必要な力
「大人をからかうのもいい加減にしろ!」
と俺たちは怒鳴られた。
「マジなんですって」
樋口が言った。だが、そんな事を無視してさっさと行ってしまった・・・
「チクショー 何で誰も信じないんだよ!」
と樋口が言って、近くの壁を殴りつけた・・・
警察に言っても相手にされず。近くにいる大人に言っても、馬鹿にされるだけだ・・・
この時ほど、俺たちの無力さを痛感したのは初めてだった・・・
俺はこの時、霧の中で見た夢を思い出した。
あの時、あそこで俺を見下ろしていた、あの男はいきなり剣を出して俺に何かをした・・・
「あの力が使えればな・・・」
俺は思わず呟いた。
それを聞いた樋口が、
「あの力って?」
その質問には素直に答えた、
「霧の中で見てた夢で、誰かがどっからか剣出しておれに何かしてたんだよ。それが、使えたらどうにかなるかもなっておもってな」
「だけど、そんなのどうするんだよ?」
当然の疑問だ・・・ だが、俺には少し心当たりがあった、
「墓だ・・・」
と俺が答えた。
「墓だぁ・・・?」
樋口がもっと意味が分からなそうな顔をする。
俺が説明を加える、
「あの時、俺たちが墓に行こうとしてた時には霧が出てきた。でも、俺たちが戻ろうとした時は霧なんて出なかっただろ・・・」
「それがどうした?」
「まるで、俺たちを墓に近づけないようにしてるみたいじゃないか・・・?」
今の俺の一言で樋口が少し驚いた顔になる。
「だったら、墓は・・・?」
「多分ある。そして、そこには何かがあるはずだ・・・」
確信はない・・・ だが今はそれに頼るしかない・・・
「でも ハル、そこに行くには・・・」
「ああ、あの化けもんに近付いて行く事になるな・・・」
樋口の顔がけわしくなる。
そんな、樋口に俺が訊いた、
「樋口、俺は行く お前はどうする?」
『俺は行く』と言った瞬間、汗が吹き出た。
本当は行きたくなんてない。これが俺の本心だ。
だが、和葉はおれのわがままに付き合ってあんな事になってるんだ・・・
このまま、和葉を見捨てたら俺は最悪の、クズだ!
だけど、樋口は違う・・・
樋口も俺のわがままに付き合ってくれた側だ。
これ以上、迷惑はかけたくはない・・・
でも、俺一人じゃ和葉を助けるどころか、途中で心が折れそうだ。
だが、二人だったら少しだが、和葉を助けれる可能性が上がる・・・
1%でも、和葉を助けれる可能性が上がれば、心が折れる事もなくなるかもしれない・・・
これも、俺のわがままに違いはない。
それは樋口も分かっている。
それに、墓には何もないかもしれない・・・
それを全部ひっくるめて、樋口は答えた。
「行かない・・・」
俺は一瞬焦った・・・
「訳ないだろ!」
樋口は確信を込めた笑みで答えた。
いよいよ『サビ』の部分です。
皆さん、どうぞ見てください。




