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天涯記  作者: 浅黄 東子
第1章 術士と自由の革命
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愚か者

久々に会ったシトリンは何処かやつれたような疲れたような表情をして、赤く腫れた目をこちらに向けていた。俺はどうすることも出来ず取り敢えずユキノ達の家に行こうと考えシトリンとラルと呼ばれる少女の手を引き向かう。


商店街を抜けて住宅街の通りに、二階建ての一軒家が姿を現す。玄関には「ルアーム」と書かれた木製の表札があり、和風と洋風が混ざったようなそれでいて落ち着いたような家が持ち主達の趣味の良さを表している。

ドアを軽く二度叩くが一切出て来ない、イライラしてきて何度も何度も叩くと中から焦ったようにウィンが鍵を開け扉からひょっとりと顔を出した。


「んだよ、シルバーか…はよ」

「おぉ?港の見張り番頼んだくせになんだその態度?」

「ん?なんで子供なんか背負ってんだ?まさかッ!!!誘拐!?」

「死ね」


寝起きなのか少し乱れた髪に何処を見ているのかわからない瞳でこちらを見ていた目がくわっと見開かれるが腹に蹴りを入れて黙らせる、衝撃で目も頭もぱっちりと起きたのか、俺と子供の他に人が居ることに気付き、これでもかと目を見開かせる。正直、その顔魚みたい。


「シトリン!?」

「あぁ帰って…」

「良く来たな、寒いから中入れ」

「俺の話は無視かッ」


大きく開け放つ扉に肩を沈ませるが、ここまで来るともう呆れて物も言えない。「邪魔する」と言いながらそのまま入ろうとすると地を這うような恐ろしい低い声でいつの間にか奥の方に居たユキノが俺の行動を阻止した。


「シルバー靴を脱げ」

「……」

「シルバー?」

「…はい」


さっきも言ったがここは和風と洋風が混ざったような家だ、しかし鬼嫁がここに居るためこの家のルールはどっちかと言うと東洋よりなのだ。子供の靴も脱がせ少しある段差を上がり家の中に入っていく。


リビングにつき室内を見渡す、余計な物がなく、木材の机にこれまた木材の椅子が置いてあり壁に寄りかかる形で置かれている棚の中には科学者魔法や色々な小説などが綺麗に置かれている。 

俺は取り敢えず背負ってた子供を先に座っているウィンの両膝にのせさっさと自分も座った。

シトリンは恐る恐る入ってきてユキノにすすめられるがまま椅子に座った。


「まずは、シトリンお帰りなさい」

「た、ただいま」

「疲れたでしょ、今お茶を持ってくるわ」


簡単な部屋着を着たユキノは台所に向かい冷蔵庫からお茶の入った容器を取り出し、お盆に5個湯のみ茶碗をのせそそぐ。それとは別に薬缶をコンロの上に置きこちらに向かってくる、良い感じに冷えたお茶を貰い少し飲む、こちらを向いて「何故」見たいな顔をしているウィンを軽く無視して話を聞く体制をとった。


妙にギスギスした感じに何とも言い表せない気まずさがあるがシトリンはぽつぽつと喋り初め思わぬ惨状に少しの間静になる。ウィンの膝にちょこんと座っているラルも終始無言を突き通し、シトリンもしゃべり終わると無言に戻る嫌な沈黙が続き俺は助けを求めユキノを見るが、後悔。


「シトリン、そしてラル」

2人の肩がびくりと跳ね上がる。

「大馬鹿者!少しは大人に頼りなさい!!!!」


シトリン達は少し驚いたようにユキノを見る、まるで東洋の般若と呼ばれる鬼のような顔をするユキノは続ける。


「シトリン!あんたね、ちゃんと手紙でそう言うことは速く言うんだよ!!自分でため込んでもろくな事にならないってわかったわね!?」 

「はッはい」

「ラルも、自分の言いたい事は言っていいのよ!貴方が言わなきゃ自分の思いは誰もわかってくれないのよ!?」

「ひっぐ、はい」


はぁと溜息を零した後、ユキノは2人の方に行き慈母のような表情に戻り、抱き締める。


「よく、生きて帰ってきたね」


一家団欒見たいになっている光景を俺は茶を飲みながら見ていた。2人とも涙を流して何故かウィンは謎に頷いてる、やめろその顔笑える。 

するとラルはユキノの言われた通りぽつぽつと喋り始める。


「私が…ひぐっ…ごめひっぐな……さい」


きっとそれが負い目になってラルはシトリンに話しかけることが出来なかったのだろう、シトリンも何かラルに負い目があって話しかけれなかったのだろう、すれ違いはこれで終わって欲しいがきっと永遠とシトリンは負い目を気にしそうな性格してるからなぁとぼんやりと考え欠伸を噛み殺した。


「ヴァルレオーネ帝国で働きたいんだけど」

沸騰した薬缶をとり、帰ってきたユキノを前に真剣な表情で俺達を見るシトリンに一度、ユキノと目を合わせてどうするか悩む。


「科学的魔法を使う仕事?」

「うん、出来ればユキノ達が居るところ…」


そう声を振り絞るがユキノとウィンの顔を見て、言葉を止める。確かに俺達も科学的魔法を使う仕事をしているがなにせ″軍事″ギルドだ普通の依頼だってくるし、日頃は暇をもてあます所だが…一度戦争が始まれば前線に送られる。

俺は取り敢えずシトリンに軍事ではないギルドを進める事にした。

 

「シトリン、他にもギルドがあるから一度他のも見てみよう」

「?…どうして?」

「何も俺達の入ってるギルドしかこの町に無いって訳じゃない」


棚から一冊の本を出し、シトリンの前に置いてやる。ぺらぺらと何ページかめくり、こう言うのがあると見せる、真剣な表情でページを睨むシトリンにほっと一息するとシトリンは俺の顔を見て至って真剣に言い放った。

 

「シルバー、読めない」


入る入らない以前の問題だった事に俺達はただ頭を抱えた。

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