表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私が親友の妹JCと、いつか一緒に住むまでの話  作者: シキ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/38

10話 クリスマスプレゼント_1

 十二月、すっかり寒くなりコートが欠かせなくなった季節。

 大学内でもクリスマスが近づくにつれ、どこか浮ついた空気が流れはじめる。学内のベンチではところかまわずくっついている男女が見られるし、友達と話せばあの二人が付き合ったとか、もう別れたとか、自然と恋愛話が多くなる。

 そんな浮いた話を外側から聞いていた私は、今年のクリスマスはどうしようかなぁと考えていた。去年までは恵奈という同じ立場の人がいたから、クリスマス当日は愚痴を言い合いながら酒で流して過ごすことができた。それはそれで楽しいクリスマスではあったけど、今年は恵奈の結婚が決まって、その状況も変わってしまった。

 

「プレゼントどーしよー!」

 

 その問はここ数日でもう十回くらい聞いた話で、私はちょっとうんざりしていた。

 

「本人に聞けばいーじゃんそんなの」

「聞けるわけないでしょー。婚約後初めてのクリスマス、気合入れないと」

 

 講義が一コマ分空いたから、私は恵奈と近くのカフェへ来ていた。

 最近の私は香奈が口うるさく言ってくれる影響もあってか、授業にちゃんと出るようになっていて、単位取得も前より難しくなくなっていた。対して恵奈は、お嫁さんという就職先があるせいか講義もサボりがちで、こうして二人で話すのは実は久しぶりだったりする。

 

「プレゼントねぇ……先生だったらなんか仕事に使うものがいいんじゃない? ネクタイとか」

「なんか父の日って感じじゃない? それ」

「それはそうだけど……じゃあお財布とか?」

 

 とはいえ恵奈は大切な友人で間違いないから、あれはこれはと意見を出す。

 実際こういう時って送るものには大体目星はついていて、どれがいいかなーって話したいだけだったりもするから、そんなに真面目に考えなくてもよかったりもする。


「クリスマスはその人と過ごすんだよね」

「そうだよ。イブは家族で過ごして、クリスマスは各々別行動だね。クリスマスは月曜日だからうちの母親は仕事だし」

「クリスマスに出かけたら香奈にバレたりしないの?」

「彼氏が出来たことくらいはもう察してるんじゃないかな。結婚することまでは考えてないと思うけど」

「さすがに結婚まで予想つかないよ」

 

 昨日の夜、香奈からきたメッセージはクリスマスの予定についてだった。今のところ香奈もクリスマス当日はフリーらしい。空いてるよとすぐ返信しようとしたけど、クリスマスなのに相手もいないと思われてしまうという小さな意地から、そのメッセージにはまだ返信していない。


「去年は二人でスイーツビュッフェに行ったよね」

「あー、ホテルのね。あそこ結構よかったよね。あゆみが全制覇しようとしたんだっけ」

「ビュッフェは元取らないといけないからね。本当は今年もそんな感じで過ごすのかなって想像してたけど、恵奈が先に抜けるとは思わなかったなぁ」

「私も、一年前の私に婚約してるよって教えてあげたら笑い飛ばしちゃう気がするわ」


 去年のことを思い出しながら、笑って話してくれる恵奈。結婚したらこういう時間はきっととりにくくなるだろうけど、時々こうしてお茶できる関係を続けていければいいなと私は密かに思った。



 

 夜、パソコンで履歴書を一通書き終えた私は、大きく伸びをする。

 年末に向けて就職活動も本格化してきて、その波に飲まれるように私もめぼしい企業に何社か応募していた。

 まだ内定はないけど、コスプレを経験してから自分に少し自信がついた気がして、就活も上手くいき始めていた。今考えてみるとやっぱり姿勢が大事みたいで、背筋を伸ばすように意識するだけで鏡の前の私はだいぶ印象が良く見える。

 昨今は求職者有利の傾向もあって、香奈に心配されていたフリーターにはならなそうな予感がしている。就活もいずれ働くのも、直視したくない現実だけど、香奈の眼が厳しいからとりあえずどこかには就職しておかないと。

 もう一度履歴書を見直して誤字がないことを確認してから、その日の内にメールで送信した。こういうのは勢いが大事で、見れば見るほど書き直したくなってきりがないから、さっさと送ってしまって後は忘れるくらいがちょうどいい。

 一仕事終えた私は、香奈へメッセージを送る。

 

『クリスマスだけど、一緒にスイーツビュッフェ行かない?』


 私が保留にしていたクリスマスの予定を送ると、一分もしないうちにメッセージが返ってくる。


『追い込みの合間としてはちょうどいいですね』 

『じゃあ目を付けてたところあるから、二人分予約しておくね』

『その後は、あゆみさんの家に行ってもいいですか?』

 

 香奈と会うときはあんまり遅くならないようにいつも昼からにしている。ランチビュッフェ後でも14時とかだし、問題ないかな。

 

『いいよー』

『ありがとうございます。あとせっかくのクリスマスですし、プレゼント交換とかどうでしょう?』

『クリスマスっぽいじゃん。予算は三千円くらい?』

 

 大学生にしては低い予算だけど、相手は中学生だ。予算はこれでも高いか? と送ってから悩んだ。

 

『大丈夫です、楽しみにしていますね。では引き続き就職活動頑張ってください』

『香奈も勉強頑張って』


「さて」


 さっきまで堅苦しい文章を書いていて、ごちゃごちゃしている頭を切り替えるためにベッドへ倒れこむ。今日は寝るだけ……それだけなんだけど。

 

