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天涯記  作者: 浅黄 東子
第1章 術士と自由の革命
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頭を柔軟に

時間は楽しければ楽しいほど過ぎるのが早いらしい、あっという間に一ヶ月が過ぎ去ると私は軍事ギルドになれてきて、ラルもよく家に友達を連れてきて楽しそうに遊んでいた。一ヶ月の間それはもう沢山の思い出が出来ていた、ラルの学校の授業参観に行ったり友人が出来た事により学校の寮に泊まりたいとねだられユキノと一緒に頭を悩ませた。結局ラルは寮に行くことになり週の最後に必ず顔を見せることを約束させた。


しかし、楽しいことだけで生きていけるかと言うとそれもまた違う、私は独自のルートを持っていないのであのモリージェリー王国であった男の約束を果たすために長いこと苦労をした。下手にバレたらなんか申し訳ないので必死にユキノ達などにバレないように書店で心理学の本を読んだが本当に大丈夫なのか分からない。


取り敢えず今日も何の成果も無いと思うけど初の国立図書館に行こうと思う、戸籍表を作るのにこれだけ時間がかかるとは思いもしなかったので一ヶ月お預けだった国立図書館に行こうと考えたのだ。


つくと先に見えたのは格式の高い雰囲気を出す階段の向こう側にある白と金色の美しい扉だった。本当に入って良いのかと迷うが他の人達が遠慮なく入っているのを見て、決心する。中に入ると大理石で作られているしっかりとした柱が思った以上に高い天井を支えている空間に開いた口が塞がらない。天井に生き生きとそして存在感を出すように天使や女神が描かれている様は美しいだけでは言葉に仕切れない気さえする。


本棚にこれでもかと敷き詰められてる本を見ると自然と頬骨が上がるような胸の奥が熱くなるような感覚さえ感じ始めた。


入ってすぐの場所に読書スペースとして存在する椅子や机などの家具でさえこの空間を引き立てるためにあるとさえ考えてしまうほどにこの国立図書館と言う空間は私にとってとても幻想的であったのだ。


浮かれる心を静めて私はさっそく本棚に詰め込まれている沢山の本の背表紙を見た。本棚に現代文書や哲学書、宗教書、軍事書…本だけではなく所々に置いてある天体儀など全てが私を舞い上がらせてくれるほどのとても楽しい知識だった。


時間さえ忘れてしまえる、そんな時にそれは偶然にも見つけられた。軍事関連の地図も多数所蔵されている所に大戦の時に使われた地図を発見して広げてみたら大戦の時の作戦の紙が入っていた…と言うよりも、クリップで丁寧に挟まれていた。


私はとても嬉しく思った、こんな素晴らしい所に来れただけでも良かったのにこんな収穫があったとは…と私はそれらを持っていたメモ帳に書き込み地図全体と軍の暗号メモをも全て書き込んだ。 


正直、ヴァルレオーネ帝国に居ても【迷彩の鴉】は見つからないと思った、別の国の人の話なら尚更…でもこう言う大戦とかに参加していたとしたら…そしてその大戦が連把戦争だったら。不可侵条約を結んだけど元敵国にあの男がいけるわけ無い、全ての問題が解けたように感じそれと比例するように頭の中がすっきりしていく、近くにあった鏡に自分が映り軍事関連の本を返すために持っていた本が鏡の中の自分も持っている、当たり前だが私は達成感によって胸の奥が熱くなってる為かその事がよくわからないが嬉しく少し声を縮めてニヤリと笑った。


「頭良い」


少し反省しよう、調子に乗りすぎた。少ししてから顔に熱が集まっていく感覚に私は急いで本を元の場所に戻してそそくさと図書館から出て行く、目的も果たせたことだしそこら辺のカフェにでも行って解読するかと意気込む、一ヶ月間何もせず居たわけでは無い、迷子猫のお届けやら鳩の駆除など本当にこんなの軍事ギルドがやる?て言う仕事を何度もした…いや、訂正しよう。サボろうとするシルバーを何度も捕まえた…そのおかげでギルドからちゃんとしたお給料も貰ったし…なんかシルバーを捕まえる以外何もしてない気がするがそこは敢えて無視しとくことを宣言しよう。


しかしここで想定外の事が起きてしまった、ゆっくりとくつろぐ筈だったのに何処から情報を得たシルバーが私を見つけてしまったのだ、今日はちゃんと有給とったのに何故かシルバーは眉間に眉を顰めて申し訳なさそうな顔をしている。


「もう最悪」

「し、シトリン?」

「本当に最悪だよ、有給が潰れた絶体」

「いや、あの~後でケーキ奢ってやるよ…許して下さいよ~」

「何が有給だよ、全然違うじゃん」

「シトリン~頼むわ~」

「…貸し1な」



シルバーの居る方向とは逆を向いて呟くとすぐさまシルバーは私が紅茶とクッキーを頼んだ伝票を手に取り走って会計に向かった。流石と言うか何というか呆然とその行動を見ていたら後ろからクスッと笑う声が聞こえて振りかえると焦ったように店員さんが頭を軽く下げる。


「すみません」

「いえ、全然」

「仲良しなんですね彼氏さんですか?」

「あっ断じて違います、と言うかこっちから願い下げなんで」

「ふふ」


そう言えば店員さんは楽しそうに微笑み、「ご来店ありがとう御座います、またのお越しをお待ちしております」と丁寧にそして綺麗に頭を下げる。私も少しぺこりと頭を下げてシルバーの元に行った。


「一ヶ月後の任務で行くブレリナ国に不穏な動きがあると言ったな?」

「うん」

「それで昨日未明にブレリナ国に白人の男が何かをしている所が見えた」

「?ブレリナ国って黒人しか居ないんじゃないの?」

「あぁ、アルビノ…先天性白皮症と言う遺伝子を持つ黒人も居るんだがそれとは違う、否…白人と言うのも違うな、発見者が言うにはもしかしたら…いや、これは後で話そう」


そう言うシルバーは少し早めにギルドの方に向かう、私もそれに必死に追いかけいつの間にかギルドへとついて少し段差の高い階段を上り科学的魔法第三部隊会議室に入る。そこには暗くよく見えない写真を黒板に貼り付けるユキノが張っていてウィンが小難しい文字を書いていた。


「あら、来たわね、ごめんね有給の時に」


ユキノがそう言うと私を気にするようにちらちらと表情を盗み見るようにするシルバーをじとっと睨む。


「全然大丈夫、いつでも呼んでね」

「ふふ、シトリンは本当に優しいね」

「あの!!異議ありなんですけど!!」

「おい、シルバーこっち書いてくれ」


ぴょんぴょんと跳びはねるシルバーに何かを書き込むウィンが頼み事をすると渋々手伝いをする。私は心の中でシルバーを鼻で笑った。


「それじゃあ、一ヶ月後の任務の話をするわ」

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