第11話
ユニバーサルエナジー本社ビル前の道路を挟んで、中野が張り込みを始めて既に20分が経過していた。雄多郎が中に入って20分が過ぎたと言う事である。空に雲が出てきた。一雨来るのかもしれない。雨が降り、本格的な冬がやってくる。中野は冬が嫌いだった。張り込みの時、今日の様な寒い日は車でもあれば良いが、なければ最悪である。中野は中の様子が気になっていた。中で雄多郎が何をしているのか。中野は、狼男や人間ワニの事など信じてはいない。警察を愚弄する雄多郎や、ユニバーサルエナジーの目的が知りたかった。
「早見の奴、中で何やってやがるんだ」
中野は一人、呟いた。その時ユニバーサルエナジー本社のビルから、機会の作動する音が中野の耳に飛び込んできた。中野は確認の為、隠れていた場所から飛び出した。間違いなく本社ビルからの音である。中野には、その音の意味がすぐに分かった。1階フロアの正面玄関のガラス張りの表面全てにシャッターが降り始めたのだ。中野は一瞬呆然としたが、次の瞬間、衝動的に走り出した。ビルの前の道路に飛び出した。車が走って来てクラクションを鳴らしたが、走りながら手を出して車を止める動作をし、間一髪の所で車をかわした。後ろからの運転手の罵声を無視して走った。シャッターはすでに半分閉じかけている。中野は扉のロックが掛かっていないことを願いつつ、歩道横のガードレールを蹴った。そのままのスピードで半分以上閉じかけているシャッターの下の扉めがけて、肩から飛び込んだ。幸いにも本扉にはロックが掛かっていなかった。もんどり打って中野は1Fロビーに転がり込んだ。その後でシャッターが音をたてて完全に降りきり、ロックが掛かる音がした。中野が飛び込んで開いていた扉もゆっくりと閉まり、自動でロックが掛かった。
中野は尻もちをついたまま大きく息を吐いた。全力で走ったため息が荒い、つかの間中野は座り込んでいた。シャッターが閉まった1Fロビーは暗く、非常口のグリーンのランプしか灯りはなかった。目が暗闇に馴れるのに少し時間が掛かった。目が馴れてくると中央にエレベーターがあるのが見えた。中野は立ち上がるとエレベーター前へ進んだ。エレベーターの左の奥に階段が見える。中野はエレベーターのボタンを押したが反応はない。壁掛式の電話に手を出す気にはならなかった。ユニバーサルエナジーの秘密を探りに入ったのだからギリギリまでは存在を気付かれまいと思った。エレベーターを諦めて、中野は階段口へ向かった。階段へ通じる扉の向かいに非常口のランプが掛かった扉があった。1Fロビーの灯りはこのランプから来ている。非常口の扉のドアノブを廻してみたが、ロックが掛かっていた。中野は焦った。階段口の扉が開かなければ、1Fロビーに閉じ込めらたことになる。他に出口は見当たらない。中野は逆側の階段口のドアノブを廻した。ノブはカチャリと音を立てて廻った。階段は通れそうである。中野は暗い階段口へ進入し、恐る恐る階段を昇っていった。その一連の中野の動きを広報課のテレビモニターは全て写し出している。しかし、そのモニターを見ている者は誰もいなかった。安河内がシャッターのスイッチを入れたと同時に広報課の別室にいた二人の社員は安河内の部屋に入って来たのである。雄多郎は事の異常に気がついた。二人の男はドアを後手に閉めて無表情である。安河内はニヤけた顔をしている。雄多郎は恐怖を感じた。読みが当たっているとしたら当然、ここから簡単に帰れるはずがない。それでも雄多郎は出来るだけ冷静な振りをして言った。
「安河内さん、これ以上お話をしても無駄な様ですね。又、改めて出直します」
雄多郎の声はあきらかに震えていた。自分自身でも良く分かった。声がうわずって少しひっくり返った。ソファから立ち上がりかけた時、安河内がハッキリした声で言った。
