01【『それ』の願い】
ここはいったい何処なのだろう?
日本なのだろうか?
それとも世界の何処かなのだろうか?
...いや、私達はソレの存在など
知るべきでは無いのだから、分からなくても
いいのだ。分からない方がいいのだ。
ただ、私達の中には世界を、星をも滅ぼす力を
容易に持っている『それら』を信仰している
理解し難い同族達がいる。
そんな同族達は世界中に様々な拠点を持っている。
その数多ある内の1つ、ソレ_つまり祭壇_に
熱心な信者達は集まっていた。
人気のない、晴れ渡った夜空の下、
石造りの塔の周りで遂にそれは行われてしまった。
少なくとも、10mはあるであろう石の塔を
目印にするかのように『それ』は、ゆっくりと
次元から這い出てくるようにやって来た。
玉虫色に輝く『それ』を前に、跪く信者達。
その中の1人、リーダー格であろう年老いた男は
名状し難い異形の存在に恭しく礼をした。
「おお、神よ...!遂に、遂に降臨なされた...!!」
老人の顔は、おおよそ私達が想像するような
弱々しいものでは決して無かった。
その瞳には赤々と激しい狂喜の炎が燃えていた。
それを見据える
_目どころか顔も体も無いのだが_、不定形の
他称、神は優しく滑らかな声を狂信者達の
脳内に響かせる。
《あぁ、夢を覚えてくれて良かった》
「神が直々に、我らのような愚かな種族の夢に
出て下さるのです。どうして忘れられましょう?」
《愛しい私の信者達。
いつもは、お前達の願いを先に聞いているが...。
どうだろう?今日は、私の願いを先に聞くと
いうのは》
その言葉に、信者達は一気に狂喜した熱が、
恐怖という水によって冷やされたのを感じた。
『それ』の言葉は、確かに優しく滑らかな声で
あったが、明らかに圧をかける声色に変化
したのだ。
...下手な事をいえば、この神の力によって
命が、いや存在自体までも消されかねない。
彼らは、ゴクリと無意識に生唾を飲み込んだ。
「わ、...私達は、貴方様の忠実なる僕。
私も、そしてこの同士達も、ただひとえに
貴方様の手足となる事。その事こそが、
生きる喜びと、使命でございます......!」
それを聞いた空飛ぶ玉虫色の物体は、
人間には到底、理解不能な音を零した。
...やがてそれは、人間で言うところの笑い声
だという事に、彼らは後で気付くのである。
《全く、お前達は面白い事を言ってくれる。
...良いだろう。その言葉、嘘偽りが無いことを
私は祈っているぞ》
恐怖と畏敬により、声も出せず、ただ跪くしかない
小さな信者の群れを嘲るように見下ろして、
『それ』は続けた。
《私はな、あるモノが欲しい。
話しによれば、とある人間と一緒にいるとか...。
私は、その人間にも興味を持った。
お前達には『それ』と人間を、生け捕りにして欲しい》
「...して、その名前は......?」
『それ』は音の無い言葉を紡ぐ。
それを聞いた信者達は、一斉に息を飲んだ。
彼らの心中には皆、同じく
(神は我らを弄び、喰らうつもりなのではないか!?)
といった絶望の叫びが、虚しく響くばかり...。
それほどの無理難題を押し付けられたのだ。
《愛しき者達。
お前達の気持ちは、よく分かる。
確かに、お前達だけの力では無理であろうな。
...勿論、私も力を貸そう。
そして無事、私の願いを聞き届けた暁には、
私からの褒美を与えよう》
狂信者達は、それを聞いて更に深く、
額を土にこすり付けるほど深く、礼をする。
それを見届けた『それ』は満足したのか、
あらかじめ決められた人間の村から
1人を触手で掴み取り、体内へ取り込むと
静かに宇宙へと戻っていったのであった......。
後に聞こえるのは、村人の嘆きの声のみ。
何の罪もない、1人の人間が、この世ならざる
邪悪な存在によって生け贄にされてしまったのだから。
...邪悪な存在を敬い、信仰する魔術師達は
やがて立ち上がる。
さあ、神からの試練を力を合わせて
乗り越える時が、今、来たのだ!!
失踪はしてないんだ!
私は生きてるんだ!!
でも!時間は待ってくれなかった...!(?)
というわけでやっと更新。
楽しんで読んでくれると嬉しいな!!




