12【息子を探して何千里?】
門の創造を行い、ハスターが住んでいる
アルデバラン星へとその足を下ろした
ヨグ=ソトース。
今日も特に何と言った事も無く、
黒きハリ湖ではハスターに仕える下級種族達が
思い思いに過ごしていたりしていた。
(ニャルくんに限って、酔いつぶれるほど
飲むとは考えられないんだけどなぁ...)
だが、とヨグ=ソトースは眉を寄せる。
(でもニャルくん、かなり疲れてたみたいだし...、
有り得ないことでは無いのかも......)
朝から晩までハスターの黄金の蜂蜜酒を
飲み明かしていても不思議じゃないかも
しれない...。
だが、もし酔い潰れていたとしても
優しいハスターの事だ。こちらに送り返す事
ぐらいはしてくれそうなものなのに...。
うんうんと唸っていても何も解決はしないし、
先程からハスターの姿も見えない。
ついにヨグ=ソトースは当ても無く探す事に
飽きてしまった。
ゴソゴソと服をまさぐり、銀と隕鉄で作られた
合金のホイッスルを取り出すと適当にMP5を
消費して、それを口に当てた。
(別にいくらでも魔力を込められるけどね...
ここは"アイツら"のテリトリーだし、
これぐらいでも充分来るだろう)
誰に聞かせるとでもなく、そう声もなく呟くと
やがてバサバサッと醜い翼をはためかせる、
そんな音が耳に届いた。
「ほーら、来た!」
パチンッ!と嬉しそうに指を鳴らす。
この神は遠い昔、可愛がっている弟にこんな事を
言われたのだ。
『兄貴はなんでそんなにチマチマ魔力を
使うんだ?どーせ沢山あるんだし、休憩したら
回復するんだからパーッと使えばいいじゃんか。
兄貴は貧乏性だな』
可愛らしい金髪の男の子に良く姿を変える、
小さなイタズラ坊主はそんな事を言ったものだ。
(くそ...!お兄ちゃんは貧乏性なんかでは
無いのだぞ...!!お兄ちゃんはな!
節約家なんだ!)
グッと力強く拳を握り、憎々しげに瞼を
閉じているとバサリと翼を折りたたみ、
地面に足を置く音が聞こえた。
はたと目を開けると、そこには土竜でもなく、
禿鷹でもなく、蟻でもなく...。
だが同時にそれらに似ているような、
なんとも形容し難い外見の怪物が、蝙蝠羽を
たたんで彼を見ていた。
「ビヤーキー、お前の御主人様の
居場所を知らないか?」
ハスターの忠実な僕は、蟻や昆虫に似た
口をカリカリ言わせて、何とも汚らしく、
聞き取りずらい、彼らなりの言葉を発した。
《ハスター様は、今はこちらにいらっしゃいません。
今の時期ならば、プレアデス星団にある
セラエノ大図書館で仕事をしている事かと...》
「としょかん...っ!?!」
そんな言葉を聞いたヨグ=ソトースは、
ふらりと体を揺らすが、何とか耐えてみせる。
(あぁ、そうだった!すっかり失念していた!
ハスターは、自分が召喚されない春・夏では
図書館長をしているんだった...!!)
「......分かった、有難う」
手短に例を言うと、ビヤーキーを空へと返す。
次にヨグ=ソトースは、恒星セラエノへ
門の創造を行い、彼は巨大な図書館に姿を現した。
適当な館員に話しかけると、館長の親族故か
多忙を極める図書館長との面会に、すぐありつけた。
「父さん、何用ですか?」
大人しそうな声とは裏腹に、薄汚れた黄色の
ローブからは、ぬたぬたとした触手が
ペタペタと床を叩きつけていた。
...少々苛立っているようだ。
顔面には銀の仮面を付けているが、
視界に必要であろう二つの穴は無く、
どこを見ているのかが分からない不気味さが
その異形さに相まって、近寄り難い雰囲気を
持っていた。
「仕事中にごめんよ。実はニャルくんを、
アルデバラン星へと向かわせたんだけど......
知らない?」
「知りません」
ザックリと。
そういった返答には時間をかけない神であった。
「そういった気配すら感じませんでしたよ。
間違った場所にでも飛ばされたんじゃないんですか?」
「いやいや!ニャルくんに限ってそんな......あっ」
「どうしました、父さん?」
見る見るうちに顔が青ざめていくヨグ=ソトース。
彼はついに思い出してしまったのだ。
弟を送らせる直前、彼は『日本』という
小さな島国の話をしてニャルラトホテプの
集中をほんの少し乱してしまった事実に...。
「た、たたたた大変だ!ニャルくんが大変だ!
ニャルラトホテプぅぅううう!!!!」
全てに気づいたヨグ=ソトースはすぐさま
走り去ろうとするも、その腕はにゅるりとした
黄色の触手に掴まれた。
「おぉうっ!?!なな!何をするんだハスター!」
「父さん、貴方を帰すわけには行きません...」
視線の分からない。だが唯一隠されなかった、
口元だけが怪しげにニヤリと上がっている。
「父さんには、返却期限の過ぎた本が
大量にあるはずです。
...さあ、お得意の次元を曲げて、その本を
今すぐお返し下さい...!!」
「あばばば...。ま、待って...お慈悲を......!
何百冊あると思って...!?」
「おや?それは貸し出しの際、事前に言いましたよね?
『本は何冊でも借りていいですが、返却期限が過ぎ、本人に返却の意志が無い場合は館員、または館長直々に出向き、強硬手段を取らせていただきます。その場合は本人の自己責任と言うことで、こちらは一切の責任は負いません。』とね」
にっこりと微笑む己の息子に、思わず父は
枯れた笑顔を零すしかなく。
正しく、セラエノ大図書館が誇る最恐の
守護神であった__。
やっと、二章終わりましたね...!(やりきった顔)
きっとこの後、ヨグお父さんは
セラエノ大図書館が誇る最恐の守護神(邪神)に
よってこってり絞られるでしょう。(遠い目)
今回もお付き合いくださり有難うございます!
...エピローグぐらい短く書けよってね。
精進致します...(´・ω・`)




