05【白い輝き、黒い不安】
「アルデバラン?まあそれぐらいなら
余裕で行けるけど...。ハスターに会うの?」
「あぁ、ハスターに会って黄金の蜂蜜酒でも
貰ってくる。酒でも飲まねぇとやってられねぇよ。全く...」
ニャルラトホテプにとって甥っ子、
つまり兄にとっては息子の名前を出し
ブツブツとやるせなさを呟いている。
(こいつも大変なんだな...)
そっと心の中で呟く兄であった。
「あの子の作る蜂蜜酒は美味しいからなー。
そうだ!こっちに戻る時はハスターにでも
頼んで魔力を分けてもらったり、肩代わりして
もらったりしなよ。何かあいつがグズったら
俺の名前を使っていいからな」
「じゃ、肩代わり一択で」
弟の事を思った兄の言葉であるが、
息子からして見たら傍迷惑なだけである。
「よし、じゃあちゃんとハスターの家を
イメージしろよー」
「分かってるっての」
今更な基礎的注意を受け、ニャルラトホテプは
苦笑気味に答える。目を閉じてアルデバラン星を
イメージして......
「そう言えばこの前、可愛い愚かな信仰者に
喚ばれたものだからそれに応じて降りて
来たんだよね。」
(アルデバラン星アルデバラン星...
うるせぇな兄貴、自分で『イメージしろ』て
言ったくせに邪魔すんなよ...)
「無事、それなりの知識と魔力を与えて
帰ろーって思ったんだけどさ。
召喚場所どこだったと思う?
地球の日本だったんだよぉー!!」
(アルデバラン星、アルデバラン星...アルデ...
に、にほん??)
「いやー、日本小さいわマジで。
でも小さいなりに沢山人間いるしさ、
俺が完全復活したらシュブちゃんと一緒に
喰い荒らして来ようかなー」
(アル、アルデ...ん?地球の日本......日本...)
「あ!ごめん長話ししすぎたね。
よしっ!じゃあニャルくん行ってらっしゃい!!!」
「おっ?!お、おう!!」
主の言葉に呼応するように鉄扉は見た目に
似合わず、すんなりと開き出す。
向こう側は眩い白の光に覆われており
行き先は分からないが多分アルデバラン星
なのだろう。.........多分。
ニャルラトホテプは少し不安に感じたが
小さく鼻で笑い飛ばし、その扉の向こうへと
自信満々に、大股で進んで行くのであった。