06【ダガーと呪文】
突然現れたその男は、欠点という欠点を
全て排除したような完璧な顔に、
超極悪人みたいな笑顔をピッタリと貼り付けて
その怪物を見つめていた。
「ニャル...!」
人間とは自分勝手なもので、さっきまで
あんなに悪態をついていたというのに、いざ
自分より遥かに力のあるものを見ると頼らずには
居られなくなってしまう。
愛結華はホッとしたような息をこぼし、
相手の名前を呼んだ。
「あ?」
ニャルラトホテプは、ずっと目の前の化物しか
見ていなかった為か、今の今まで、そこに
人間がいる事など気にも止めなかったようだ。
初めてその存在に気づいた神は、後ろを振り向いた。
「おおー、アユ...」
ヒュンッ!!!
ニャルラトホテプが、人間に気付くよりも早く、
何かが風を切る音がお互いに聞こえた。
それが何を意味するか分かるより早く、愛結華の
体に激痛が走った。
「___え?」
そんな間抜けな声が、彼女の口から零れるや否や、
それは激痛の叫び声に変わった。
「あああぁぁぁあ゛あ゛あ゛ぁ゛あ゛ぁ゛!!????」
体中からミシミシという嫌な音が聞こえる。
このまま力を加えられたら、体の骨という骨が
全て折られる!!!痛い!痛い痛い痛い痛い!!!!!
あまりの痛みに涙の膜が張った視界。
そこで見たのは、360度全てに生えた無数の
鋭い牙。そしてその奥は、何も無い黒__。
(やだ、私...っ化物に食べられる......っ!!!)
痛みのあまり、声も出ない私は、ただ音の無い
叫び声をあげるしかなくて......。
「やめな」
__ピタリ。
近づく無数の牙は、私を飲み込む一歩手前で止まった。
「お前のメシはアッチだ、小者はほっとけ」
『ほっとけ』その単語に化物は従順に、私の
拘束を解くと、突然私は締め付けから解放され、
文字通り、放られた。
「っっった!!!!」
雑にトンネルに投げられた私は、当然上手く
受け身なんか取れなくて、無様に地面に転がった。
「っかは...っ!!うぅ...体が、体が......いた、い...!!!」
「アユカ、下手に動くな。すぐに治してやる。
...事が済んでからなっ!」
「は、あ...っ!?早く、治しなさ、いよお!!」
ニャルラトホテプは愛結華を一瞥した後、
懐からいつぞやのダガーナイフを取り出し、
「お前ら、無貌の神ニャルラトホテプ様の
魔力になる為に死ぬ事、光栄に思えよ...!!!」
深い深い紫の瞳に埋められた瞳孔を、
有り得ないほど開き、何か複雑な紋章を素早く
描いたかと思うと、彼のであり、彼ではない、
不気味な声色で叫び声を上げた。
「【精神力吸引】の呪文!!!!!!」
※時間が無いため、後書きは今回は省略させていただきます\(^o^)/




