お帰りと…
海の旅は自分の想像する物とはかけ離れており、楽しくもなくだだ罪悪感に心が飲み込まれていた。あれからラルとは一切喋って居なかった、喋ることさえ出来なかった当たり前だ直接的ではなくともラルの友人を奪ったのは、殺したのは私だ。許して貰う事もしない、恨まれても構わない、そう…そう思っているのに私の弱く醜い心はいつも通りを望んでいた。
なんと情け無いことなのだろう。
船長も場を察したのか業務連絡以外で口を開けようとしない、辛く重い沈黙が続く。
「一度ミダ国によって燃料と食事を揃える」
こくりと2人で頷く、沈黙。何も発展のない海の旅に段々と腹部が痛みを訴えてくる、頭の中にずっと繰り返される反省会のような物に現実逃避が組み合わさって相乗効果が生み出される。
魔物を直接的に殺したとき全くと言って罪悪感は無かった、それなのに間接的に人を恩人を殺すことになったとき私はどう思った?結局は自分の身が大切で警官の隙を狙いあろう事か港へついたときに「やった」と思っていなかったか?なんて最低でなんて愚かな行動なのか、そして私は自分の妹のように愛したラルの大切な友人をこの手で奪ったのだ。
ずっとこちらに背を向けて座るラルの小さな頭を撫で謝ろうと思った、手を伸ばすがその手は震えていてこんな手で触って良いのかとまで思い触れる前に手を引っ込める。ヴァルレオーネ帝国に行ったら自由に自分の好きなことをやらせてあげようと思った、そしてユキノに預かって貰って自分で働いてラルから離れて住もうと思った、友人殺しが隣にしかも家に居たらラルだって休めないだろう。
しってる、これが逃げだと知っている…だけど私はそれ以外どうすれば良いのかなんて分からない、この心も結局はだだの言い訳なのかもしれない。
一番辛いのはラルだって知っている…だから泣いちゃダメ、どうして…どうして私はいつからこんなに自分のことしか考えられない身勝手な人間になってしまったの…
ミダ国についた後もただその場にぼーっと座り込み、時がたつのをただ待っていた。景色は段々と変わり暗くなったり明るくなったり日が昇ったり落ちたり。当たり前の事だけど何処か当たり前ではない気がして、違和感と罪悪感と不安で心が潰れる。
それでも時間が立てばヴァルレオーネ帝国についてしまう、港へつき船から降りる、手を貸すべきかとラルを見るがラルは自力で降りた。
私は頭を船長に向けて下げる。
「ありがとうございました」
「いや、いいんだこれが俺の仕事さ」
「…本当にすみません」
しわしわの手で私の下げた頭を撫でる、船長は船に乗り直しそのまま燃料を新しく積んだ船で帰還していく。ヴァルレオーネ帝国をもう一度見回して見るとモリージェリー王国よりも高い建物のが多く活気ある町だった。奴隷のような人も居ない、異国語が飛び交うなかユキノ達と会う手段を持ち合わせていないことに始めて気付いた。
「ど、どうしよう…」
きょろきょろとあたりを見回していると流石に異国で怖いのか足元に近寄るラルと共にこの世界から置いてきぼりをくらったような気分に陥る、住所は知ってるがまず、このモリージェリー語で書かれている物を読める人は一体何人いるのだろうか。
すると何処からか怒鳴り声のような物が聞こえてきた、急に聞こえたために肩は情け無いほど跳ね上がり瞬時に声のした方向へと顔を向ける。体の大きい男性達が誰かを囲んでいるのかその中心へと怒鳴っているように聞こえた。
「ッ!!!」
「…、?」
「ッ!!!ッ!!!」
目をこらして囲まれている人を見ようとした、ピントが合った瞬間銀色の短髪の髪に不満げな感情を浮かべたアンバー色の瞳が見えた。見間違えるはずが無いシルバー、シルバー・オーラだ。しかし、会えたのは嬉しいが実際の所、他人のふりをしていたい状況に私は斜め上方向を見てどうするか考えた。
するとタイミング悪くシルバーと目が合う、その目が驚きに見開かれたがすぐに男達を科学的魔法第一基礎〈操作〉を使いこちらに歩み寄ってきた。
「シトリンか?」
「し…シルバー?」
別れたときと何ら変わらないシルバーに安堵と共に不安が募る、シルバーはホッとしたような安堵したような柔らかい表情を作り「お帰り」と言ってくれた。私はその言葉に涙が出て来そうになるが罪悪感が涙を止める。どうすることも出来ず唇を噛み締め俯く。
「どうした?それにその子供は?」
「…モリージェリー王国で、色々あって…」
「あぁ…新聞で見た大変だったな″革命が″起きたんだろ?」
「えっ?」
私はまるで雷が落ちてきたかのように私を襲う驚愕な事実にめまいすらした。どう言う事だか全く理解できない革命がすでに起こったと言うことなのか?私はシルバーに詳細を聞くために口を開けるがなんて言って良いのか分からない。
「…その分だと知らないそうだな……」
「どう言う事なの」
「昨日のヴァルレオーネ時刻11:00頃モリージェリー王宮に革命軍が押し寄せ王女を逮捕、王政停止され総裁政府の体制を作り出し今日、過激派革命軍のリーダー政治家アギー=ビィーティーも逮捕される、これに対して国民の多くは死刑を望んでいる…それが今日の記事に書いてた物だ」
あの後、アギーがどうなったかとても知りたかったけどまさかこの様な形で知ってしまうとは、私は膝から崩れ落ち溢れ、溢れる涙を拭いなが歯を食いしばった。状況を知らないシルバーは困惑するが持っていたハンカチを私に持たせてくれる彼の優しさにもっと涙が溢れかえっていく。
『何処へでも行ってもいいわよ?シトリン』
彼女の強がる声が私の脳裏に響く、どうして一緒に居てあげなかった…と後悔の声が心の中で叫ばれる。どんなに突き放されてもどんなに酷いことを言われようともしがみついてアギーの隣にいれたなら、彼女を助けることが出来たのなら…。シルバーは無言で私の背中を優しく撫でてくれ泣き声が周りに聞こえないように抱き締めてくれる。
「……シトリン…あとそこの奴も帰るぞ…話は幾らでも聞いてやる」
ラルを軽く背負い私の手を引いて真っ直ぐ歩く、私は握られている手とは反対の手でシルバーの手首を握り締め離れないようにしっかりとついていった。
それでも涙は止まることは無かったが何も聞くこと無く触れることなく「今は泣いとけ」と静にシルバーは言った。




