1.守護団の役割
本編、第一話です。
今回は2030文字くらいですので、読みやすいと思います。
いつも通り、変わり果てのない街並みは、一見平和そうに見えても、小さな問題がちらついている。
それを見逃すことがないようにと、俺の所属する守護団は日課としてパトロールを行っている。
パトロールと一言で表しても、そんなに重苦しいものではない。
街に住む人たちとの交流や、孤児の保護施設への食料配給など、重犯罪を見つけるための活動ではなく、あくまでも街との繋がりを意識した活動である。
この街は治安が良い。
なので旅人も現れる。
しかしながら、そこで小さな問題が生まれる。
それは、「お金のない旅人」の問題だ。
ここに来る旅人の目的は、輸出と輸入や商売など様々だが、さんざん歩き回った挙げ句、この街にたどり着くというケースもある。
俺が見てきた中では、子を連れ、ガリガリにやせ細りながらも、なんとか街に来た者などがいた。
他にも、服がボロボロになりながらも、難を逃れできたであろう者もいた。
おそらく、モンスターに攻撃され、手当もできないまま、流れてたどり着いたのだろうが。
まさに、あんな女みたいに…………。
…………あんな女?
…………いや、なぜあんなところに女が?
俺が言っていた、「服がボロボロになりながらも、難を逃れできたであろう者」が、街と街との境目となっている草原を歩いている。
目視で見る限り、さっきも言ったが、その者は女だ。
別に女が歩いていることは珍しくはないが、驚くのはその人数だ。
そう、女一人が、ボロボロの服を着て歩いている。
これが珍しいのだ。
「……………」
俺は無言で、その女めがけて走り出す。
………確かに、女の身分や地位というのは、男に比べると劣る。
………しかし、だからといって、軽視したり無視したりなどをしていい理由にはならない。
助ける価値があるのだ。
――だんだんと、女の様子が見えてきた――
髪は紫色でロリータ体型、さほど大きくはない。
あとは杖を持っており、それに重心をおいて歩いているか。
俺はその子に近づいた。
「どうしたんだ?」
「……………いえ、心配していただかなくても……
……特になにもないですから…」
なにもないわけが無いだろうに。
服はボロボロで歩くのが辛そうな彼女が今欲しいのは救いの手だろう?
それを差し伸べているのに、「助けてください」の一言もないのは、遠慮や気遣いに他ならない。
今、この場に必要なのは正直さだ。
………まぁ第一、こんなこと言われて無視するようじゃ、守護団員として務まらないしな。
「服、ボロボロだし、なんだか辛そうじゃん
すぐに手当てとかしてやるから、俺について来い」
「………いいえ、結構なので…」
………なぜだ。
これはナンパではないのだ。
軽いノリで女にまとわりつく愚かな行為とは違うのだ。
彼女は人間不信なのか?
「どうして、そんなに断るんだ?」
「……え、いや………私がいたら迷惑でしょう?」
「……ん?
何が言いたい?
逆に、この街にお前みたいなか弱い奴がこんな姿で出歩いてもらうほうが、守護団員の俺としては迷惑だ」
「…………………」
彼女は長い沈黙を終えて、
「………迷惑、ですよね…………分かりました…………
………………この街から出ますね………」
この言葉を発した。
「…………わりぃわりぃ
俺の言い方が悪かったな……
俺が言いたいのは、ろくに街を歩けないような状態で、しかもそんな姿で、ここを歩き回るのは不本意だということだ
勘違いさせて悪かったな」
確かに、俺の言い方は悪かった。
勘違いしても無理はない。
逆に不安にさせてしまったと考えると少し辛いが、謝ったし軽減はされてるだろう。
「……親切にしていただきありがとうございます…」
「…親切にする以前に、俺はこの街の守護団員だからな
困っている人を見つけては救いの手を差し伸べてるつもりだ
それが仕事でもあるしな」
あくまでも仕事。
そう言うが、善意で仕事以外の時に助ける団員もいる。
パトロールは常に行われているわけではないからな。
「…………はぁ…
で、俺はお前を助けたいと」
「いいえ、結構です
今日はなんとか持ちこたえますから……」
おい。
「持ちこたえる」とは何だ。
それじゃ苦しくても耐えてるってことじゃねぇか。
「ダメだ、無理矢理でも助けてやる
…………俺の寮に空き部屋があるから、そこに行くか
そこなら一人でノビノビできるだろう」
「………では、お言葉に甘えて……………」
やっと素直になった。
それで良いんだよ。
今は意地とか見せてる場合じゃないし、見せる場面でもない。
むしろ、甘えてくれた方が助かる。
このまま見逃せばクズだし、というのもあるが……。
「ったく………
よし、いいか?
俺について来い
寮に着いたらそのまま何でも与えるから、それまで我慢してくれ」
「わ、分かりました……」
俺はこのロリっ子を連れて、寮まで帰ることにした。
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