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第25話

長塚はユニバーサルエナジー本社前で陣頭指揮を取っていた。拡張器を使い再三呼び掛けを行ったが中からの動きは全く無かった。

「なぜ、誰も出てこないんだ。いないはずはない。一体なぜ呼び掛けに答えない」

長塚は苦虫を噛み締めながら一人呟いた。長塚の携帯が鳴った。

「もしもし」

(長塚警部)

「早見か?」

(そうです。今回はありがとうございました。おかげで出られました)

「無事でよかったじゃねぇか。早くこっちへ戻って来い。聴きたいことが山ほどある。今忙しいからな、後で掛け直す」

(警部、そこには響木社長はいませんよ)

「何だと、どういう事だ」

(詳しくは東都新聞のホームページを見てください。それから警部、奴にはかないません。無謀なことはくれぐれもしないでください)

「奴って誰だ。社長のことか?」

(今はまだわかりません。ただ奴の力に対して我々はあまりにも無力です。これ以上の犠牲者を出さない為にも動かないでください)

「バカヤロー!俺達は警官だ。誰に向かって言ってやがるんだ」

雄多郎は長塚のあまりの声の大きさに携帯を耳から離した。事の重大さを知ってしまった今はできるだけ冷静でいたかった。長塚と議論をしている暇もない。

「警部よく聞いて下さい。奴は人間を獣人に変える事ができます。警部もこの所の事件である程度わかって来ているはずでしょう。もう信じる信じないじゃあないんです。それが事実なんです。わかって下さい」

携帯の向こうでは苦痛の表情に歪む長塚の顔が浮かんだ。しかし長塚は先程とは打ってかわり穏かな口調で言った。

(早見。訳のわからない自分の理解を越えた事が起こっている事はわかる。だがな我々警察官は市民の安全を守る事が義務だ。税金泥棒だけにはなりたくねぇ。悪い事をやった奴は法の基にきちんと裁かなきゃいけねぇ。お前の気持ちはありがたいが、俺らがじっとしている訳にはいかねんだ。それが仕事だからな。お前も自分の体を大切にしろ)

長塚はそお言ってから携帯を切った。若い刑事が小走りで側に近寄ってきた。

「警部。強行突入の指示が本部から入りました。突入して関係者の身柄を確保しろと。じき機動隊も到着します」

長塚は思った。業務上過失致死の令状を無視し、誰も対応に出てこない。このリスクは響木社長に取っては大きい。なぜ、大きなリスクを背負ってまでも拒み続けるのか。雄多郎の言っている事が事実であれば、人間は獣人に変ったり殺し合いを始める事になる。不安は積もるばかりだった。このまま突入して多くの仲間や自分自身をも犠牲にして良いのか。警察を拒否し続ければこうなるのは当然である。奴らはそれおも計算づくではないのか。長塚は思案せずにはいられなかった。しかし長塚は根っからの警察官である。何があっても治安を守るのが警察官の職務であると信じていた。ここにいる刑事達は雄多郎の話をまだしらない。長塚は仲間の刑事達の顔を一人づつ見た。皆、何があっても一歩も引かないといった面構えである。長塚は皆が警察の職務を真っ当してくれると信じたかった。いや、信じていた。

「みんな聞いてくれ。機動隊が到着次第突入する。熊本県警の報告、研究所火災の生存者の話によるとユニバーサルエナジーは何か得体の知れない未確認の兵器、武器、もしくは装置を使用すると思われる。相当な危険がともなうと思われ、俺は拳銃の所持を本部に要求する。だが抜かないで済む事にこしたことはない。中に入ったら十二分に気を付けてくれ、何が起こるかわからない。俺はこのユニバーサルエナジーが一連の無差別連続殺傷事件の犯人組織だと確信している。みんな、本庁が出てくる前にこのヤマにケリを付けよう」

刑事達がざわついた。みんなは過失致死を起こしたユニバーサルエナジーと殺傷事件との繋がりについては初耳だったからだ。長塚に対して二,三の質問が飛んだが、中にいる者を全員逮捕すれば全てがわかるとだけ長塚は言った。刑事達は長塚に絶対の信頼を寄せている。長塚の言う事に今まで間違いが無かったからだ。刑事達は今日、この場所で連続殺傷事件がそれもM中央署の手で解決できる事に興奮の色を隠せずいきり立った。今まで事件の糸口さえ掴めなかったのだから当然である。危険であるという長塚の言葉はどこかへ消え去り、迷宮入り確実の事件の実行犯を逮捕できる事にそれぞれが思考を張り巡らせ、緊張を解き、軽はずみな私語を伝染させた。長塚の怒号が飛んだ。

「バカヤロー!てめーら俺の話を聞いてやがるのかー。浮き足立つのもたいがいにしやがれ!冗談じゃねえんだよ。覚悟してかかれ!わかったか!」

みんなが声を揃えて返事を返した。多少の緊張感が戻り、場の空気が引き締まった。長塚は本部と連絡を取る為、車に向かった。

(みんな、すまねぇ。俺に命を預けてくれ。だが、誰も死なせねぇ。俺の命に代えても・・・)


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