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第21話

森は沢山の木々が生い茂り、かなり傾斜していた。下の方から川の流れる音がしている。カガミは傾斜の激しい斜面を気使いながら、痛む腕を木々に伸ばしながら進んだ。手を離すと転げ落ちそうである。カガミは気配を感じた。それは間違いなくハイエナの気配であり、血の臭いに敏感なハイエナはカガミの血の臭いを嗅ぎつけて来たのだ。カガミは早見ではなく自分の方にハイエナが寄ってきている事に少し安堵した。いくら自分が手負いであっても、人間の早見よりはハイエナを撃退できると思っていた。カガミの前方の草木が音をたてて揺れた。腰から棒を取り出し、銃型に変えてから静かに構えたが、まだスタンバイはできない。電流の集まる音にハイエナが気付き、自分の前から遠ざかるのを恐れたのだ。「ガサッ」音がして再度、草木が揺れた。緊張が走る。しかし、草むらから飛び出したのは野うさぎだった。カガミは一瞬、「ほっ」として緊張を解いたが、その時、突然ハイエナがカガミの真横に飛び掛かった。

カガミとハイエナはもんどり打って倒れこみ、そのまま傾斜を転がり始め、カガミは持っていた棒を取り落とした。草木を抜けたその先は断崖になっており、カガミとハイエナは勢いのまま飛び出し落ちて行った。約5mの高さ、断崖の下は岩場になっており、川が流れている。大きな岩に背中を激しく打ちつけた、と同時にカガミは人間の姿へと戻った。カガミは一瞬、息が止まった。激しく背中を打ちつけた為、呻いた。普通の人間であれば5m下の岩場に背と頭を強く打ちつければただでは済まなかっただろう、打撲か脳震盪を起こしていたかもしれなかった。

しかし、それを救ったのはスーツやマスクであり、叩きつけられた衝撃を吸収したのだ。スーツとマスクは衝撃を吸収した為、着用限界を超えて姿を消したのだ。息をするのに数秒掛かり、頭と背中の痛みが全身を襲っていた。痛みを堪えて目を開いた時、絶望感がカガミを襲った。目の前にハイエナの顔があった。落ちたハイエナは運良く無傷だ。カガミは焦ったが動く事ができなかった。ハイエナは低い呻き声を発し、口元からは涎を滴らせ、人間抹殺を行動に移そうとしている。万事休す、カガミはなす術がなく体が言う事を聞かない。今喉元を食い千切られれば確実に死ぬ。カガミの上にまたがったハイエナは咆哮を上げた。それでもカガミは動くことができなかった。だが、咆哮を上げたハイエナの尖った口元から血が滴り出し、血はカガミの胸元に落ちて広がった。ハイエナは頭を「ガクン」とカガミの胸元に落としてから、全身をカガミの体の上に落として来た。カガミは何とか手を動かしてハイエナを自分の体の上から退かし、ハイエナは力なく岩の上に転がった。カガミは最初、何が起こったのか理解できなかったが、ハイエナの背中から心臓に掛けて太い木の枝が突き立っているのがわかった。側に放心して尻餅をついている雄多郎を見つけて、全てを理解した。雄多郎が自分を助けてくれた事に。雄多郎は荒い息を付いたまま呆けていたが、ハイエナが次第に人間へと戻っていく過程を見ながら、絶叫していた。

「うわあぁぁぁぁぁー」

雄多郎の叫び声は森に響いて木霊して行く。

ハイエナは人間の姿に戻り、上半身裸で横たわり、大量の血を流し、その背中から雄多郎が突き立てた木の枝が血を吸い上げて行く。

雄多郎は人間を殺した事のショックが全身を貫き、叫び声を止めなかった。カガミはやっとの事で上半身を起こしながら、声を振り絞り雄多郎に向けて叫んだ。

「落ち着け早見!お前が殺したのは人間じゃない。獣人だ!元は人間だが、獣人になったんだ!お前のお陰で俺は助かった、俺はお前に助けられたんだ。そうだろう!早見!」

雄多郎はカガミの声で段々と我に返った、そして大きく深呼吸をした。


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