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プロローグ

「ソウル」

「――何だ、ルクエール」


 女の声に呼び止められ、ピクリと肩を震わせた後若干嫌そうにソウルは足を止めて振り返った。その視線を受け止め、ふふんとルクエールは髪を掻き上げ傲然と笑う。


「今さっき、正式に元老のジジィどもから要請されたわ。次の王は私よ、ソウル」

「だったら何だ。俺には関係ない」


 溜め息をついて、ソウルは面倒そうにルクエールの隣をすり抜け立ち去ろうとした。付き合って楽しい話でもない。


「関係無くないわよ」

「俺を追放でもするか?」


 目を細めふんとソウルは鼻で笑う。有り得ない事だったからだ。

例えルクエールが王になってソウルの追放を望んだとしても、何もなければ周りがそれを許すまい。ソウルは自他共に認める天才だからだ。あらゆる分野において。


「まさか。私がお前を追放なんてするはずないでしょう?」

「ハッ。言っとくが俺様はお前の治世に手を貸すつもりは無いぞ。何でも勝手にすればいい。俺を巻き込むな」

「ふっ。相変わらず強気なのね」

「当然だ。俺様に恐れるものなど何もない」


 腕を組み、にやりと凶悪に笑って威嚇するようにルクエールを見上げるが、相手はその目を捕えて嫣然(えんぜん)と微笑って見下ろして来た。


(――?)


 何かが違う、とソウルの中で警鐘が鳴った。


「ソウル」

「……何だ」

「私はお前を愛人にするわ」

「………………。は?」


 何の聞き間違いだ?


「お前の血を王家に残す気はないけれど、私はお前を気に入ってるわ。安心なさい。夫にはしないけれど私が一番可愛がるのはお前よ、ソウル」


 すいとそのまま屈み込むと、唖然としたソウルにそのまま口付けた。

柔らかい女性の唇が離れて、数秒。フリーズしていたソウルにようやく再起動が掛かる。


「なっ、なっ、何しやがんだァ――ッ!」


 女に。女からキスされた。

ファーストキスは絶対相手に目を瞑ってもらって自分が上から唇と落としたかったのにッ。


「貴様ァッ! この屈辱、忘れんぞっ!」


 涙目になって怒鳴るソウルにやだ可愛い、とか言ってルクエールルはぎゅうとその体を抱きしめた。

ソールスティーリッヒ・バル=アク・ハインシュベルク千と二百六十六歳。

この日生まれて初めて、諦めていた王位簒奪の野心に火を付けた。

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