16話 とある場所にて(***視点)
「はぁ」
「あなた、何度目の溜め息ですか」
「溜め息も吐きたくなるだろう。最近の魔獣の密猟の多さといったら、この半年でどれだけ被害が出ているか」
「分かっていますとも。でも溜め息を吐いたろころで、解決できるわけじゃないのよ。……ここは彼の方の力を借りるべきではないの? 話しを聞くだけでも、森へ行くべきよ」
「だが、これは私たち人間や、獣人が原因で起きている事なんだぞ。それを彼の方に力になってくれと言うのは……」
「これ以上、魔獣たちが被害にあっても良いとでも?」
「まさか!? そんなこと思うわけないだろう」
「彼の方たちにも十分関係のある話しでしょう。それに密猟だけが問題じゃないのよ。もちろん密猟がなくなれば、こちらの問題もなくなるでしょうけど。限界の場所も出始めるわよ?」
「保護魔獣たちか」
「今回は、この間救出した魔獣たちと、密猟前に助けられた魔獣を合わせて約50。幸い怪我をした子はいなかったけれど、元の棲み処に戻れず、保護されたままの子たちもいるわ。その子たちのことも考えないと」
「それも分かっている。イグナード、新しく建設している彼らの保護施設だが、進捗はどうだ?」
「はい、問題ございません。むしろ予定よりも早く進んでおります」
「そうなのか?」
「私が手伝っているもの、当たり前でしょう? それにレオナードとアルフォードにも、手伝ってもらっているわ。訓練のついでにね」
「訓練のついでにってお前、どんな手伝わせ方をしているんだ?」
「別に大したことはさせていないわよ。あの子たちには、木材や石材の運搬を手伝わせている程度でね。それでもまぁまぁ距離があるから、体力をつけるのにちょうど良いでしょう? ああ、ダリオルにもやらせたわ」
「何だ? あいつは昨日、見回りに行っていたはずだが?」
「ちょうど私が材木を運んでいる時に戻ってきたから、手伝ってもらったのよ。でも、ダリオルったら、ちょっと体力が落ちたのじゃない? 私より量を運んでいないのに、ゼェゼェ、ハァハァ言ってたのよ?」
「いやそれは、この頃いろいろとあったからで……」
「あれくらいで何ですか! 街に何かあれば、そんなこと言っていられないのよ? まったく、あなたのその言い方、ダリオルと同じじゃない。やっぱり私が特別に、あなたと彼の訓練をしてあげたほうが良さそうね」
「いやいや、私にそんな時間は……」
言いかけた時だった、廊下から大きな声が聞こえてきた。
「父さん!!」
「アルフォード、何ですか!! ノックもせずに廊下から大きな声で!!」
「……はぁ、助かったのか? 君との訓練なんてたまったものじゃない。……大きな声でというのなら、君だって」
「あなた、何か言いましたか?」
「い、いや、何も言っていないぞ!」
「あっ、やべ! 母さんだ!」
「だから言ったじゃゃないか。いくら慌ててるからって、ちゃんとノックはしないとダメだって。街に危機が迫っている時は別だけど」
「だってさ、街の危機じゃないけど、これはこれで凄い事だろう? おれ、初めて会ったからさ」
「はぁ……セオドリック、アルフレッド。もうノックはいいから、早く入りなさい。これ以上何かあると、また私に矛先が向いてしまうかもしれないからな」
「は、はい!」
「ほら、早く入ろうぜ」
イグナードがドアを開けると、セオドリック、アルフレッドが、急いで中へ入ってきた。
「それで、ノックもせずにそんな大声を出して、部屋まで来た理由は何だ?」
「父上、グリフォンです!!」
「強者の森のリーダー、ドウェイン様が魔獣舎に来て、父さんと母さんを呼んでるんだよ!」
「何だと!?」
「あなたこれは!?」
「ああ、すぐに彼の所へ!!」
皆で急ぎ魔獣舎へ向かう。すると、セオドリックたちの報告どおり、魔獣舎の前にはドウェイン様が立っていた。
「ドウェイン様!」
駆け寄り、全員で挨拶をする。
『お久しぶりです』
『久しいな、元気にしていたか?』
「おかげさまで、何とか」
『そうか、それは何よりだ』
「ドウェイン様」
『セレフィアも元気そうで良かった。お前たちの子か』
「はい。セオドリック、アルフレッド」
「はじめまして、ドウェイン様。私はセオドリックと申します。今日はこうしてお目にかかれて光栄です。どうぞよろしくお願いいたします」
「ドウェイン様。初めまして、アルフレッドです。よろしくお願いします」
『子が生まれたと知っていたが、祝いにくることができず悪かったな』
「いえ、お気になさらないでください。こうして久しぶりにお会いできただけで嬉しいですわ」
『こうして新たな命に出会えるのは喜ばしいことだ。さて、久しぶりの再会でゆっくり話したいところだが、今日はお前たちに用事があってな』
「用事……ですか」
『少々厄介な問題が起きた。あのバカがやらかしてな』
「……それは彼の方のことでしょうか?」
『何だ、バカだけで分かったか』
「ドウェイン様がそういう言い方をするのは、彼の方だけですもの」
『まぁ、それもそうか』
「それで今度は何をやらかしたのですか? また巣が破壊されそうに?」
『いや、今回巣に被害はない。……実はな、私の所に今、神の愛し子がいる』
「!?」
グリフォン様の言葉に、その場の空気が一瞬張りつめた。




