其の一
とある島国の在る場所・・・ここには小さいながらも活気のある国がありました。
その国の名は「キュウシュウ」
そこに建っている「キュウシュウ城」
今回の話しはここから始まります。
「姫~~~~!!姫~~~~~!!!何処に居るんですか?姫~~~~~!!!!!」
男が城内を大きな声を出しながら歩き回っていた。一生懸命彼女に呼びかけてはいるが、一向に返事は返って来ない。
「・・・はぁ・・・まったく、あの姫様には参るよ・・・直ぐにどっかに行ってしまうんだから・・・もう少し落ち着いて欲しいもんだよなぁ・・・もういい歳なんだし・・・」
ばきぃ!
「だ~れが!!!いい歳だってぇ!!!!」
何処からともなく現れた彼女は真後ろからその男を蹴り倒した。
「・・・・・・っっっっつ、ひ・・・姫ぇぇぇ~~~。」
モノの見事に顔面を床に打ちつけた男は、ヨロヨロしながらも何とか起き上がった。
「あたたたた・・・姫ぇ~~~その不意をついたような飛び蹴りは止めてください・・・体が持ちませんよぉ・・・」
男はそう言いながら、姫のほうへと振り返った。
「ぷっ!く・・・くく・・・きゃははははははっ!!!!」
姫は男の顔を見て突然笑い出した。
「え?な、なんですか?僕の顔・・・何か付いてます?」
「きゃははははは!!!!だ、だ、だってぇ~~~~あはっははっはは!!!!」
姫はお腹を抱えて笑っていた。男は(一体何が可笑しいんだろう?)と思いながら、傍にあった鏡のほうへ向かった。
「・・・ったく、一体何だってんだ・・・何がおかしいだぁ?この二枚目の俺の何処がおかしい・・・・・・って、あっ!!!」
鏡を見た男は言葉を失った。
そこに映ってる男の鼻は、床に思いっきり打ちつけたので・・・真っ赤に腫れ上がっており、さしずめ『ピエロの鼻』のようになっていた。
「あ・・・あ・・・・・・お・・・俺の・・・鼻がぁ!!!!!」
その姿を見て姫は、なお一層笑い転げていた。
「きゃはははははは!!!!ピエロみたぁ~~~い。いいじゃん、似合ってるよ。あはははは!!」
姫に笑いながら慰められて、男はガックリと肩を落とし深いため息をついた。
「はぁ~~~~~、姫ぇ・・・勘弁してくださいよぉ。いや、マジで。」
男は懇願とも諦めとも思えるような、『ほんと~に勘弁してくれ』と言うのが伝わってきそうな声で姫に訴えた。
その言葉を聞いて、姫は笑うのを止めて・・・男のに近寄ってきた。
「ふ~~~~ん・・・そうなんだぁ・・・じゃ、もう遊んであげなくてもいいんだね・・・いいよぉ~~~もう二度とけんぢとは口聞かないからね!」
そう言うと姫はぷいっ!と背中を向けて歩き出して行った。
「え?ち、ちょっとぉ~~~姫ぇ~~~~!!!ま、待ってくださいよぉ~~~そ、そんな・・・二度と口聞かないなんてぇ~~~ちょっとぉ~~~困りますってばぁ~~」
そう言いながらけんぢは姫を追いかけ出した。
「姫ぇ~~~~待って下さいよぉ~~~僕が悪かったですって~~~謝りますって・・・だから待って下さいよぉ~~~」
その言葉が聞こえたのか・・・突然、姫の歩みが止まった。
(よかったぁ~~~姫、許してくれるんだぁ~~~)
そんな事を考えつつ・・・けんぢは姫の側まで行き声を掛けようとした瞬間、姫がこちらを振り向き・・・けんぢを見てにっこりと笑った。
「姫ぇ~~~~」
その姫の笑顔を見て、けんぢは嬉しくなって一気に駆け寄った。
「えへっ♪」
姫はけんぢに笑顔を見せながら、すっと右手を伸ばし・・・横にあった紐を掴み・・・思いっきり引っ張った。
バタンッ!!!
紐を引いた瞬間、けんぢの足元の床が開き・・・けんぢは床下へと落ちて行った・・・
ひゅ~~~~~~~~~~・・・・・・・・・・・どすん!
「・・・また・・・やられた・・・・・・あの笑顔に・・・また・・・騙されたぁ・・・」
床下でまるで糸の切れた操り人形みたいなブザマな格好をしながら、けんぢは呟いていた。
そんなけんぢを、姫は上の方から満面の笑みを浮かべて見ていた。
「きゃはっ♪けんぢったら、す~ぐに引っかかるんだからぁ。でも、そんなけんぢって・・・だ~い好きよっ♪」
姫は明るい声でけんぢに語りかけていた。
「姫ぇ~~~好きなら、もうちょっと優しく扱ってくださいよぉ~~~~身体がもたないですよぉ~~~」
それを聞いた姫は何かを思いついたような顔をしていた。
けんぢは一瞬すごくイヤな予感がして、姫に声をかけようとしたら・・・
「けんぢ~~~今日はもう疲れたでしょう?少し休んでいいわよぉ~~~」
そう言うと姫はふたたび右手を紐へと伸ばしていった。
「え?・・・も、もしかして?・・・・ち、ちょっと待ってく~ださ~い!」
慌てて起きあがろうとするけんぢに姫は最高の笑顔を見せてこう言った。
「けんぢ~~~~お・や・す・み・ぃ♪私の夢を見てね♪」
チュッ♪
けんぢに向かって投げキッスをした姫は紐を思いっきり引っ張った。
バタンッ!!!
開いていた床が元通りになり・・・その下からけんぢの泣き声のようなものが聞こえていた。
姫はため息をつき、ぼんやりと宙を見ていた。
「はぁ・・・な~んか、もっと面白い事無いかなぁ~~~~」
床の下ではけんぢが壁を叩きながら姫に向かって叫んでいた。
「姫ぇ~~~出してくださいよぉ~~~もう、あんな事は言いませんからぁ~~~~お願いしますよぉ~~~ここを開けてくださいよぉ~~~。」
「姫ぇ・・・・・・みぃ姫ぇ・・・・」