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私が親友の妹JCと、いつか一緒に住むまでの話  作者: シキ


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28話 高校最後の文化祭_3_sideあゆみ

「東谷香奈ファンクラブ会員No0002として聞きます! 香奈さんは、貴方にとってなんなんですか⁉」


 控室に響き渡る声。美空さんは戻ってくるなり、私に一枚のカードをつきつけた。

 ファンクラブという言葉に、美空さんがなんで私には塩対応だったのかその理由もなんとなく察する。

 きっと美空さんは『香奈過激派』なんだな、と。会社に入ってある程度のサブカルチャーを勉強した私は、推しという概念が理解できるようになっていた。

 まぁ美空さんが過激派なのは別にいいとして……私はその問いになんて返せばいいんだろう。最初から疑いの目を向けている美空さんに対して、普通に友達って答えても納得してくれない気がする。……友達以上恋人未満ですとはもちろん言えないし。


「えっと……ん?」


 なんて答えればいいか悩んでいるところに、気になったのは美空さんが突き付けているプラスチック製のカードだった。


「……なんか見覚えが……あっ!」


 私はバッグの中から財布を出し、その中から一枚のカードを探した。それはいつか香奈からもらったまま、財布に入れっぱなしだったカードだ。そのカードは半分押し付けられたような形でもらったものでそれから特に気にもしてなかったけど、サイフの中身をあまり整理しないものだからずっとそこにあった。


「私も同じの持ってるよ、ほら」


 そして美空さんと同じように差し出す。それはさながら名刺交換のようだったけど、美空さんはそのカードを一目見て、手からカードを取り落とす。


「う、うそ……会員No0001⁉ それはファンクラブ創始者しか持っていない、幻の番号のはず……」


 ガクリと膝をつく美空さん。なんかよくわかんないけど、カードバトルに勝ったらしい。


「認めるわ、貴方のこと。そこまで香奈に本気だったってことね」

「そ、そうだよ。わかってくれた?」


 このカードの凄さは全然わからなかったけど、なんか上手くやり過ごせそうな空気だったからわかっている風に話す。実際先ほどまでの美空さんの厳しい目はなくなっていた。


「あゆみさん、失礼しました。今日はよろしくお願いします」


 さっきまでの態度とは打って変わって、しっかりと腰を90°にまげて挨拶をしてから、美空さんは教室を出ていった。

 そういえばこれもらった時、香奈はいつか役に立つときがくるって言ってた気がしたけど……本当にそうなる日が来るとは思ってもみなかった。

 それにしても創始者しか持っていないファンクラブカードを、なんで香奈が持っていたんだろう?


「おはよー、あゆみさーん。今日はよろしくねー」


 そのカードをまじまじと見ているうちに、今度は茉莉さんが教室に入ってきた。




 茉莉さんと今回のファッションショーの順番をチェックしていく。

 体育館に作られた簡易的なランウェイを歩くことになっていて、私の出番は最後から2番目。今知ったけど最後は香奈が歩くらしい、香奈そんなこと一言も教えてくれなかったのに……どんな服を着るの? と聞いても内緒☆ と教えてくれなかった。


「そういえば、茉莉さんはこのカード知ってる?」


 ふと気になって、茉莉さんにさっきのファンクラブカードを見せてみる。


「知ってるよー。私も持ってるし、えっとねぇ……」


 手作り感ある小さなカード入れから出てきたのは同じカードだった、Noは0217。


「なんか面白そうだったから作ってもらった」

「ファンクラブってどんな活動してるの?」

「あたし特に活動してないからわかんないなー。メールアドレス登録したら、たまにメルマガが送られてくるって聞いたことあるけど。私メルマガ嫌いだから登録してないんだよねー」


 茉莉さんは香奈過激派じゃないようで、私のカードを見ても特に反応はなかった。きっとこれが普通の反応だと思うけど。


『ただいまより、第87回、誠英祭を開始いたします』


 そんなことを話しているうちに、いつの間にか学園祭開始の時間になった。ここは学校の中でも端の教室のせいか、賑わいはここまで届いていなくて実感がない。


「あ、始まった。それじゃ私は先にステージの方にいくねー」

「ゴメン、茉莉さん。もう少し待っててくれる? わたしの友達が来るから紹介したいの」

「えー紹介してくれるんだー。なになにー、モデルの人とか?」


 モデルの人じゃないからハードルをあんまり上げてたら申し訳ないなと思いながらも、私はスマートフォンで自分の居場所を連絡する。少し待つとドアがノックされた。


「入っていいよー」

「お、お邪魔します」


 ドアを控えめに開けた先から、かさねがのぞき込んでいた。

 もともと私がゲストで出ると聞いて、かさねも学園祭には来る予定だった。けど茉莉さんはかさねを神的存在だと言っていたから、サプライズで会わせてあげようと計画していたのだ。


