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天涯記  作者: 浅黄 東子
第2章 ブレリナ国
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優先ピラミッド

じめじめとする空気が俺に不思議な感覚を覚えさせる、薄暗く足場の悪いこの場所は普通なら嫌悪感をうむが俺は何故か落ち着くような気さえした。

前を歩くジェム族であるルチルは一向に振り向きもせず、この暗い洞窟の中を迷いもせず突き進んでいくと不意にその行動を止めた。


「これ以上ついてくるな…と言うかついてこいなんて言ってねぇぞ」

「アウラに頼まれたんだよ」

「…あいつ」


アウラの名前を出せばそれ以上突っぱねる事をせずルチルは一つ舌打ちをおとして俺を睨んだ。

本当にこれ以上一歩も立ち寄らせないのだろう、俺は一度肩をすくめてこれ以上の侵入をしない意思をみせた。


「わかった、わかったからそれ以上は進まないよ」

「…」


その瞬間、突如科学的魔法第五基礎〈竜巻〉が発動。俺は後ろに一歩跳び下がりこの術を発動させたルチルに激怒を飛ばす。


「危ねぇだろ!!どんだけ信用してないんだよ!!」

「アウラの『大丈夫だよ』並には信じてない」

「お前の基準判断分かりづら!!」

「…おとなしくしてろよ」

「俺は罪人か!!」


鉄格子のように複数整列し並ぶ細い竜巻の間から奥の方へ向かうルチルに怒鳴りすぎて息切れする、あぁ喉が痛い。こいつに何言ってもダメか…と諦めさえ覚えてしまう。

時間だけがすぎここからじゃ何も見えない状況にイライラがます、別の科学的魔法で相殺してやろうかと考え始めるとカランと言う石の落ちる音が竜巻の向こうから聞こえてきた。


「?何が起きてるんだ…」


心からの疑問が口から自然と出て来る、少しずつ竜巻の方向に近づき危険じゃ無い程度に顔を近づけ中をうかがえばまた、カランと石が落ちたのが見えた。

すると今度はぽちゃんと言う音が上の方から聞こえ視線を上部に向ければ水滴が落ちているのが見えた、それはだんだんと水量を増やしていき次第に固体へと変形した。


「鍾乳洞…?」


洞窟が形を変えていく、さっきまで無かった道が出来上がり模様のように側面や上部が変形している、上からぽつぽつと流れている水が次第に湖のような物をつくりその形を幻想的な物へと変えていく。

信じられない光景に開いた口が塞がらない。


「拡張複式型科学的魔法…」


幻に過ぎない科学的魔法の発動で俺は呆然と立ち尽くした。拡張複式型科学的魔法は言わば命に対しての術式だ、この場合広範囲における自然への成長の介入…それは普通ならあり得ない。

命の操作など人間ごときが介入して言い訳が無いのだ、非科学的だが神という存在が居るのなら別だが。

しかしあんな奴が神だったらアウラはとうに神隠しにあってる気がするからそれは無いだろ、どちらかというとこれはジェム族の代々伝わる科学的魔法なのだろうか。


「えげつな…」

「何がだ?」

「うぇあ!?」


突如後ろからの声に俺は情け無い声を上げる、反射神経を駆使し後ろを見ればまるで「こいつ何やってんだ」っと言う顔をするルチルが居た。

ルチルから一番近い洞窟の壁は入ってきたときには無かった穴があり、一人心の中で納得した。


「お前…こんな広範囲に科学的魔法かけられるなんて相当やばいな」

「…言っとくがここまで来るのに4年と11カ月と7日かかってる、一日だけでこれを作れると思うな」

「何その執念」


どうして今まできっちり数えているのか凄く不思議だが律儀な性格をしているのだろうか、今更だがジェム族は東よりなのだろう洞窟の中でも見える黒色の髪は銀髪の俺から見ると凄く羨ましい、よくしらがと言われる分黒髪や金髪には正直憧れる。


「にしても綺麗だな…」

科学的魔法〈竜巻〉が解かれ、向こう側の光景がはっきりと見える。

「…洞窟の成長を上げているから触ったら老けるぞ」

「おい、そう言うの早く言え!!」

鍾乳洞の地面に触れようとした手をすぐに引っ込める。

「……嘘だ」

「この野郎!!」


全くもってこの男が何を考えているか分からない、ルチルは俺のことなど一切気にもせず元来た道へ向かおうとするので追いかける、正直洞窟の中で彷徨って餓死なんて一番嫌だ。


「(アウラに少しは構ってやれと言われたが…これでいいのか?)」



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