必要な
「?じゃあシトリンちゃんはモリージェリー王国から来てシルバーさんはヴァルレオーネ帝国から来たの?」
「そうだよ、と言うかそのままシトリンで良いよ」
「あ、本当?嬉しい」
「私もアウラって呼んでいい?」
日常風景の一枚を切り抜いたような、俺からしたら何とも言えない空気の中シトリンは速くもアウラと打ち解けていた。こんなんで良いのかよ…と思うが話が穏便に行ってるので文句は言わない、俺は取り敢えず案内された彼等の家の中を見ていた、二人分にしてはやけに大きい部屋は木材で作られており壁には落書きがされていた、耳を傾ければ何処からか水の音が聞こえ外から入ってきている木々が風に揺られる音が不思議と心を落ち着かせているように聞こえた。
俺は壁に寄っかかりながら立つルチルの表情を盗み見ようといた時、緑色の瞳とかち合ってしまう、-273度以下の絶対零度の瞳に顔が引き攣るがタイミング良くアウラが話しかければ何処か表情が柔らかくなるのにたいして何処か納得感を感じた。
さっきといい今といい、ルチルと呼ばれる男にとって優先順位ピラミッドの頂点はアウラなのだ。
あぁ怖いと肩をすくめてシトリンを見る生き生きとアウラと瞳を輝かせながら笑い合う姿はとても楽しそうに見える、正直、このままの方がいい気がする…このままの方が幸せな気がする。
「あれ?でもどうしてここに来たの?」
「えっとね、あーシルバーパス」
「俺かよ」
話を振られた瞬間意識が戻る、俺は誤魔化すように苦笑いを浮かべた。
「ま、簡単には科学的魔法所有者は差別とか多いから差別が無い場所に…つまりヴァルレオーネ帝国で保護しましょって言う感じの奴だ…」
「へー、断ることは出来るの?それ」
「…いや、今までに前例が無いからな…その場合は上に掛け合って見るが」
首をこてんっと右に傾けたアウラは一度ルチルの方向を見て俺達を交互に見た。
「もしかしなくても…ルチルかな?」
「…」
沈黙。嫌な雰囲気が漂い緊張が張り詰める、ルチルはただ何も言わず静かに寄りかかるだけアウラは顔を伏せるようにして強く拳を握り締める。
「っ…離れ離れは嫌だなぁ」
振り絞るような声に肩が跳ねる、アウラのグレー色の瞳が少し見えたと同時にその瞳から一滴、涙が溢れた。なんか言わないといけないのは重々承知だ、しかしこういうときどう声をかけて良いかは全くわからない、どうする?どうする…。
「だ、大丈夫だよ!!あの、あれそう、あれ、えっとルチルとアウラどっちも一緒にヴァルレオーネ帝国に行けるようにするから!うん…ね?シルバー」
パニックに陥るシトリンが意味の無い言葉を多用しながら焦ったように俺に聞いてくる、俺もそこではっとなり取り敢えず高速で頷いといた。
「衣食住も職業もあるし、離れ離れはないぞ…うん」
「ほ…本当!!?」
「おう」
「うん」
嬉しそうに体を揺らすアウラにルチルは溜息をつく、正直自国を植民地にした国に行きたくないとか言われると思ったが取り敢えず安堵する、問題解決任務完了。肩の力が抜け背伸びをすれば嫌に痛かった胃痛が無くなる。
「あれ?でも、どうするの?」
「へ?」
「だって多分一時間たったから道閉じてると思うよ、ね?ルチル」
「普通に考えてあそこはもう通れないな」
小さな小窓を指差すルチルの指の方向を見てみれば先程俺達が通っていたあの道は海に飲まれていた。
さぁっと血の気が引く感覚が俺達を襲う。
「因みに…次の干潮時はいつ頃だ?」
「…一ヶ月後…だよね?ルチル」
「あぁ」
シトリンと俺は今きっと、2本の角を生やし金棒を担ぐユキノとその隣でにやにや嗤っているウィンが居るところを想像しているだろう。