「……茉莉さん、どうしたの?」


 茉莉さんはなぜか土下座ポーズをしていた。


「あ、あのあのあの、神の威光に耐えられなくて……」


 ちなみにかさねはまだ教室に入ってもいない。茉莉さんの奇行に警戒しているみたいだったけど、その声になにか気づいたみたいだった。


「も、もしかしてミコシガタリさん?」

「ミコシ?」

「神から認知されてる。し、心臓がヤバイ……。アッ、ここでは茉莉と呼んでください!」

「せ、先輩。私1回教室出る」

「え? お話してかないの?」

「こういう時は、ちょっと時間空いた方がいい。ミコ……じゃなくて、茉莉さん、あとでまた来る」

「ひゃい!」


 すたすたと教室を出て行ったかさねの背中を追うと、教室の横でかさねは待ってくれていた。


「あ、あれは推しに会った時の一般オタクムーブだから時間を置いたほうがいい。わ、私がその扱いになると思わなかったけど」

「かさねって実は結構凄い人だった?」

「そ、そんなことない、私なんか全然……先輩の方がずっと凄い。でも今日はますます楽しみになった、茉莉さんが作る服、私も好き」

「そっか、じゃあ期待しててよ。写真もお願いできる? 香奈も歩くみたいだったから、写真撮りたいんだけど順番的にきっと無理だから」

「も、もちろん。まかせて」

「あゆみさん、そろそろ移動の時間……招待客の方?」


 そこへ美空さんが呼びに来る。かさねを見て、もちろん茉莉さんみたいな過剰な反応はない。


「私の友達だよ。じゃあかさね、後でね」

「う、うん。また後で」

「茉莉さんはまだ中にいますか? 服飾部の方が探していましたけど」

「いるよ。えーっと、ちょっと待ってね」


 扉の隙間から様子を窺うと、流石に土下座ポーズではなかったけど、なぜか椅子の上で丸くなってぶつぶつ言っていた。


「時間もないので早くいきましょう」


 美空さんはスパーンと扉を開け、丸くなっている茉莉さんを無理やり立たせて教室から連れ出す。頼りになるなぁ。

 かさねとは一度別れて、外を通って体育館横の準備室へ向かう。遠目に何人かの生徒がいたけど、気づかれてはなさそうだった。

 準備室には今日の服が何着かあって、すでにモデル役の生徒も集まっていた。そこまできてようやく茉莉さんも復活したみたいで、ちゃきちゃきと準備を始める。


「かさね様が私のステージを……」


 と呟いていて若干怖かったけど。

 モデル役の生徒さんには私を知っている人もいて、きゃーきゃー言われながら握手を求められた。

 今回の衣装はタキシード風の衣装だ。もちろん普通のタキシードではなく、所々ラメや飾りが入っていてゴテゴテしい。最初の見た時の印象は怪盗モチーフって感じで、茉莉さんに聞くとこのデザインに近いキャラクターがいるようだ。私が着ると背格好も結構近いみたいで、準備室内で他の生徒さん達にも写真を求められた。

 その後軽く化粧を直してもらっている最中に、ステージからは大きな音楽が響き始める。


「始まりましたね」

「準備はいい?」

「キンチョーしますー」


 ざわざわとした緊張感が準備室内に広がる。私はもちろんそこまで緊張はしないけど、いつも通り心の中のソウエイを意識して集中する。私のコスプレのきっかけであるソウエイ、それは今でも私の心の中にいる。

 初めに歩く女の子がステージ袖に移動していく……そこで香奈が見当たらないことに気づく。香奈も私の後に歩くはずだけど。


「茉莉さん、香奈がいないけど」

「かいちょーは反対の準備室にいるよ。もう準備入ってるって」

「反対にもあったんだ」

「かいちょーのは私の渾身の出来だから、期待しててね」


 やっぱり私はすれ違う時に見るくらいしかできないかな、かさねに写真お願いしておいてよかった。

 服飾部のファッションショーは特に問題なく進んでいた。隙間から体育館の方を覗くと、まぁまぁの人入りのようだ。なんか生徒の方がやけに多いような気がするけど、それもきっと香奈効果だろう。そういえば香奈が一年生の時もこんな感じだったっけ。あれから二年経っていることになんだかしみじみとしてしまう。


「出番でーす」


 その言葉に、私はスイッチを切り替える。


「よろしく」

「は、はい、こちらです」


 案内役の生徒に笑顔を振りまいて、私はステージ袖へと向かった。




『さぁ、そしてここでスペシャルゲストの登場です! 雑誌『メルキューレ』の公式モデルで、今話題沸騰Ayumiさんが来てくれました! それではどうぞ!』


 スポットライトの眩しさに目を細めないように、まっすぐ前を見て歩き出す。

 その一歩目で、歓声が聞こえた。メルキューレは結構ニッチな雑誌だから、私の事を知っている人はそんなにいないかと思っていた。けれど所々で飛び跳ねてる生徒を見るとやっぱり嬉しくなる。

 一歩ずつゆっくりと足を出し、ランウェイを歩く。ゲストということもあって、時間をかけてゆっくり歩いてとのご注文だ。とはいえ、ファッションショーの主役は私ではなくあくまで服だから、茉莉さんの作った服が最大限の魅力を引き出すことができるよう意識して進む。この服に似合うよう、余裕たっぷりに、一歩一歩。

 体育館に作られた簡易的なランウェイはそこまで長くない。中央までたどり着くときっちりポージングをする。たくさんのスマートフォンがこちらに向けられていたから、なるべく多くのレンズに視線を向けた。

 ……このくらいでいいかと、振り向いた時、ちょうど次のモデル……香奈がステージ袖から出てきた。そしてその服に、私以上の歓声が体育館を埋め尽くす。私も、次に踏み出す一歩がいつの間にか止まっていた。

 茉莉さんが渾身の出来だと言っていた香奈の衣装……それは疑いようもなく純白のウェディングドレスだった。



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