「お待ちなさい、早見さん!」
安河内のその声で、立ち上がりかけた雄多郎はその姿勢のまま止まった。
「あなたは知りすぎだと言ったハズです。我々の人類獣人化計画を」
「人類獣人化計画!」
雄多郎は最後の安河内の言葉を繰り返した。雄多郎は恐ろしかった。ここからすぐにでも逃げ出したかったが、反面、安河内の話を聞きたかった。ここまで話を聞きだすことが出来たのだ。こうなれば全て聞きたかった。腹をくくるしかないと思った。
「人類獣人化計画というのが、あんたたちの考えている事なのか」
普通、獣人と聞いても笑い話にしかならない言葉もあの新井を見た後ではうなづける話である。雄多郎は全てを聞き出すつもりであった、安河内は眼鏡を上げながら言った。
「そうです、人類を獣人にしてしまうことを我々は考えています。実験はすでに成功したと言ってもいいでしょう。あなたが見た御同僚の変身も成功例の一つです」
安河内はニヤけた表情を変えずに言った。
「我々も驚いています。こんなにも早く成功するとは思いませんでした。素晴らしい、最高です」
雄多郎は新井の顔が浮かんで悲しい気持ちになった。怒りと恐怖を抑えて聞いた。
「あのCDを聴いたからなのか?」
「ええ、そうです。私も始めは信じられなかった。しかし、最初のCDを聞いた者はあきらかに変化した。理性を抑えることが出来なくなり、人を殺す事に何の迷いも躊躇もしない、獣そのものです。特に向上心の強い者は特に変化が早い。そう、人を蹴落としてでも成功したい、上に上がりたいと思っているからです」
「やはり一連の殺傷事件はあんたたちの仕業だったのか」
「そうです。しかし今までのCDは単に人間を凶暴化しただけにすぎなかった。今度のCDは違う。正に本物の獣人に変える。あなたも見たでしょう、早見さん、あの姿を!」
安河内は喜びに満ちた眼で口元に笑いを浮かべながら言った。
「どうやってそんなCDを作る事が出来たんだ。とても人間が作り出せる物じゃない」
「ええ、そうです。そのとおり。我々の響木社長は人間等、下等な者ではない。正に神なのです。神が作り上げた物が人間に計り知れる物ではない」
安河内は声高らかに言った。それはまるで、選挙の候補者が票を獲得するために出来もしない公約をでっち上げるがごとく自身に酔いしれている街頭演説のようだった。
「響木社長がCDを作った。いったいどうやって・・」
雄多郎は今の科学ではとても理解出来ない。まるで錬金術師の様な響木という男に心底、恐怖と興味を憶えた。今まで色々な宗教家や、自分自身を神と語り、出来もしない魔法や予言を説いては消えていった数多くのニセ教祖を雄多郎は見てきた。しかし、響木という男は違う。本当に人間を獣人化する物を作り出したのならば、安河内の言う事も、なまじ嘘ではない。正に神に近い存在と言ってもいいのかもしれない。
その事実を目撃したのも、間違いなく雄多郎自身でもあったのだった。雄多郎は安河内に返す言葉が見つからず、目線を彷徨わすしかなかった。疑問をぶつけたくとも、あまりにも話の内容が奇抜で雄多郎の思考の許容範囲を越えていた。次の質問が出てこない。
「早見さん、どうしました?驚いて声も出ないようですね」
安河内はまるで勝ち誇ったように言った。
一瞬、思考が停止しかけていた雄多郎に、安河内の言葉がもう一歩踏みとどまらせた。
「も、目的は一体何なんだ!」
安河内がまたも目を輝かせて言った。
