其の2
いつも賑やかな「キュウシュウ城」
どうやら今日は、お客さんがくるみたいです。みんなバタバタと準備をしています。
さて、今日はいったい何が起きるんでしょうか?
「姫~~~~~~!!
姫~~~~~~~!!!
みぃ姫~~~~~~~~!!」
いつもの様にけんぢが姫探しの為、城内を歩き回っていた。
「ったく、なんでこう毎日毎日、姫を探して歩かなきゃならないんだ?ホントに…」
焦点の定まらない眼をして、ブツブツと文句を言いながらけんぢは歩いていた。その光景は周りから見れば、はっきり言って「危ないヤツ」である。
「はぁ……っつと!!気を抜いちゃダメだ、ダメだ。ぼ~っとしてると、ま~た後ろから飛び蹴り食らってしまうからなぁ…注意しないと。
姫ぇ~~~~!!!何処に居るんですかぁ????」
けんぢは『別の意味』で背後を確認しながら姫を探していたが、一向に姫は
見つからなかった。
「ほんとにぃ…一体ど~こに行ったんだぁ??まったく、落ち着きが無いとゆ~か、なんとゆ~か…だから嫁の貰い手が無……」
ガンッッッッ!!!
けんぢが最後まで言いきる前に、みぃの右アッパーが彼の顎にクリーンヒットした。
「だ~れが、貰い手が無いってぇぇぇっ!!!!
この絶世の美女を捕まえて、何て事を言うのよっ!!!」
けんぢの身体は宙を舞い、華麗な弧を描いて後ろの方へと飛んで行った。
「ん?あちゃ~~~ちょっと力入れすぎたかなぁ…やべっ。」
鼻の頭を掻きながら、みぃはけんぢの元へと歩み寄って行った。
「け~~んちゃん♪…お~い、けんぢぃ?……ねぇ?けんぢ?……けん…ぢ?」
みぃが呼びかけても、けんぢは目を覚まさなかった。
と、ゆ~より…目を開けたくなかったのだった。
(このまま気絶した振りしてれば、姫は逃げないだろうな……この際だ
から、もうちょっと心配させてやろう。いっつも俺がどんなに心配させられているか……)
なんと、けんぢは既に目を覚ましていたのだった。日頃のうっぷんを晴らす為に一芝居打っていたのだった。
「ちょっと、けんぢ?え?うそ…でしょ?まさか!?」
みぃは驚いた表情をして、けんぢの前に座り込んだ。
(お!?心配してるな?よしよし、もっと心配しろぉ~~~~~)
「ちょっとぉ~~~~けんぢぃ~~~~~ねぇ、起きてよぉ~~~~~けんぢったらぁ~~~~~」
みぃはけんぢの肩を揺すりながらけんぢに語りかけていた。その表情は何処と無く哀しそうだった。
(ん!?ちょっとやりすぎたかな?これ以上続けたら、可哀相かな?)
けんぢはそんな事を思いながら、ほんのちょっとだけ薄目を開けてみぃを見た。
(あ……姫、なんか悲しそうな顔してる?やっばぁ~~~~ちょっとヤリすぎたかなぁ……)
ちょっと弱気になったけんぢは「(そろそろいいかな?)」なんて思って、目を開けてみぃに声を掛けようと思った時…みぃが突然立ちあがった。
(ん?姫、いきなり立ちあがってどうしたんだ?)
けんぢは言葉を掛けるタイミングを失ってしまい、ただ黙って見ていた。
「けんぢ……ゴメンね、私…私…」
そう言うと、みぃはくるりと背中をむけて、着ている服の「胸」の所をゴソゴソとやり始めた。
「ち、ちょっとぉ!!!姫、何をしてるんですかぁ!!!!!!」
そう言ってけんぢは飛び起きてみぃに声をかけた。
「……ふふふっ、やっぱり起きてたわね……(ニヤリ)」
その声はまるで、地獄の底から響いてくるようなドスの効いた声だった。
「え?」
その声を聞いた瞬間、けんぢの顔からさ~っと血の気が引いた。
ゆっくりとみぃは振りかえり…不気味な笑みをけんぢに見せた。
「け~~~~~ん~~~~~ぢぃ~~~~~、よ~~く~~も~~この私を騙してくれたわねぇ~~~~~」
「ひ、ひ、姫ぇ?あ、あのぉ~~~~目が…ちょっと~~~~怖いんですけどぉ~~~~」
「ふっふっふっ……けんぢぃ……私を騙してくれたんで『ご褒美』をあげるわぁ~~~♪」
そういうと、みぃは胸の所から『荒縄』と『ろうそく』を出して、けんぢに見せつけた。
「え?そ、それって……ま、まさかぁ!?」
「うふふふっ……け~んちゃん♪楽しんでね♪」
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~~~~~」
城の外
木枯らしが吹く、肌寒い季節
城の堀に「何」かが吊るされていた。
「け~んちゃん♪気分はどう?」
城の窓からみぃが身体を乗り出して、堀に吊るされているけんぢに向かって声を掛けた。
「姫ぇ~~~~~~もう勘弁してくださいよぉ~~~~~~僕が悪かったですぅ~~~~~~」
まるで「みの虫」のように身体を揺らしながら、けんぢがみぃに向かって懇願していた。
「ん~~~~、そうねぇ。そのろうそくが消えたら、許して、あ・げ・る・っ♪」
「え?ろう…そく?………って、えぇ!!!!!!!!」
ふとけんぢが頭上を見上げると、そこには『火の付いたろうそく』の姿が見えた。
しかもその火はけんぢを縛っている縄を少しずつ焼いていた。
「けんぢぃ♪早く火が消える事を、私……心の底から祈ってるわぁ~~~~~♪」
チュッ♪
みぃはけんぢに笑顔で投げキッスを送ると、部屋の中へと戻って行った。
「姫ぇ~~~~~~ごめんなさいぃ~~~~~~~~~もうしませんからぁ~~~~~~許してくださいよぉ~~~~~」
けんぢはそう言いながら身体を揺すって姫の部屋の方へ呼びかけていた。
「姫ぇ~~~~~~~~~~~~~~」
けんぢはまるで子供が駄々をこねるように身体をいっそう揺らしていた
「姫ぇ~~~~~~~~~~~~ん?」
ぷちっ
「あ!?」
あまりにも暴れたので、ろうそくで焼ききれる前に縄が石壁のかどで擦れて切れてしまった。
「あれ?」
ひゅ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ひぃ~~~~~~~~~~~めぇ~~~~~~~~~~~」
ポチャン。
「けんぢ、どうしてるかなぁ~~~~~」
けんぢの事を少しだけ気にしながら姫は呟いた。
「ちょっと、ヤリすぎたかなぁって気もするけど……ま、いっかぁ♪」
そう言うとみぃはニコニコしながら机に向かい日記を取り出して、今日の日記を書き出した。
その日記には、けんぢの事ばかり書いてあった。
今日はどうやってけんぢで遊んだかを、事細かに。
「ルンルン♪」
楽しそうに日記を書いてる途中で、ふと何かに気づいた様に筆を止めポツリとつぶやいた。
「あれ?そういえば…今日、誰か来るってけんぢ言ってたけど……どうしたのかな?」
そんな事を考えてたみぃだったが……
「ま、いっかぁ♪」
「みぃ姫ぇ~~~~~~寒いですぅ~~~~~~~」
堀の外の水辺にプカリと浮いて漂ってるけんぢが、空を見ながら呟いていた。