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7.疎遠

「………うっ…………」


目が覚めた。

昨日は疲れたからか、よく眠れた気がする。

そして、あのお兄さんたちに優しくしてもらったから、何だか今はほっこりとした気持ちだ。


……………今日はおにぃちゃんが帰ってくる日。

帰ってきたら、いっぱい甘えたい。

おにぃちゃんに抱きついて寝たい。

ずっとこの部屋にいたい。


でも………………。


「おねぇちゃん、悪い人なんでしょ……」


おねぇちゃんがいると、何か悪いことが起こるらしい。

確か…………火事になったり、殺されちゃったりするんだっけ?

怖いな………。


「………ポラリス君、おはようございます…………」

「…うっ……」


言ったそばから、おねぇちゃんは僕の部屋に入ってきた。


………………何か、おねぇちゃんから優しさは感じられない。

昨日、優しかったのは嘘なのかな………………………。


「……………どうしたんです、ポラリス君?」

「……………なんにも………ない…」

「そうですか……」


気まずい。

怖い。

でもおねぇちゃんは悪い人なんだもんね?

撃退しても良いんだよね?

でも、殺されちゃうかも……。


おねぇちゃんは部屋から出ていった。


その、すぐ後。


「………なぁポラリス、あいつが魔女か?

髪は紫だったし…………」

「……うん、そうだよ…」


おねぇちゃんは魔女で悪い人………おねぇちゃんは魔女で悪い人………………。


「……で、どうしましょうか…」

「………………俺にいい考えがある」


魔女を撃退する、このお話かな。


「…………ポラリス、お前にも協力してほしい」

「うん、分かった!!」


悪い魔女を、早くこの寮から追い出さないとね。

お兄さんたちにいい考えがあるみたいだから、それに従おう。


「ポラリス、今から言う作戦をよく聞いておけ

まずは………………………………………………………………」









――――――


「………ポラリス君、ランス君から部屋から出るなって言われてるんだけど……」

「だ、大丈夫だよ!

それに、おにぃちゃんがこの部屋に来てくれって言ったんだし」

「……そ……そうだよね……」


お兄さんたちから、この部屋に魔女を連れてきて、と言われた。

この部屋というのは、今目の前にある部屋だ。


「おねぇちゃん、入って」


僕はドアノブを握り、部屋を開ける。


「う、うん……」


おねぇちゃんが部屋に入ると、僕も入り、ドアノブを握って部屋を閉める。


「………ポラリス君、ここで何を……………………うっ……」


おねぇちゃんが倒された。

でも、これで良いんだ。

だって、


「捕まえたぞ魔女め、俺の村を荒らしたのもお前か?

覚悟しておけ!」


これがお兄さんたちの作戦だもん。


「……ポラリス君…………これ……………どういうこと………」

「おねぇちゃん、悪い人でしょ?

だから悪いことしてるんでしょ?

火事を起こしたり、人を殺したり

そんな悪者だと思わなかったよ…………」

「………ちょ……………ポラリス君…………それは…………誤解だって………」


逃げ出しそうなおねぇちゃんをお兄さんたちは押し倒し、上に乗っかり、それぞれ蹴りを入れている。


「………おい………魔女め………よくも…………俺の村を………………やりやがったな………」

「…………痛い…………………………痛い………………………………やめて………」


おねぇちゃん、泣いちゃった。

でも良いでしょ。

悪いことしたのはおねぇちゃんの方だからね。


「………おい、魔女よ………………これまでの仕返しだ…………」

「………うっ……………熱い……………熱い…………………くっ………………………熱い…………………………やめ……て……………」


今度は火魔法を使っておねぇちゃんの首元を焼いている。

熱そうだな……………。

悪いことしなかったらこんなことならなかったのにね……………。


「…………なぁ、お前ら、この憎たらしい魔女を性奴隷にでもするか?」

「…………………やめ……………やめて……………」


せい、どれい?

何か分からないけど、きっとすごい罰なんだろう。


って、思ってたら、


「……………うっ…………うっ………ん………………ん……」


見ちゃいけないやつだぁ…………………。


「げ、こいつノーパンとか……………魔女はダサいんだなぁ……………」


僕は見てないからね?

見ちゃいけないと思うから。


「こらっ、ポラリスもいるんだからこれくらいに………」

「おっとすまない…………幼いガキに見せるものじゃねぇしな…………」


お兄さんたちも変態なんだ………。


「…………よし、気が済んだろう?

だったら各自帰るぞ

この女はここに監禁しておくから、ストレス発散がてらにでも来てみろ

こいつはもう動けねぇから、縛らずに置いておくぞ?」


作戦っていうのは終わったらしい。

お兄さんたちも帰るらしいから、僕も部屋に戻ろう………。


「…………って…………待って…………………置いていかないで…………………ポラリス君………………ねぇ…………」


おねぇちゃんの声が聞こえる。

でも、助ける必要ないよね?


「帰るぞ、ポラリス」


ほら、お兄さんたちもこう言ってるしね。

帰ろう帰ろう………。








――――――


「よっしゃあ、打ち上げだぞ!!!!!」

「お、いいすね」

「これもポラリスのおかけだぜ」

「うん、ありがとう……」


今はお兄さんたちと食堂にいる。

うち、あげ?というのをやってるみたい。


「いやぁーーー……………でもよ、ランスの奴が帰ってきたらどうする?

確か、あいつは今日帰ってくるんじゃ……」

「そんなの、なってからでいいだろ

帰ってきても、ポラリスがなんとか言ってくれるさ

…………なぁポラリス」

「……え、うん……………なんて言えばいいの?」


おにぃちゃんにこのことを説明しないといけないのかな…………………。

だとしたら、どう言えばいいんだろう。


「んー、

「魔女が自分から寮を抜けた」

とかか?

別に、あの部屋に監禁したままならバレないだろうし、嘘だとも気づかれないんじゃないか?」

「お、名案だな

ポラリス、それで良いか?」

「う…………ん…………………」


じゃあ僕は、おにぃちゃんに嘘をつくことになるの?

本当のこと言っちゃダメなのかな?

……でも、おにぃちゃんはおねぇちゃんを可愛がってたから…………………言わないほうが良いのかな…………。


「…………あの、おにぃちゃんに、本当のこと言わない?」

「…………ダメだ」

「どうして?」


…………おにぃちゃんには嘘をつきたくないな……。


「ランスの野郎にバレれば、きっとお前を見放す

ポラリス、お前、ランスのことは好きだろう?

言ってしまえば、お前はランスに嫌われるかもしれないぞ?」


…………おにぃちゃんに、嫌われるかもしれないの?

…………嘘をついたら僕が嫌だし、本当のことを言ったらおにぃちゃんに嫌われちゃうの?

じゃあどうすれば良いのかな……………。


「………僕、部屋に戻るね…」

「おう、さっきはありがとな

お前はやっぱり最高だぜ」


…………おにぃちゃん、どうすれば良い?

悪い魔女を倒したのに、おにぃちゃんは怒るのかな…………。


僕は部屋に戻るまで、ずっとそんなことを考えていた。

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