「早見さん、いい質問だ。あなたもなかなか素晴らしい。いいでしょう、お答えしましょう。人間を獣人化する、これすなわち文明の退化を意味します。今のこの地球は汚れすぎている。あなたにもわかるでしょう。この地球の汚れ方を、人類が犯した、科学の発展は緑を破壊し、大気を汚し、オゾン層の破壊、数えればキリがありません。この地球は今、瀕死の状態にあります。このままでは地球は滅びてしまう。そこで我々はこの地球を以前の美しい地球にする為に、今の人口を約10分の1にする事を考えた。人間を獣人化する事によって、この世は弱肉強食の世界となり、弱い者は死にゆく、そして強い者は残る、残った者を我々が管理する、そして科学の時代は終わりを告げ、地球は元通りの姿に再生していくのです。何億年もかけずに何年、何ヶ月と言う速さで、人間が住むにふさわしい素晴らしい環境に変えていくのです。地球の再構築です」
雄多郎に言葉はなかった。あまりの話の大きさに心の中ではそんなことできるはずがないと思いながらも、それを現実にしてしまいそうな響木と言う男とユニバーサルエナジー社、あまりに自分の手に追えない話、雄多郎はただ呆然とした。安河内は雄多郎の様子を見ながら言った。
「早見さん、あなたにはあまりに壮大な話でしたね。あなたの常識ではとても計り知れないでしょう。まぁいいでしょう。ですからCDは返していただかなくても結構なのです。一人でも多くの方にあのCDを聞いていただくのが我々の望みです。今後、獣人になった者と人間との殺し合いが始まるでしょう。我々はそれを高見の見物をします。最初は人間の武力で獣人側が不利でしょうが、最初だけです。なんせ武器を持っている人間が獣人に変って行くのですから。その後、獣人と獣人との戦いになるでしょう。獣人同士は本能のまま戦います。そこに武器はありません。己の力のみです。人間の生み出した武器等はもう不要になるのです。今のように核問題で悩む必要もなくなりますよ。ハッハッハッ」
安河内は高らかに笑った。雄多郎は明日香やマリ子の事を思い出した。獣人に引き裂かれ殺される。マリ子が殺される(嫌だ!嫌だ、自分の知り合いが殺されたり、殺し合うなんて)雄多郎は声を震わせて言った。
「そんな事は絶対にさせない。俺が止めてやる。世界中にこの事を公表して今後CDを絶対に聞かないように叫んでやる」
安河内は又も笑った。そして笑いながら
「早見さん、あなたもだいぶ頭の回転が鈍っているようだ。一人々CDを聞かせるような事をしていては時間の無駄でしょう。そんなまどろっこしい事はしませんよ」
「えっ、どういうことだ、それは?」
「我々はまず、この日本を再生する計画です。そして徐々に世界へも手を伸ばして行きます。しかし、その方法をあなたが知る必要はない」
安河内の言い方では効率良く人間を獣人に変える方法がある様である。雄多郎はその方法が知りたかったが、安河内は腕時計を見ながら言った。
「早見さん、そろそろ時間です。私も忙しい身ですので、そろそろこの取材も終了していただきたいのですが」
安河内はニヤけながらわざとらしく言った。
「あっそうだ、早見さん、取材には体験するのが一番だ。体験に勝る物はありませんよ」雄多郎が安河内へ問い掛けの表情をしたと同時にいつの間にか雄多郎の両腕を強引に両側から掴み、ソファーに強く座らせた。
雄多郎は強く抵抗したが二人の社員は力強く雄多郎を押さえつけた。
「はなせー、くそ、はなせー!」
雄多郎は足を蹴り上げたが、前のテーブルをひっくり返した程度の物であった。
安河内が机から立ち上がった。その手の中にはコードレスのヘッドホンが握られている。そのヘッドホンを見た時、雄多郎は本当の恐怖を感じた。新井の顔、人間ワニの姿が浮かんだ。自分自身が獣人にされてしまう。雄多郎は叫んだ、もがいた。が、二人の社員の腕の強さで体を上下左右に揺らすしかなかった。安河内は雄多郎に近付く。相変わらずニヤけている。
