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天涯記  作者: 浅黄 東子
第1章 術士と自由の革命
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喜びの共有

世間一般では学生は学校へ、働き者は会社に行く時間。皆が生きるためにはたまた自分のために活発に動く時間帯…大体、朝の9時から10時に私はと言うとラルの見送りをし終わりその足で軍事ギルドに向かっていた。


スーツを着ているからなのか暑すぎるとさえ感じる胃がむかつき異常に喉が渇いた、腕時計をチラッと見て早い時間帯についてしまったことに気付く目の前には迫力がある要塞のような建物_軍事ギルドがそびえ立っていた。


私は唇をぎゅっと結びスーツを伸ばしたりして整える速い足取りで中に入ると昨日あったギルドマスターであるイザベルさんが輝くような表情で微笑みながらそこに居た。


「おはようシトリン、少し早いけど試験会場に行こっか」

「はっはい!!」


みぞおちの辺りが空っぽになったような感覚に襲われる唇を噛み素早くなる呼吸を無理矢理整えた。落ち着いた色のカーペットの上を歩き強ばる筋肉に初めてこんなに歩くことが難しいと思い知らされた気がする。


重々しい扉を開けて中に入ると2人席に座っていてマスターはその2人の間に腰を落ち着かせた。きっと面接官なのかきっちりとしたスーツを着てこちらを見る男女2人組になおお腹周りが痛んだ、と言うかずしっと岩を乗せられたような感覚に陥る。


「そのまま座って良いわよ」

「はっはい」


椅子の左側に立ち頭を軽く下げる。そうしてよろしくお願いします。と言って言われた所に座った、背筋をただして裏返りそうな声を必死に整える、強ばる顔を必死に和らげて奥歯を噛み締める相手の瞳を見て眉間に皺が寄らないように気をつける、問われる質問にしっかりと答えていくと何だか見られているような視線を感じそれと同時に耳鳴りが聞こえ始めた。


人は一度些細なことでも気になると落ち着かなくなるらしい、少し窓の方向をチラリと見ては視線を戻す、それを何度も続けてしまいもはや何を聞かれているのかすら分からなくなってしまう

マスターは少し私の行動に気付いたのか聞いていた質問を一度止めて私に訪ねた。


「どうかした?」

「え、いえ全然」


咄嗟に嘘をつくが一度試験を止めてくれて何が気になるのかを私に聞こうとしてくれる、そこまでしてくれるのだから言うという選択肢しかない。


見た目にも分かるほどに筋肉が強ばる下唇を噛みドキドキと言う心臓を落ち着かせようとした。


「あ、あのなんか、さっきから耳鳴り見たいな感覚とずっと見られているような視線が…」


あまりにも曖昧な事なので早口のようになってしまう、ギルドマスターは物凄く驚いたように目を見開き上体を乗り出すように私を見た。


「貴方、凄いわ!!」


何を言われるのだろうと身構えたがその心構えとは正反対にマスターは瞳を輝かせて私の両手をとった。


「いいわよ、パウル銃を下ろしなさい」


マスターは軍の紋章のような物が掘られているバッチに顔を近づけてそう言った、その瞬間、マスターの声が二重に聞こえてきて私は頭の中が可笑しくなりそうなほどぐちゃぐちゃにされるような感覚に陥る。


「マスター…双子?」

「あはは!!!違うわよ!シトリン貴方はどうやら科学的魔法の電子系統が得意らしいわね、貴方は私が持ってるこの無線機から出て来る電波が分かるらしいわね、言わば歩くハッキングマシーン…良いわよ!合格よ!!」


その話を聞いてまだ理解が出来ないが凄いらしい、窓の外をよく目をこらして見てみると確かにそこにはスナイパーを構えた男が居た。そして一番びっくりしたのはその男が多分東洋人であることがその黒色の髪を見て思い出したからだ、そう言えば最近東洋人凄く出没してる気がする。


「あ、あの人は?」

「え?パウル?あーユキノと似てるからか…あの子は確かヴァルレオーネ人と唐頂人のハーフよ、耳が悪いのかそれとも病気なのか分からないけど…それにシャイだからあまりって言うか全体的に話さないと思うけど悪い人じゃないよ、それに結構強いし」


スコープから除いていたのだろう、少し離れた建物の屋上で入念にハンカチのような物でスコープや銃身を綺麗に拭いているように見える、下の方に居る人物達が全員銀か金色の髪なので余計に目立って見える。


「いや~約150年間鎖国してたモリージェリー王国に行かせた価値あったわね」

「他にも国家任務があったのにマスターは何故か問題児組に貴方の国に行かせたのよ」

「そうなの?」


面接官だった女性が髪を少し弄りながら溜息を吐き出し、持っていた資料をぺらぺらとめくって1度目を通し終えると背伸びをする。


「問題児組って…まぁ唯一軍事ギルドで参加した連把戦争での生き残り組だからね」

「連把戦争?」

「そう、世界大戦に発展しそうだった戦争よ、軍事ギルドであの三人を入れた9人を参加させたヴァルレオーネ帝国では初の科学的魔法部隊、本当は第一第二部隊が行くはずだったんだけど、火力的には彼等の方が戦闘面では強かったの」


その言葉に私は開いた唇に指で触れる、確かにユキノ達はとても強かったし自分達でも何処か余裕そうに任せろともよくくちにしていたが、そのたびにこの戦争の事を考えて居たのだろう。


「もしかして、パウルさんは第一部隊?」

「残念、彼は強いけど単体でしか行動しないわよ、それに彼は連把戦争後に来たから」

  

その言葉に少し目を見開く、すると面接官だった男がこちらに向きマスターに何かを言った。


「そうね…ごめんなさいねシトリン、貴方の所属場所を言ってなかったわ…貴方は科学的魔法第三部隊に入って貰うわ、あそこには電子系統が得意な子が居ないし何より第三部隊のリーダーのお願いだからね」


私の脈拍は今異常な数値を出せると確信する。きっと聞き間違えだろう、だって六回も民間ギルドのテストで落ちたのに奴隷時代。まともな勉学も出来なかったのにこんな私が三人の隣に立てるなんて思ってもみなかった、背中を追い続けるだけだと思った。

それが現実ではどうだ?まさかユキノが私を入れてくれるようにお願いしてくれたなんて信じられない!そしてそれだけではなく私は私の才能で第三部隊に入ることが出来るのだ。嬉しくないわけ無い、ただ実感がなさ過ぎて震える両手が熱を帯びる感覚にひたすら溺れることしか出来ない。


「この建物の三階に第三部隊用の事務室に三人とも居るわよ、ほれ、行った行った」


背中を押されて扉から出る、前とは全然違ったように足が軽く胸を打つ音がはっきりと鮮明に聞こえる。気分が浮かれる早く報告したいから見えた階段を駆け上がった。

扉が見える、後もう少し少し乱暴にかけられた黒色の表札のような物に金色の文字で「科学的魔法第三部隊」と書かれる扉を思いっきり開けた。

紅茶を飲んでいた正面奥に居るユキノは持っていた書類を机の上に広げていたらしく止まっている手元を見づに私を見て目を見開く。書類の押し付け合いをしていたのか左右に座るシルバーとウィンはお互いを睨みあっていた瞳をこちらに向けて呆けたような顔をした。

私は止まらないドキドキに笑顔を顔に浮かべて報告した。


「受かったよ!!」


その数秒後にまるで子供のように純粋に私を褒めてくれ頭を撫でてくれて自分のことのように喜んでくれた三人は後々来たギルドマスターに騒音被害書を笑顔で突き出されていた。

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