19話 襲撃の中で繰り広げられる、仁義なきお姉さん対決!
『全員、その場で周りの子らと卵を守れ!! 攻めに出る者は、敵の気配はもう分かっているな!!』
敵魔獣がグリフォンの縄張りに、育み場の近くに入り込んできたらしい。周りの大人魔獣たちが一斉に動き、自分の傍にいた赤ちゃん魔獣や子魔獣、そして卵を包み込むように身を挺して守る。
私とぽこちゃんは、大人魔獣たちの遠くでもなく近くでもない位置にいため、すぐに守ってもらえず。私は、急いでぽこちゃんだけでも守ってもらおうと、ぽこちゃんを抱きかかえて、一番近くの大人魔獣の元まで走ろうとした。敵の狙いが、私の可能性が高かったからね。
どうして私を狙っている可能性が高いのか。それは……。私がこの世界へ来た時、神の愛し子とはどんな存在か、ドウェインが教えてくれたでしょう? 私の力を狙う者たちがいるって。
あれね、人とか獣人とかばかりじゃなく、魔獣もだったんだよ。魔獣が私を狙う理由は、主に2つ。
1つは、ドウェインたちみたいに理解力のある魔獣たちが、人や獣人と同じ理由で、私を自分の側に置き、私の力を使わせ、自分の力を強めるため。要するに、その場所で自分が支配者になりたいって考えている魔獣たちかな。
そして2つ目。これがよく分からないんだけど。神の愛し子を食すと、その神の愛し子の力を自分が使えるようになる、って。全てを自分のものにできるって、考えている魔獣がいるらしくて。
ドウェインの知り合いの、300歳越えのエルフでさえ、そんな魔獣、今までに見たことがなく、そんなことあるわけないと言っているくらいなのに、それでもなぜか信じ続いていてね。
この2つの理由で、危険を犯して敵魔獣たちが、ちょこちょこ縄張りに入ってくるんだ。もちろん、私が理由じゃなく、ただ単にここにいる魔獣たちを食糧として見ていて、襲ってくることもあるけれど。6対4くらいで、私を襲ってくる魔獣が多いんだよ。
だから私が理由なら、ぽこちゃんを守らないと思ったの。でも……。
『消えたぞ!! 気をつけろ!!』
その言葉とほとんど同時に、何かが私の体を掴み、私が抱えてしまっていたぽこちゃんごと、一気に木の上まで運び上げられてしまったんだ。
『チッ! 相変わらず面倒なやつめ。だが……すぐに同じ動きはできない!! 今のうちに奴を追え!! リン、ぽこを頼むぞ!! すぐに助ける!!』
「あい!!」
と、返事をしたけれど、数秒のうちに育み場から離れた、私を攫った魔獣。今回はどんな魔獣が襲ってきたのか。
でも後ろを見れば、縄張りにいたであろう魔獣たちが、15以上追いかけてきてくれていたからね。うん、いつも通りすぐに助けてもらえるだろう。
だからといって、ぽこちゃんを少しでも傷つけさせるわけにはいかないからね。私はしっかりとぽこちゃんを抱きしめたよ。
「うごかない。しゅぐみんなくる」
『きりぇいにゃおにぇしゃと、かわいおいぇしゃといたりゃ、だいじょぶだったじょ』
この感じだと、今回の狙いは私だった可能性が高く、確かにぽこちゃんを巻き込む形になってしまった。
だけど、だけどさぁ、怖がるよりもお姉さんかよ。私だってお姉さんですけど? ぽこちゃんはこれから1歳。私は3歳。ぽこちゃんから見たら、私は十分お姉さんでしょう。
「あたちもおねいしゃんよ」
『……じょ』
何だよ、その目は。赤ちゃんのくせにそんな目つきして。言いたいことがあるなら、はっきり言いなさいな。
ぽこちゃんは、何言ってんだこいつって感じで。目はジト目、口を少しだけ開けてへの字にして、私を見てきたんだ。
「あたちはおねえしゃん」
『……じょ』
『追いついたぞ! 俺から攻撃する! 次はお前だ!』
『おう!!』
私がぽこちゃんとお姉さんの話をしているうちに、魔獣たちが追いついてきて。まだどんな魔獣なのかは分からないけれど、私を攫った敵の魔獣を攻撃してくれたよ。
『グギャアァァァッ!!』
バシィィィ!! という大きな音の後に、苦しげな声をあげる敵魔獣。その直後、間髪入れずに、次の攻撃を仕掛ける筋肉グリフォンさん。前からの攻撃だったから、誰が攻撃したのか分かったの。
ニッと、ことらを見て笑ってくる筋肉グリフォンさん。ほら、ぽちゃん。綺麗な、そして可愛いお姉さんも良いけど、カッコいい筋肉グリフォンさんはどう?
もう1度筋肉グリフォンさんが攻撃を仕掛ける。その一撃に、また大きな叫び声をあげる敵魔獣。と、次の瞬間、敵魔獣が私を離したんだ。
ひゅ~と落ち始める私とぽこちゃん。
「お~」
『じょ~』
と、またすぐに、今度はびしゃんっと、私とぽこちゃんは、何かもふもふした物の上に乗っかったよ。
『はぁ、お前たちは何を呑気に話しているかと思ったら、落ちている時まで気の抜けたままとは。緊張感のない』
「だっちぇ、たしゅけてくれるもん」
『わりゅいまじゅを、びちばちで。だかりゃ、だいじょぶだじょ』
ぽこちゃんが言ったことを伝える。今のは、『敵魔獣を大人魔獣たちが、ビシバシやっつけてくれる。だから、大丈夫』って言ったんだ。
そして、私たちがそんな話をしている相手は、数日間出かけていて縄張りを留守にしていたドウェインだった。
どうやら私たちが、『私もお姉さん』と『……じょ』と言い合いをしている頃から見ていたらしい。なら、見れないで早く助けてくれれば良いじゃないのよ。
『大体こんな時に、何を争っていたんだ』
「ぽこちゃんが、みちょめない。あたちはおねえしゃん」
『……じょ。ちがうじょ』
「おねえしゃん!」
『……じょ』
だからその目と表情をやめろい! 何言ってんだこいつって感じのジト目と、口を少しだけ開けてへの字にした顔ね。
そうして再び見合う私とぽこちゃん。数秒後ぽこちゃんの小さなしっぽが少しだけ膨らみ、私を叩こうとしてきて、私はそれに対抗したよ。パシッ!! パシッ!! パシッ!! パシッ!!
『お前たち、やめないか! まだ敵を倒していないのだぞ』
そうドウェインに言われて、2人で私たちを攫った魔獣を見てみたら、みんなから袋叩きにされているところだった。