「よく考えたら中学生へのプレゼントって何を買えばいいんだ?」


 プレゼントの下調べをしているうちに、結局夜更かしになってしまった。




「こ、これ、完成品」

「ありがとう」

 

 大学内、テーブルとイスがいくつか並ぶ通称テラスと呼ばれているスペースで、かさねから一枚のCDを手渡された。

 

「いい出来。本当に、年末は一緒に行かないの?」

「あー、人凄いんでしょ? ならいいや」

 

 それは毎年年末にやっているお祭りへの誘いだった。かさねは他の友人とサークル? 参加をしているみたいで、そこで今回撮影したROMを売り出すらしい。

 このROMを作るために撮影したのはついこの間、私にとっては二回目の撮影で、それもまた新鮮な体験だった。一緒にコスプレを合わせたかさねもまったくの別人で、いつものおどおどとした態度は全くなくポージングをしていたから、コスプレというものはやっぱり別人になれるんだと思う。

 

「う、売れたらまたお金渡す」

「別にお金目当てでやったわけじゃないんだけどね」

「ダ、ダメ、こういうのはしっかりしないと、いけない」

 

 私としてはコスプレという文化に触れられただけで、十分なリターンがあったけどと思いながら、年末のお祭りが終わった後に、またかさねと会うことを約束した。

 その後、だらだらと雑談をしている合間に、テーブルの上にあったかさねのスマートフォンが震える。画面を見たかさねは、わかりやすくため息をついた。

 

「どうしたの?」

 

 何も言わず見せてくれた画面には、ずいぶんと距離の近い女の子が二人いた。

 

「こ、この右の……鈴葉が、本来ソウエイ役だった子」

「あー突然キャンセルしちゃった人か……確かにソウエイ役似合いそう」

 

 その写真の中にはショートカットで中世的な子が笑っていた。髪は染めているのか青くて、耳にいくつかのピアスをあけている。その隣に写るのは、こっちも髪を派手に染めている、和装のような服装をした女の子だった。

 

「そういえばどうしてその子……鈴葉さん? はソウエイ役降りたの?」

「か、彼女が出来て、束縛が強めだから他の女と撮影させてくれないんだって。この隣のコが彼女」

「彼女?」

「鈴葉もそのコも、もともとコスプレイヤーしてて、私が二人を引き合わせたから……たまにこうやって仲良くしてるところを報告してくれる。……正直迷惑」

「えっと、鈴葉さんは女の子……だよね?」

「そ、そう」

「こういう業界ならよくあるの?」

「コスプレイヤー同士で意気投合して、そのまま付き合うことはたまにある。長く続くことは少ないけど」

「はぁ」

 

 コスプレイヤーというか、私は女性同士なことを聞きたかったんだけど。まぁ、私の知らない世界がきっとそこにはあるんだろう。

 

「そういえばさ、香奈とプレゼント交換することになったんだけど。何をあげればいいと思う? 相手中学生だからさ、あんまりわかんなくて」

 

 話を変えるために私がプレゼントのことを相談したら、かさねは先ほどと同じようにため息をついた。

 

「ここにも仲良し自慢をしてくる人がいた……」

「いや、私と香奈はそういう関係じゃないからね? 相手中学生だから」

 

 なぜかいじけ始めたかさねを宥める。かさねもスイーツビュッフェに誘ってみたけど、馬に蹴られたくないと断られてしまった。



 

 授業が終わり、プレゼントを探しに繁華街へ向かう。

 街はクリスマス一色で、どこへ行ってもクリスマスソングが流れている。ショーウィンドウに並ぶコートも、クリスマスを見越してか赤や緑などの華やかなものが多い。クリスマスにいい思い出はないけれど、街が華やいだ雰囲気は好きだった。

 ふらふらと、足の向くままお店を覗いていく。自分で三千円とはいったけど、その値段で用意しようとすると服も買えない。せいぜいマフラーとか手袋とかで、それでも香奈は喜んでくれるだろうけど、せっかくの受験前だから、もっと力になるものを贈りたい。

 そう考えながらお店を回るけど、なかなかピンとくるものは見つけられなかった。

 ちょっと探しつかれて、どっかで休もうかなぁと思った時に、にスマートフォンが震える。その画面上の名前を見て私は一瞬出るか迷ったけど、どうせ何回もかかってくるからと思い直して通話を繋ぐ。

 

「なにー、お母さん」

『あんた年末帰ってくるんでしょうね』

 

 開口一言目、お母さんの言葉は予想通りのものだった。

 

「帰るよ、そのうちね」

『うちの状況分かってるんでしょ。早めに帰ってきなさいよ』

「わかってるって、じゃ忙しいからまたね」

 

 まだ何か言おうとしていたけど、すぐに電話を切るってしまう。話したって特に実のある話もないから、要件だけ分かれば十分だ。

 ……せっかくいろいろ見てたのに、さっきの電話でなんだか気分が萎えてしまった。今日は帰って酒でも飲むかなぁ。

 進行方向を変えようとした時、さっきのお母さんの声がきっかけになったのか、昔の記憶が蘇る。それは私が香奈と同じように高校受験の前、お母さんがクリスマスにあるものをプレゼントしてくれた記憶だった。

 

「そっか、そういうのもあるな。というか受験前ならそれが普通か」

 

 思い出すきっかけがお母さんからの電話だったのは少し癪だけど、私はスマートフォンで地図を呼び出す。少し遠いけどいけない距離でもない。

 思い立ったら今日行ってしまおうと、私はバス停へ足を向ける。

 さっきの電話がなきゃ思いつかなかった気もするし、お母さんのいう通り、今年は少し早めに帰ってやってもいいかな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