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第4話

昨日から降り続いていた雨も今日は嘘のように晴れ、少しだけ雄多郎の気持ちも晴らしてくれた。自宅マンションを出た雄多郎は吉田京子の病院に寄ってみる事にした。彼女が落ち着いているのか分からないが、昨日の事をどうしても自分自身で確かめたかったのだ。御見舞い用に生花を買い、病院へと向かった。1階の受付で彼女の病室を聞き、エレベーターで7階に上がり彼女の部屋の前まで来た時、病室から女性が出てきた。彼女の母親だった。吉田京子の母親に挨拶をして昨晩の状況を伝えた。母親は恐縮して中へといれてくれた。御見舞いの花を持って母親は病室を出た。京子はベッドに上半身を起こしてジュースを飲んでいた。元気そうである。吉田京子は22歳と聞いていたがそれよりも若く見えた。短大は卒業したが不景気で就職出来ず、これといってやりたい事も無い、結婚するまで実家にいて遊んでいようといったタイプ。話し方もいまだに子供っぽさが抜けていない様である。

「昨日はどうもありがとうございました」

「もう大丈夫なの?」

「はい、大丈夫です。本当にビックリしちゃって・・」

「僕、新聞記者なもんで、昨日の君の話聞いてちょっと質問したいんだけど、いい?」

「さっきも刑事さんにはお話したんですけど」

「警察が来てたの?」

「はい」

京子は雄多郎の名刺を見ながら

「早見さんが来るちょっと前です」

「あ、そうなんだ。君は安藤という男は知らなかったそうだね」

「ええ、名前は。でも駅では何回か見かけました」

「君は昨日の話では、安藤が狼男に変身したと言ってたよね?どんな感じだった?」

京子は少し顔を赤らめて答えた。

「あっ、あれですか・・確かに変ったと思いったけど、だいぶ酔ってたんでー。刑事さんが見間違えたんじゃないか、って言うからあたしもそうかなぁ、って・・」

「じゃ狼男は幻覚だったの?」

「いいえ、見ました。狼男になったんです。でもあたし昨日の昼ホラー映画見たし・・」

雄多郎は思った。これではやはり彼女の証言はあてにならない。彼女自身、事実か幻覚なのか分かってないのだ。

「その後、君を助けてくれた仮面のヒーローはどうなの?」

「ええ、確かにそんな人が助けてくれて、狼男と戦っていたような気がするんですけど、なんせかなり呑んじゃってたから」

京子はなぜか、最後の自分の言葉に笑いを含ませていた。

「刑事さんも早く忘れなさい、って言うからもう忘れる事にしました。だってあり得ませんよね?狼男だの変身ヒーローだなんて」

京子は自分で言って笑った。確かにそうだと思った。幻覚と思われても仕方ない話だ。逆に言い張るほうが頭を疑われてしまう。雄多郎は少しがっかりしたが、しょうがないと思った。

「最後に一つだけ、君は昨日あの時間に黒いコートの男を見なかった?」

京子は楽しそうに言った。

「さっきも刑事さんに聞かれたけど、見ていません。似顔絵も見たけど、知りませんでした」

「今日は大変な時にありがとう。お大事に」

京子ははにかみながら言った。

「あのー、助けてくれたのは早見さんじゃないですよね?」

雄多郎は京子の言っている意味が分からなかった。

「まさか、違うよ。どうして?」

「いや、その、早見さんだったら良かったなぁ・・なんて。今度食事に行きませんか?」

(なんて能天気なお嬢さんだ。一応、人が一人死んでいる事件なのに。でもこれが今の若い娘の考えなのかなぁ)雄多郎は思った。

「考えとくね、じゃお大事に」

雄多郎は苦笑いで病室を出てから、途中花瓶に花を挿して歩いてくる京子の母親に挨拶をし、病院を後にした。


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