「早見さん、今あなたは私が憎いでしょう。もっと憎みなさい。その憎しみ、怒りがあなたを獣人に変えるでしょう。何に変りたいですか。やっぱり百獣の王がいいでしょうね」雄多郎は恐怖で涙が出てきた。
「よせー、やめろ、やめてくれー!」
安河内は雄多郎の背後に廻ってヘッドホンを両手で開いた。頭を抵抗して左右に振る雄多郎の両耳に強引にかぶせた。雄多郎は叫び声を上げた。
中野は薄暗い階段を昇った。ロビーの案内で2階は倉庫となっている。中野は2階の入り口ドアまで昇った。(なんでこんなに静かなんだ、侵入してまだ一人の社員も見かけないぞ、なんて不気味なんだ)
中野は2階の入り口ドアの前で立ち止まり、唾を飲んだ。入り口ドアのノブを廻した。カチャリと音がしてドアが開く、中から冷たい空気に混じって、異様な臭気を感じた。中野は思わず手で鼻と口を押さえた。
(一体何の臭いだ、ひどい臭いだ、くっせー)
中野は2階に侵入した。中央通路の右側に倉庫のプレートが掛かったドアがある。手で鼻と口を押さえたまま通路を進み、倉庫のドアまで来た。ドアに耳を近づけてみたが、物音はしない。中野はドアノブに手を掛けた。その時中から音を聞いたと思った。当然、倉庫に社員がいてもおかしくない。逆にあまりに人気がないので不気味なのだ。中野はそっとドアを開けた。中は暗くて何も見えない。ドアを開けた瞬間、先程の臭気が強く中野の鼻を貫いた。中野はむせた。中野は手で鼻と口を押さえたまま、暗い室内を見廻した。暗かった室内も少しづつ目が馴れつつあった。が、しかしそこに何があるのか等は判別は出来ない。というか何もないように感じた。中野は先程誰かの気配を感じたので、その気配の元を探さずにはいられなかった。
室内灯のスイッチを探す為、自分が入れる程にドアを開いた。ドアは通路側に開く。中野は体を室内に入れて、足でドアが閉まらない様に押さえ、片手で口を押さえながらもう片方の手を壁に這わせてスイッチを探した。
その時異様な音が聞こえた。いや、音なのか、いや違う、音ではなく声に近かった。呻き声、中野はその音と言うか声が何であるか何に近いのか思い出したような気がした。中野が住んでいるアパートは3階建ての今はコーポという物であるが、そのコーポの隣に民家がある。夜、中野が寝ている時によく不意に起こされる時がある。隣に飼われている犬が人が通る度に吠えるのだ。また、猫等が近付くと、威嚇する声を出す。そう、あの「うー」という唸り声である。中野は今、聞こえている声が犬の威嚇した吠え方に似ていると思った。(こんな所で犬を飼っているのか、そんなバカな)しかしそれであればこの臭いも理解が出来るのである。中野はこの声で、この臭いが、動物、特有の臭いであると悟った。聞き込みで犬を室内で飼っている人を訪問した時、必ずしている臭気である。そこに住んでいる者は中々気付かないのだ。
一段とその呻き声は高くなった。中野はその声の方向を目を凝らして見た時、暗闇の中で赤い2つの点を見つけた。その点が少しづつこちらに近付くように感じた。そして近付く様な気がした。中野の心臓は高く鳴った。早く灯りをつけなければと焦ったが、中々室内灯のスイッチは見つからなかった。その赤い2つの点は段々と中野へと近付いてくる。中野は恐怖でドアを閉めて、通路へ逃げようと思った。刑事の感で身に危険が迫っている事を感じた。しかしその時、手に室内灯のスイッチらしき物が確認出来た。間違いなく室内灯のスイッチである。中野は迷った。電気をつけるべきか、この場を逃げるべきか。中野は恐ろしかったが、声の元を確認せずにはいられなかった。このまま逃げれば何のためにここへ潜入したか分からなくなる。