茶会招待会
時刻は17時をさし俺達は着替えてシトリンの怪我の処置をしているユキノ達より先に茶会招待会に出向いていた、少しだけだぼっとするタキシードは俺に嫌悪感を感じさせる。
元はといえば茶会なんて社交界の話しやパーティーの計画とか女性貴族の交流場である、冷肉やハム、そして高級野菜キュウリにミントなどが挟まれたサンドウィッチに思わず顔が引きつる。
こちらを見てひそひそと話す女性貴族達を見て深いため息を落とし「まるで初等学校だな」と呟けば隣にある肩は上下に…否痙攣するように震えている。
幼馴染み兼仲間のつぼの浅さに少し心配するが気を取り直して何か口に入れようかとあたりを見回す、近くにあったカラフルなマカロンを取ろうとした時、誰かの手とぶつかる。
反射的にすみませんと謝ろうとしたとき、それをぶつかったであろう相手に遮られる。
「あら、すみません?」
相手の顔を見ようと頭を上げると何食わぬ顔で薄い水色のドレスを身に纏うユキノが淡い黄色のドレスを着るシトリンの肩に手を置きながら微笑んでいる。
今さっきぶつかった手をもう一度見直すとそれはシトリンに繋がっていて俺は一瞬頭を抱え反省する。
「居るなら声かけてくれ」
「あら?ウィンは声かけなくても来たわよ」
そう言えばウィンが居ないことに今更気づく、あたりを見渡せばウェイターごとく紅茶とケーキを2セット何処から持ち出したのかもわからないトレーに乗せこちらに持ってくるウィンと目が合う。
視線を戻しシトリンを見るが肩や腕に張られているシップや包帯が見え少し痛々しい、俺の視線に気付いたシトリンは頭を傾少し恥ずかしそうにドレスを翻す。
「似合ってる?」
「あぁ、とっても」
そう言ってやれば満足気にそして恥ずかしそうに
微笑む、それを見たユキノは片方の眉を上げて「私の言ったとおりでしょ?」と言う表情をする。
シトリンは深呼吸をしてから右腕の肌をさする、何処か落ち着きのない行動に俺は首を傾げて動作を止めた。付近には一口サイズのケーキを食べ眉間にしわを寄せるユキノは流すように紅茶を飲みウィンと何か話している。
シトリンに声をかけようとした時、この茶会の元凶である王女が会場の一段高い場所に出て来てオーケストラ達を見てからこちらに向き紅茶を持ち会場全体に微笑む。
「今日も楽しみましょう」
そう言えばオーケストラ達は曲を変え、良く周りを見てみるとメイドらしき人物と執事らしき人物が菓子や軽食がのったテーブルを端に寄せ始める。
貴族達は持っていたティーカップなどを机に置き踊り始める。優雅におしとやかに踊り始める姿にゆっくりと加わるウィンとユキノ。
俺は手をシトリンに差し伸べる。
「一緒に踊るか?」
「下手だけど…」
「大丈夫だ」
そう言ってシトリンとゆっくり踊り始める、少し体が強ばっているがシトリンは合わせようと必死についてくる。
「落ち着け大丈夫」
「ハードル高い…」
「適当でいいさ」
そう言いながらまたひらひらと踊る。
少し慣れてきた頃にシトリンの顔が陰る、さっきよりも強く握り締め唇を噛んでいる。
「巻き込んでごめん」
「…」
「本当は自力でどうにかする為に戦い方も教えて貰ったのに結局頼った、本当は助けに来てくれたとき良かったって安堵しちゃってた。自分勝手だよね」
「…」
「本当…私馬鹿だ」
そう言って顔を伏せる、音楽が妙にゆっくり聞こえるようになった、会場の声は一切聞こえないやけにはっきりとシトリンの声が聞こえる。
「正直言って俺は奴隷じゃないからお前の気持ちはわからない」
「…」
「だけど、俺達は好きで勝手に助けた」
「…っ」
「俺達は俺達の意志で助けたかったから助けた。お前が気に病む必要は無い、後は任せろ」
そう言ってもただシトリンの顔は一段と暗くなるだけだった。
あぁ一体何を間違えたのだろう、腹が少しばかり痛くなりシトリンにかけるはずの言葉は一切口から出ない。
それからどうやって茶会の会場を出たのかわからない、ユキノがとってくれたホテルに行き、いつの間にかベットにダイブしていた。
恒例行事のように頭の中で反省会が繰り広げられる、ベットの隣にある小さな机に同室のウィンがコーヒーを出してきた。
「お前、不器用だからな」
「黙れブス」
「酷いな!?」
喋るのを阻止し俺は寝っ転がった体制で足蹴りする、男に慰められるなんて拷問かよと思いながらベッドを占領しゴロゴロと右に左に転がる。
「シルバーさんシルバーさん、俺の寝る場所何処ですか」
「床」
「おぅ!?、まじかよ」
無理矢理電気消して目を閉じる、精神的な方向でどうすれば良いなんか俺には決してわからない、取り敢えず明日にでもシトリンには謝りに行こう。
もしかしたら傷つけてしまったかもしれない。