10.キス魔
「ランス君、会いたかったです!」
その言葉とともに、ミリスは俺に抱きつく力を強める。
彼女も、不安だったのだろう。
ポラリスも敵になり、信じていい者、頼れる者がいなくなったからか。
今は、俺に頼っているのか甘えているのか分からないが、ひとまず、泣き止むまで待とう。
「……………ランス………君…………………私……どうなるかと…
………………ずっと……………不安で……
………だから……………会いたかった……」
「……そっか…」
こういう時はどうすれば良い。
ただ泣き止むまで待つだけで良いのか?
ひとまず、
「……我慢、しなくて良いからな?」
彼女を抱きつき返した。
すると、ミリスはみるみると涙を増す。
こんなにも効果が大きいものなのか……。
「ランス、君……………」
「うわっ…」
…………急になんだ。
なぜ俺はミリスに押し倒されている。
これじゃまるで、行為前の男女みたいではないか。
俺たちってそんな関係じゃないよな?
というか、愛人でもないわけだし。
理想というか、妄想というか、そういう大きな期待感を持ち過ぎだよな、俺。
「………ランス君、さっき、
『我慢しなくて良い』
と言いましたよね?」
「お、おう……」
まさか、な。
「じゃあ、遠慮なく……」
その、まさかだ。
ミリスは、俺に口づけをした。
「…………ランス君、大好きだよ…」
…………俺の……………俺の………俺の………………人生、初キッス?
マジかよ。
嬉しいんだけどよ………。
普通、この場面でするか?
朝の路地だぞ、ここ。
ていうか、ミリスはどうしてそんな笑顔なんだ。
そしてどれだけ照れてるんだ。
こんなにも顔を赤くして…………………………可愛いな……。
「………まだ、足りませんか?」
足りる?
何がだ?
別に俺が今現在で不足しているものなんてなにもないが………。
「……………答えないなら、またしちゃいますよ?」
………ミリスさん、当たってますよ。
お互いの大事なところが、布を被りながらも当たってますよ。
そして俺は大きくなってきましたよ。
「………んっ……………」
なに感じちゃってるのか…………。
「………ランス君……………体は正直なんですね…」
全員そうだろ。
このシチュエーションで正直にならない男児はいないだろ。
「…………まぁとにかく…………その………………
……………もう一度、しても良いですか?」
どうぞ、お好きに。
「……お前の好きにしろ」
「なら………」
ミリスは、俺の後頭部を持ち、少し馬乗りになって顔に近づいてき、
「………ランス君、離しませんよ?」
そっと唇を交わした。
…………………………長い。
これがディープキスというやつか。
案外良いもんだな…………………。
と、思っていると、彼女はキスをやめた。
「…………はぁ………はぁ…………ランス、君…………
…………好き……だよ?
……………だから……」
ミリスって、こういう性癖なんだな。
キス魔とは…………………また別か。
「……………だから、なんだ?」
ミリスは照れている。
顔をずっと赤くして、何かを言いたそうにしている。
「…………さっき、言ったろ?
我慢しなくて良いんだ
今はお前に身を任せる」
……そうだ、俺に遠慮なんてしないでほしい。
頼るなり、甘えるなり、何でもしてくれて構わない。
ただ、外で行為するのは…………………………やめてほしいな。
「……………ありがとう、ございます……
…………じゃあ、ランス君……いきますね…」
今度は意図的に俺の股間と接触させに来てるな。
そして当然、大きくなると。
「……………はぁ…………はぁ………ランス君………
………はぁ……はぁ……………はぁ…………大好き……」
キスをやめれば何か一言を言ってくる。
これが男を魅了するテクニックとでもいうのか。
ただ、実際のところはとても興奮している。
こうやって、魔女は生き残ってきたのか…………。
しかし、ミリスは口づけをやめた。
「……………流石に、やり過ぎしたかね…」
いいえ、そんなことはありませんよ。
もっとやってくださ…………………………いや、やめておこう。
ミリスは立ち上がり、俺に馬乗りになるのをやめた。
「……………なぁミリス、なんかこの付近、人通りが少ないようだけどさ………………
……………通行人にでも見られてたらどうする?」
………だとしたら、恥ずかしい。
ただ、それはミリスも同じ思いのはずだ。
「……………別に、見られたところでなんですか………
恥ずかしいのかもしれないですが、それはそれで良いじゃないですか…」
ミリスの、新たなる性癖が分かった。
『恥ずかしいのかもしれないが、それはそれで良い』
俺には分からない世界だ………。
ある意味、尊敬するよ。
「…………ふぅ………………………で、この後どうします?」
この後どうしますと聞かれても。
寮に戻る、これ以外考えていないが。
「……ここから寮に帰って、ポラリスたちと話し合って、これからについて話し合うつもりだ…
嫌か?」
嫌ならば、ミリスを宿に泊めるとかはできるが……。
どう言うのだろう。
「……………………寮に戻るのは良いですけど………
…………………ランス君以外を私の目に入れたくないです…」
………それはどういう意味だ。
寮に戻るのは良いが、俺以外を目に入れたくない?
難しいというか、意味が分からない。
何が言いたいんだろうか………。
「…………………………分かりません、か?」
「あぁ…」
分かるわけないだろう。
それとも、俺が鈍感なだけか?
「……………ですから……………その………ランス君の部屋で……
………………ランス君と私が……………その…………………
………………2人きりになれたらなっていう………」
ミリスは、照れながらこう言ってくる。
俺と2人きり、か。
1人じゃ不安だし、俺が居たほうが良い、みたいな感じか。
まだ不安だろうし、別に構わないが。
「………そんなことなら………別に良いぜ…
お前も思うことがあるだろう?
何でも聞いてやるから、何でも言ってこい」
「…………………何でも?」
やベっ。
またミリスの性癖に刺さるような言葉を言ってしまった……。
何されるんだ、俺。
「………ミリス、また顔が赤いようだが………
…………あの、大丈夫か?」
「……………ランス君、お願いがあります…」
さっきのやつか。
何でもって言っちゃったし………………どんなことを求めるのだろう。
「……ランス君……………………今日……………その………
…………えと…………………………」
そんなに溜めるほどのことなのか?
しかもめっちゃ恥ずかしそうだし。
「………………今日は…………私と………………一緒に寝ましょう…」
…………そんなことか。
もっとあんなことやこんなことを想像していたが、思っていたより軽いことだった。
「…………それくらいなら、別に構いやしねぇよ」
それを聞くとミリスは笑顔になった。
「それともう一つ、良いですか?」
「何だ?」
今度は恥ずかしがってないし、まともなことだろう。
「誰も、私たちの部屋に入れないでくださいね?」
「……分かった、誰も入れさせない
安心しておけ」
また、ミリスは笑顔になった。
「じゃあランス君、寮に帰りましょ」
「気分高いなぁ」
俺たちは寮に戻るため、歩き出した。
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