05【腐肉喰らい】
地下トンネルは更に不気味な、異様な雰囲気を
醸し出していた。元々暗い空間なんて好きではない愛結華。
しかも、開発途中で投げ出された地下トンネルには
電気なんてもの、通っているわけもなく...。
出入口から射し込む朧気な赤紫の光を
頼りに進むしかない愛結華であった。
(というか、なんで私があのナルシストの為に
こんな怖い思いしなきゃならないわけ?
そもそも今、危険を犯してまで会いに行くような
価値なんてアイツにはないじゃない...!!)
愛結華はピタリと足を止め、懐中電灯で
靴先を照らす。彼女の胸の中では恐怖という感情が、
ふつふつとした怒りへと変わろうとしていた。
...それはどうやら、行き場の見失った我慢出来ない
恐怖を違うものに変換させる事によって、現実から
目を背けようとする、一種の防衛本能のような
何かだったのだろう。
言うまでもなく、愛結華には今もこれからも気付けぬことなのだが......。
「もうやーめたっ!帰ろ帰ろ〜」
なんだか突然、何もかもどうでもよくなってきた。
わざわざ危険な橋を渡らずとも、いずれ他の
チャンスが巡ってくるはずだ。
人生とはそんなもんだ。うんうん。
愛結華は9割方自分に言い聞かせるように
心の奥で呟き、そして納得した。
クルリと踵に重心を置いて180度、回転をする。
あっという間に愛結華の靴先は、入口に向いた。
向いたのだ。
____ムイテシマッタ。
__ミテシマッタ。
「____っっ!!!!!????」
そこにいたのは二足歩行の生き物だった。
...一瞬、人間という単語が脳内をかすめ去り、
すぐに『怪物』という単語がやっと落ち着き、
腰を下ろした。
そう、確かにソレは二足歩行をしていた。
しかしそれは人間と言うには、あまりにも
かけ離れた容姿である。
犬のような顔に、ヒヅメ状に割れた足。更に
不気味なのが、ゴムのような不愉快な皮膚!
ソレが1体...いや、よく見ると影から続々と
出てくるではないか!!不気味な双眼を影の中で
光らせて、何かを早口で喋っている。
「ひっ...!う、ウソ...でしょ......っ!!!」
少しでも気を抜けば、たちまち気が触れてしまいそうな、そんな恐怖に彼女は情けない声を上げることしかできなかった。
ジリジリと近づいてくるソレら。
愛結華はカタカタと震えながら
半歩ずつしか後退できなかった。
まるで体が言うことを聞かない。自分の体が
蝋人形にでもなったような気持ちだ。
ついには瞬きも出来ず、動きが完全に取れなく
なってしまった。カチコチに固まってしまった。
どこかで見た立像のように。
ただ、心臓だけは。いつもは静かに、動いているかも分からない心臓だけは、狂ったように
『死にたくない!死にたくない!!』と激しく
血流を体に送っていた。
怪物たちは、突然現れたご馳走に舌なめずりをする。
はじめに何処を喰おうか?この娘はまだ若いから、
腹や足は沢山肉がついてるし、脳味噌や臓器だって
最高に美味いだろう。
そんな事を個々に思いながらソレらは獲物に
飛びかかる為に後ろ足に力を込めて____。
「_______!!!!!!!」
「「「!!!??」」」
その時、言葉にも言い表せない程の不気味な、
大きな喉声を愛結華は確かに聞いた。
そして、バサリッという穢らわしい羽音を
僅かに耳にした直後。
ヒュゴオオオオォォォオォオォオォオオオ!!!!!!!!!
物凄い強風が愛結華を襲った!
髪が一瞬全て逆立つような、足に力を入れないと
風に掬われるような、恐ろしい強風が!
思わず目を閉じるも、その風は意外とすぐに止んだ。
そして、そろりそろりと瞼を開けた。
彼女の視界いっぱいに広がったのは、巨大で、
極太の、蛇のようなシルエット。
そして__
「よお?ご馳走が沢山あるんじゃねーの。
今日はフルコースのランチと洒落こもうか!」
恐ろしいほど美しい、あの男であった。
お久しぶりです!
失踪してないよ!生きてるよ!!
なんとか書き上げた続き...!
今回も楽しんでくれると有難いです^^*




