ありふれた幻想の物語の終焉
相方を失っても魔法少女としての闘いは続く
彼女は力を失い、記憶を失い、彼女が魔法少女だったころを知っているのは私だけだ
もう、街中で出会っても彼女と話はすることはない…そう思っていた
「すみません… どこかでお会いしませんでした」
突然だった
彼女から話しかけてきたのだった
泣いてもよかったと思う
彼女の名前を呼んでもよかったと思う
私を非難できる人などいないのだから
でも、呼んでしまったら
泣いてしまったら
また彼女をこちらの世界に引きずり込んでしまう
彼女がたとえもう闘う力を宿していなくても
彼女はきっと私を助けようとしてしまう…
それは嫌だった
何のために私は闘っているのか分からなくなってしまいそうになる
冷たく突き放す
それこそが正しい選択
分かっている
分かっていても声が出ない
彼女の瞳に映る私自身の顔を見た
まだ、大丈夫だ
泣いてはいない
「あったことはないと思うけど…」
この言葉がきっと未来の私を救ってくれる
彼女の人生が暗い闇に落ちてしまわないようにするための道しるべだと信じて
私はこの言葉を言い放つ
「そうですか…」
残念そうな彼女の顔
私にはそれしかできないのだから
それが私に課せられた宿命なら
彼女は去っていく
私は何かを言いかけて口をつぐむ
彼女の背中が小さくなる
彼女は一度振り返ってそのまま去っていく
これでいいのだと
何もかもも失ってなお思い続けている
この街に二度と光が差さなくなり
誰もが地底潜った今でも…
随分前に遠くに彼女の声が聞こえた気がした
「私… 思い出しそうなんです」
逃げなさい
私は振り絞って言った
「でも…」
渋る彼女に私は怒号を飛ばした
意識が失われつつある今、思っている
ありがとう
と