お団子トラップ
「んで あったのか、その墓は・・・?」
樋口が訊いてきた。
俺は、あの部屋を出てすぐに樋口たちと合流した。
それで、今までの収穫を全て話した。
「いや まだ探してない」
俺は少し間を空けて、もう一説明した。
「だけど パンフッレットを見る限り、そんな墓ないんだよ・・・」
「でも ただの夢じゃないのは確かなんだろ?」
「ああ・・・」
「だったら、あんだろ どっかに・・・」
なんの根拠で言ってんだ・・・
そして、俺はあることに気づいた、
「なぁ 和葉はどこ行ってんだ」
「ああ 苑宮だったら、団子買いに行ったぜ」
団子・・・?何のために・・・
「なぁ ハル お前は、苑宮にこの事、話さなくていいのか?」
樋口が少し深刻そうな顔をして言った。夢の事だろう・・・
いつも、おちゃけているだけに、何故かこう言う時は説得力がある・・・
「これは、俺の『妄想』だって、医者には言われてんだ。話したところで、バカにされるだけだ・・・」
樋口の顔が、一瞬だけ悲しそうになった様に見えた。
その時、和葉が戻って来た。
右手には、小さな袋を持っていた。
「あ ハル、調べ物は終わったの?」
和葉が直球に訊いてきた、
「いや、まだ終わってはないな・・・」
和葉が、団子のパックを一つ取り出すと俺に渡しながら、言った
「だったら、ここから私たちも、同行するって事で・・・」
団子を食っていた俺は、串を喉に突きかけた・・・
そして、団子を口に含んでいる俺は反論が出来ない・・・
和葉は、話を続ける、
「私たちも、お墓参りも終わった訳だし、ハルを待っとくって言うのも暇そうだし・・・」
団子がなかなか飲み込めない・・・
頼みの綱の樋口は、楽しそうに俺たちを眺めている。
この時、俺は気づいた・・・
こいつら、グルだ・・・
「と言う訳で・・・」
ヤバイ、この先を言われたら・・・
俺は、急いで団子を飲み込まなくては・・・
そして、和葉は言った、
「今から、一緒に行動するって事で・・・!」
言われてしまった。
団子は飲み込んだ。だが、ここで反論したら、間違いなく和葉に殴られるだろう・・・
まぁ、大事な事はもう済ませてあるし、後は墓探しだけだし、大丈夫だろ・・・
和葉はとても楽しそうに団子を食べている。
樋口も楽しそうに、それを眺めている。俺も残りの団子ちゃんと、味わって食べる。
だが、この時は誰が思っただろう・・・
この後、俺の人生の歯車が、有り得ない方へと動きだすだなんて・・・
ヤバイ、アイディアが気持ち悪いくらいに沸いてくる。




