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権田原のジャケット〈番外編〉 ー俺のジャケットー

作者: 松山英浬

「ね、先生。先生ってどうして、このジャケットしか着ないの?。」

そう、俺に聞く生徒がいた。

年に一人は聞いてくるやつがいる。


まわりは、俺が貧乏だから着るものがないとかいうが、そういうわけじゃない。


ちょっくら長い話になるが、聞いてくれ。

俺は教師になりたてのころ、黒のスーツを着て毎日学校に通っていた。

昔からある、眉間のしわが人を寄せ付けないうえ、黒のスーツで暗い印象だったんだろう。俺に話しかける生徒なんかいず、廊下を通るだけで、びくびくされた。ちょっくら悲しかった。

一年間だけ、同じ職場だった、生徒からモテモテの吉田という先生は俺のことをよく気にかけてくれた。年も近く、よく話した。

ある日、俺の誕生日にと、吉田先生はグレーのジャケットをプレゼントしてくれた。

俺は、家族以外から、誕生日プレゼントなんてもらったことなんてなかったからよ嬉しかった。

それからも俺が生徒と仲良くなれるようにいろいろ教えてくれた。

吉田先生は俺の親友だった。

だけど、ある日、吉田先生は俺の前からいなくなった。

結婚することになったからだ。親が勝手に決めた、結婚で、相手の会社を継がなくてはならないらしかったのだ。

「似合ってる。」

吉田先生からもらった、グレーのジャケットを身に着けていた俺に別れ際、そう言って、去っていった。


俺は、本当にうれしかった。


これから、吉田先生の分も頑張ろうと思った。

そして、今度、吉田先生と会ったとき、恥ずかしくない、自分でいようと思った。

このジャケットはその誓いを忘れないようにするため、きている。

生徒全員と仲良くなるため。


こう話すと、だいたい、生徒に笑われる。

でも、佐織はわかってくれた。

「かわいい。」

とまで言ってもらっちまった。



俺達には、もうすぐ家族が増える予定だ。

家族にも生徒にも好かれる男でいたい。

俺はそれを常に忘れずに今日もジャケットを身に着ける。


読んでいただいてありがとうございます。


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