何かな?」


ユキノの淡々とした平坦な声に俺の肩がもう一度数ミリ上がる、俺はシトリンとウィンの方向を見て助けろと視線を送るが2人は俺と目を合わせようともしなかった。 

大きな段ボール箱をとんとんと叩きながら正座で座る俺に目の笑ってない微笑みで近づくユキノは誰も止められない。


「シトリンの防具と武器はまぁ許してあげる…でもね?何で貴方のヴァルーネ社科学的魔法拡張型人工石も経費で落としてのかなぁ?」


ユキノの低音が俺の心にグサグサと刺さる、しょうがないんだ俺は攻撃型前衛術士ではないしファラルの消費が激しい、シトリンの買い物でたまたまファラル消費制御、後方術士には嬉しい拡張型までついてくる喉から手が出るほど欲しい物が半額だ、手が震えたしいつの間にか購入ボタンも押していた。


「半額だから良いかなぁ~とそれにコロシアムで戦うから必要で即座に買うべきかなぁ~て」

「言い訳は要らない!!」


ユキノの後ろに居るシトリンが数ミリはねる、大丈夫、お前じゃないから、ユキノは一定のリズムで組んでる腕の前腕を人差し指でとんとんと音を鳴らしすぐに辞めたかと思うと俺に薄っぺらい紙を突きつける。


「VLN-735ガンブレード型最新武器106000フィナ、VLN-735の弾5.5㎜二千個90000フィナ、VLN SR型防具一式117000フィナそしてVLN拡張型人工石200000フィナ合計543000フィナ…ヴァルレオーネ政府お金少ないの知ってるよね?このバカシルバー!!」


ユキノの怒声が俺と空気を震わす、どうやらまだまだ続くそうだ。俺を見て笑うウィンにイラッと来るがユキノの怒りの矛先はウィンに突き刺さる。


「そしてウィン!!貴方は三十いったいい大人でしょ!!このバカ止めなさい!!」


ざまぁねぇなウィンと思いながら永遠に続きそうな説教がヒートアップしシトリンはただ瞼をパチパチさせ知らぬが仏と言うような表情をしていた。


 



ペガサスと共に永久の命を宿すと言われる花トール・アルファが描かれている緑色の旗、モリージェリー王国の国旗が掲げられている。

国旗の下には段上に金や銀で作られた赤色が特徴の玉座がありレットカーペットが綺麗にひかれている二段の段差を降りすぐ近くに長方形の大理石で作られた金の装飾がある机があり左右には椅子が並んでいた。

椅子には騎士団団長や数多の貴族が並んでいる、椅子に座り刻々と情報を回していく。


「先のバルカルとの戦争で騎士団の多くの者が死亡、国民の活気も下がりつつあります」

「国家資金も底をつきそうになっている、やはりここはもう一度バルカルと戦い勝つしか道は無い」

「国民を守れずしてもう一度戦うと?それでは豪族の思うつぼだろ」

「いや、今回の自由の革命で豪族が多く集まる、国民の活気もつくし金も入るそれでいいじゃないか」

「バルカルの件はどうする」

「不可侵条約を結んだ方が良いだろう」

「いや、自由の革命後倒しに行った方が良いだろう」


議会だけあって様々な意見が出てくる。段上には高く盛られた髪型の女が座っていた銀色の髪を指でもてあそぶその金色の瞳は気怠げそうだった。


「バルカルの人達が居なくなれば世界はもっと良くなると思うの」


議会が一気に静まる、全員の視線は全て王女に向かう。


「ああ言う人達が野放しになってるなんて信じられない」


王女は玉座の肘掛けに左の肘を置きながら左手で頬に手を置き重心を置き1人1人目を合わせていく、まるでそれ以外無いと言うようにその金色の瞳は自信に溢れてた。


「そうでしょ?ね…?」


少し薄暗い部屋に王女の微笑みと金色の瞳が見えた。

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