英雄
シルバー・オーラ_ヴァルレオーネ帝国直属軍事ギルド少佐、色んなことに巻き込まれやすい体質。
シトリン_元モリージェリー王国の思想家アンソニー= サウスオールの奴隷、残酷な幼少期を過ごし性的暴行を加えられていた美少女。現ヴァルレオーネ帝国直属軍事ギルド中尉。
ウィン・ルアーム_ヴァルレオーネ帝国直属軍事ギルド中佐、不幸な夫。
雪乃・ルアーム_ヴァルレオーネ帝国直属軍事ギルド大佐、不幸な妻であり東洋の国出身。
ルーマ大陸の最南西端にあるブレリナ国は俺達のすぐ目と鼻の先にあった、国境近くの拠点である要塞は肌寒さと静けさに包まれていた。ブレリナ国もと言うかルーマ大陸の殆どが植民地地帯故か家らしき物はあっても人っ子一人居ない、目にとまる物干し竿にはただ風に吹かれるだけの持ち主を失った服だけが虚しく残っている。
整備されていない道を歩きながらコンクリート剥き出しの要塞に向かって歩いた、風が少し強く音を立てながら吹く自分の隣にいるシトリンは髪がなびいて顔に当たるせいか少しふてくされていた。
「髪が口の中に入る」
「きゃ~の1つくらい言えるようにしろよ」
「きゃ~~」
若干棒読みのようになるシトリンを見て、溜息が出そうになる、そんな会話を見かねてかユキノが「ほら、シトリン少し止まって」と手首についていた髪ゴムで高いところに髪を結わいた、心なしかシャッター音が聞こえたので後にいるウィンの足を自分の全体重で踏んだ、小さな悲鳴なんて決して聞こえていない。
「シトリン、飛び跳ねるのも良いが少し落ち着け」
煩わしさが無くなった事への喜びを体全体で表現するように俺の隣で跳ねる、背負っている歩兵用の銃剣の金属音が耳小骨を揺らす、もう一度強い風が吹いた。
「いだ」
束になったシトリンの髪が俺の左目を攻撃する、その様子を見てシトリンは最初こそ不安げにこちらを見ていたがウィンが俺を指差して笑っているのをみてユキノと一緒に釣られて笑っていた。そんなことをしていればすぐに要塞につき、室内の温度と外の温度の差には身震いを起こした。
「うぇ」
「なんだその新しい言語」
「名付けてシトリン語」
「ネーミングセンスよ」
そう言って言葉を交わしていると中から生真面目そうな金髪の軍帽を目深に被る30代ぐらいの男_一般兵士がこちらに向かって目の前で敬礼をする。
「長旅ご苦労様です。ランク=ドレッセル大佐がお呼びです」
「ありがとうございます、軍事ギルド科学的魔法第三部隊隊長ユキノとこちらウィン、シルバー、シトリンです」
「了解です、ご案内いたします」
コツコツと廊下を歩く音が静かな要塞に響きわたる、人通りの少ない廊下にしかれる赤色のカーペットの上を歩いた。その奥にある大きな扉は重々しい雰囲気を醸しだし中にいる人物が偉いことを指すように金箔が扉の淵を彩っていた。ルーマ大陸は金銀などが多くとれる事もあってさしてそれは気にもならなかったが拭えない違和感だけは心に突っかかっていた。
一回、二回とノックする、トントンと叩かれる大きな扉から男の声が聞こえた。
「入れ」
それだけ、ただそれだけ言葉が告げられる。少しずつ開けられるその扉はギィイと言う音を立て開く、複数人の陰が見え中央にある机には世界地図が載せられ積み上がる書類が視界にちらつく。
その奥に椅子に座る50代くらいの男が煙草を吸いながら銀色の瞳をこちらに向けてきた。
「ようこそ、軍事ギルド第三部隊諸君。私がここを管理しているランク=ドレッセルだ」
不敵に笑うその男は紛れもなく軍で唯一科学的魔法を使える部隊で生き残った指揮官であったヴァルレオーネの英雄と言われた男だった。
「英雄…」
その言葉が俺かもしくはウィンかはたまたユキノからなのか零れた、それを聞いて少し眉をひそめるがすぐにそんな表情は消えてがははと言うように口を大きく開けて笑った。
「そんな硬くならなくて良い、それは昔の事だ英雄と呼ばれる割には何もしていないしな」
「生き残っただけでも十分戦果ですよ」
「いや、俺は戦友を救えなかったそれでは何もしなかったのと同然だ」
「…」
ユキノのフォローをランクは悲しげに否定する、少しうつむき老いた両手にあるシワをもみ溜息をつく姿は最初のイメージを変えるには十分だった。
「いや、感傷に浸っている暇はない…それよりもこれからを話そう、そこにいるお嬢さんも初めて聞いたのだろうすまないね」
そう言って話に置いてきぼりになっていたシトリンを気にかけるとシトリンは場をわきまえてかすぐに頭を下げる。すると良いと言うように手を振ってみせ微笑んだ。
「英雄と言われても人殺ししかしていない、そんなにかしこまる必要はないお嬢さんの目の前に居るのはただの大罪人なのだから」
「ランク大佐!!」
その言葉にいままで黙ってきた幹部達なのだろうか、眉に皺を刻みじっと睨む、その瞳の奥には怒りだけでは無い悲しみさえ漂わせて居るのだからこの人がいい人だっと言うことぐらい理解できた。
「冗談だ」
「冗談でも困ります」
困ったように笑うランク大佐に少し緊張がほぐれたのか胃にあった圧迫されるような感覚と痛みは消え去りどうすれば良いのかわからない空間に戸惑いユキノに視線をむけるが何処か呆けているので助けを求めることを辞める。
自分から視線が外れた事を確認してから少し申し訳無さそうに俺の袖を引っ張り意識をこちらに向くようにと指示され視線だけ動かしシトリンを見た。
「英雄とは」
「後でな」
納得したようにシトリンはそれ以降ただ頷き、まるで本当に聞いてます見たいな顔で時には瞳を潤わせ話を聞き流していた。いつからこいつは演劇力を上げたのだろうかその疑問が少し頭に残るが今はランク大佐の話を聞くことに専念する事を優先した。




