白い闇
俺は、見た夢の記憶を頼りに、墓を探していた。
あの時は、壁にそって走っていたのでその通りに進んでいく。
あの時と違い、霧はなく前がよく見える・・・
「ねぇ 本当にこんな所にお墓なんてあるの?」
和葉が言った。
そんな疑問を抱くのには無理はない・・・
実際の所、俺もそう思っている。
「あるだろ 多分・・・」
樋口が、鼻の穴を小指で、クリーニングしながら言う。
こいつ、後で覚えてろよ・・・
「ねぇ ハルってさぁ 何のために、そのお墓探してんの」
突然の質問だった・・・
あれ 俺、何のために墓探してんだ・・・?
「もしかして、墓荒らし?」
こいつ、なんて事言い出すんだ・・・
「そんなんじゃない・・・」
俺は、静かに反論した。
「じゃぁ なんのため?」
「・・・・俺のため・・・?」
すると、突然腹部に衝撃が走った。
「ぐふぅ!」
「真面目に訊いてるの!」
いやいやいや、こちらもとてつもなく真面目に答えたつもりなのですが・・・
その時、樋口が俺の肩を叩いた。
「ん? どした、樋口」
樋口の顔は、引きつっている
「なぁ ハル こんな事ってあるのか・・・?」
すると和葉も、
「えっ ちょっ 何よ、あれ?」
俺も樋口たちの見ているほうを見た。
「何だよ 自然的なものじゃ、ない、よな・・・」
それは、霧だった。ただの霧だったら驚きなんてしない。
まるで、波の様に俺たちに迫って来ていた。
俺たちをここから先へとは、行かすまいとしている様に・・・
そして、霧は俺たちを一瞬で飲み込んだ。
「うわ 何だよこれ 何もみえねぇ」
樋口の声だけ聞こえる。
確かに、何も見えない。
「ちょ ハル ハル、どこ?」
和葉の声がする。
「おい ここだ!」
俺は、和葉の声がした辺りに向かって叫んだ。
だが、
「おい 苑宮 ハルはどこだ」
樋口?あれ、今の聞こえなかったのか?
「おい 樋口、ここだ。今どこら辺にいる?」
だが、まるで俺の声が聞こえてないように、和葉が
「分からない ハル! どこになのよ!」
続いて樋口までもが、
「おい ハル、いるなら返事しろぉ!」
「おい 俺はここだ!」
どんどん和葉たちの声が小さくなる。
「ハ・・・! ど・・・にい・・・の?」
俺も必死で叫ぶ
「・・・・・・!!」
あれ、俺の声が聞こえない・・・
「・・・・・・・・・!!!」
いくら叫んでも、叫んでいる気がしない・・・
そして、俺は音も、光もない、白い闇に閉じ込められた・・・