中野は意を決した。少し震える指で室内灯のスイッチを入れた。「パッチッ」という音と共に少しづつ部屋の灯りが点灯しだした。奥の方から蛍光灯のランプが点きだした。部屋は10畳以上はありそうな部屋である。奥の方から、一気に灯りが近付いてくる。その速度は秒単位である。一気に中野の目の前も明るくなった。まず中野の目に入ったのは空のベッドであった。そしてテレビ、ソファー、ベッドの枕元には小さな移動式テーブルが有り、その上にはCDラジカセが置いてある。中野は不自然に思った。(何だここは、倉庫じゃないじゃないか)10畳程の部屋にベッドとテレビとソファーしかない。一応人が生活できそうな物はある。しかし、生活感はまるで感じられなかった。中野が一瞬思ったのは、拉致、監禁である。暴力団や宗教、その他の団体が特定人物を誘拐して、洗脳や薬中毒にする為の部屋に似ている。明らかに犯罪の臭いがすると言っても良かった。
しかし中野が聞いた声の主の姿はない。中野は室内を見廻し声の元を辿り、先程の赤い点がベッドのすぐ側にあったと思った。今、中野の視界にその者の姿はない。その時左側の足元に中野は何者かの気配を感じた。室内の中央部分に特に視線を置いていた為、自分の足元や左右に関して注意がいってなかったのだ。確かに何者かが自分の左側にいる。中野は動かなかった。いや、動けないと言う方が正解である。その者から強い殺気が感じられるのだ。少しでも動けば相手が飛び掛らんばかりの殺気である。中野は恐怖を感じた。(一体、何なんだ。何がいる、動物か?くそー動けない)中野の額から大粒の汗が流れる。その汗は頬をつたい顎から滴り落ちた。中野はその目だけを必死にはわせたが気配を出している者へは辿りつく事は出来ない。数十秒、室内スイッチを入れたままの体制でいただろうか。(犬だろうか、犬であればビビる事はない。俺も子供の頃は飼っていたことがある。こちらが大人しくしていれば何もしないだろう。手慣付けもできなくはない、もし狂犬であってもすぐこのドアから逃げればいい。ドアはまだ3分の1開いているのだから、大丈夫だ、心配ない)
中野は自分に(心配ない)と繰り返し言い聞かせた。しかし中野の恐怖と緊張は収まらなかった。それはその者の出す異常なまでの殺気が感じさせているのだ。中野は思った。こうしていても埒があかない。声の元を見るのだと。中野が思い切って声の主に振り返ろうと思った時、先程の唸り声が今まで以上の近さで聞こえた。その声で心臓が口から飛び出さん程驚いた中野は、体を「びくっ」と縦に震わせ、同時に左側を向いた。その者の姿が視界に入った。中野は一瞬絶句した。中野が見たものは案外近くにいた。中野からは2メートルと離れていなかったのだ。両手を着いて両膝を折っていた、四つん這いの状態である。白の長袖シャツを着ている。そして下はジーンズ。しかし、そこから出ている手と足は黄い毛並みに覆われていた。少し黒い毛も混ざっている。そして中野が見たその顔は犬ではなかった。服をまとった人間大の豹であった。鋭い眼光が「獲物を狙う豹」そのものである。口からは涎を滴らせ中野を凝視し、今こそ飛び掛り喉元を喰いちぎらんとタイミングを計っているその姿は、その人間大の大きさと服を着ているというアンバランスさで、中野をパニックに陥れた。実際、中野が最後に見た光景は、人間豹が大きく吠えながら、中野に飛び掛ってきた時までであった。自分が叫び声を上げたかどうかまでは本人も憶えてはいないだろう。冷静になれる時間があれば、吉田京子の狼男事件が限りなく現実に近い事であったと判断出来ただろうが、残念ながらそんな時間はなかった。
中野刑事は姿を消した。




