理由と意味
「君達にはここに行って欲しい」
そう言って指された場所はセビア地区と言われる黒人の中でも比較的白人に近いニア人と呼ばれるもの達が住む地域だった。白人に近いという理由から奴隷狩りはされておらず比較的優遇されている人種だ……いや、1つ訂正させて貰おう、奴隷狩りはされていないと言ったがそれは少し解釈が違う、白人に近いから奴隷狩りをされなかった訳ではなく、彼等がヴァルレオーネ人にとって都合の良いもの達で彼等に奴隷狩りをさせていたからだ。
引き攣りそうな頬に力を入れて無表情をよそおう、なんて面倒くさい配属先だと嘆き奥歯を噛み締めた。
「了解しました」
やな役回りだ。
森の中、ただ私は迷子になる、
木漏れ日が私の心を冷やす、
ここが何処かも何もわからない……
でも大丈夫、貴方は私を見つけてくれるから。
『君を愛す』著者 不明
自然に囲まれた中で俺達が野宿する羽目になった理由は俺達の精神衛生上しかたのないことだった。セビア地区についた俺達は別にその地域にいた人々に厄介な目で見られたとか軽蔑されたや暴力を振るわれた訳でもない、じゃあ何があったかと言えばさっき言ったやつの逆……めっちゃ歓迎されたのだ。
それはもう、祭りでも始まるのかぐらい歓迎され俺らの良心に思いっきりダメージを負わせたのだ。その後はもう必死に言い訳をして架空の任務まで作ってあの場を離れた訳だが野宿……野営となると昔の感覚のせいかどうにも寝付けず寝てるユキノ達を起こさず海岸付近を捜索していた。
「ねっむ」
欠伸を1つ落としながらゴムのような匂いが漂う海岸付近を歩く、じゃりじゃりと言う音が波の音を響かせるだけの空間に響いた。
視界に映る景色は何処か単調的でいて幻想的だった、青と言うには何処か間違っているようなどちらかと言えば空色に近いような海の色は夜だからか不思議な雰囲気を作り出している。
静かな空間だった。
「わぁ!!」
「……」
「え?無視?」
一つ溜息を溢しながら「シトリン」と言えば金色をなびかせながら満足げに微笑むシトリンがその顔を邪悪にし悪戯っ子のような笑顔を浮かべた。
「お前…今何時だと思ってるんだよ…」
「そのままそっくり返して良いって事?」
「あー、困る」
「まぁ、1人より2人の方が何かと良いでしょ?」
「俺は迷子か」
そう言えばシトリンは一瞬キョトンとして瞬きをすればこれまた楽しそうに笑い始める。コイツの深夜テンション大丈夫か?と心配が心の中に垣間見るが敢えてここは触れないようにしとこう。
すると笑っていたシトリンは急に大人しくなり何処か遠くの方を眉間に皺を寄せながらじっーと見始める。
「あそこ、誰か居ない?」
「ん?」
「あの孤島の所」
言われるがまま目をこらせば確かに遠すぎて男女かわからないがぽつんと誰かがそこに居た。しかも海に向かって歩いているではないか、しかしその者が海に沈むことも無ければ足を取られる事も無くまるで地面を歩いている様に俺達は頭に疑問符を浮かばせた。
「ん!?」
「え、シルバー私達どうやら寝なさすぎたみたいね」
「馬鹿なこと言ってないで行くぞ」
バシッと軽く叩き、目を擦るシトリンを無理矢理覚醒させ走り出す、気がついたようにシトリンも俺の後ろを走るがその顔はまだ状況を理解出来てないようだ。
「もしかしたら、科学的魔法所有者かもしれない」
「え!?海を平然と徒歩で渡れる科学的魔法てあるの!?」
「……ノーコメントでいいっすか?」
「知らないんかい!」
切れの良すぎるツッコミに紛らわせるために少しスピードを速くすれば、道連れと言わんばかりに俺の腕をシトリンが掴む。
「速いんだよ…!」
「なんでちょっと切れてるんだよ!?」
「か弱い女子なめるなよ」
「か弱い(笑)ってつけろ」
冷や汗をかきながらも無人島から一直線上の場所を目指す、恐怖と好奇心の混ざった思いに心なしか足の回転数が増えていく。
島がはっきりとその大きさを理解できるほどの距離になったとき隣から驚くような感激するような声が聞こえた気がした。
「そう言う事か…見つからない訳だわ」




