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8.帰路

「守護団員、ランスよ」


ゴクリ………。


「ここにて、合格といたす」


…………………俺、やったのか?

守護団に残れるのか?

本当、なのか?


「……なんだね、嬉しくないのか?」


おっと、俺のあまりの無表情さに、そんなことを聞いてきた。


「……………いいえ、気分は最高です」


最高というか、嬉しい。

これからも頑張らなくては。


「……そうか

これからも励みたまえ」

「はい!

ありがとうございました!」


俺は大きな声でそう言った。






―――


あれから時間が経ち、当たりは少し暗い。

そんな中、俺は隣町を出て、寮へと戻るため、走っている。


…………………しかし、何だろう、解放感というものが半端じゃない。

その原因は間違いなく、合格をもらったことだろう。


少し不安だったのだ。

「不合格ならどうしよう」や、「ミリスは大丈夫かな」など、色々考えていた。

不合格で、寮から出て、どんな暮らしをさせられるのだろう、こんなことも考えた。

しかし、もうそれは単なる妄想だ。

現実ではないのだ。

ミリスのことは………………………………………ポラリスがいるから大丈夫だと思うが…………。

まだ不安材料としては残っている。

無事、というかなにもないことを祈るが。


…………しかし、ミリスとこれからどうなろう。

あいつ自身はどうなりたいか分からないけど、ある程度は助けてやりたい。

寮から出て、自立したいなら、俺も少しは金を出してやるつもりだ。

特にやりたいこともないなら、あの寮に居させてやるつもりでもある。

その方が、ポラリスも喜ぶだろうしな……。


ミリスには幸せになってほしい、そんな願いはある。

魔女だからなんて関係ない。

いつかそれを分かった上で愛してくれる奴は現れるはずだし。

それにあいつ、ロリっ子だから、割と人気が出てもおかしくないし。


……………………そういえば、あいつ、部屋から出てないだろうな?

まぁでも、自分が魔女でこれくらい嫌われているっていうことは、ミリス自身が一番良く分かってる。

だから、下手に心配する必要もなく、安心しきって良いか……………………………………………………………………そうだよな?


俺、今はいつもになく心配性だ。

良いことなのかそうでないのか…………。

分かんねぇな………。


俺は、そんなことを考えながら足を進める。

街はもう見えている。

着けば寮まではすぐだ。










――――――


「ただいま帰りましたぁ……」


俺の部屋、誰もいない中で独り言をつぶやく。

ミリスはポラリスの部屋にいるだろう。

もちろん、ポラリス自身も。

一応、見に行くか………。


俺は荷物を置き、弟の部屋へと向かう。


廊下を少し歩き、扉の前に立ち、部屋に入った。


「入る………ぞ…………………」


なんだ、どういう状況だ?

暗い部屋で、ポラリス一人がうずくまっている。

なぜ……………。

部屋にミリスは………………………………見当たらない。


「おい、どうしたポラリス

何かあったのか?」


俺はそっと、ポラリスに近づく。


「…………んっ…………………おにぃ……………ちゃん……」

「おおっ」


ポラリスが勢いよく、俺の胸に飛び込んできた。

もしかしたら倒れてたかも………。


「…………おにぃちゃんはさ、僕が嘘をついたら怒る?」


いきなり何の話だろうか。

ええっと、ポラリスが嘘をついたら怒るか、だろう?

というか、それよりミリスはどこにいるんだよ……。


「…………ポラリスが嘘をついたら、か

俺は小汚い嘘をつく奴は嫌いだ

だから怒るかもしれないな」

「そうだよね………」


こう言ったからといって何か変わるのか?

何かすごい迷っているように見えるけど。


「…………おにぃちゃん、話したいことがあるの…」

「お、おう……」

「…………………おねぇちゃんのことなんだけど……」


ミリスのことか。

どういう状況か、まずは教えてくれると助かる。


「…………僕、ここのお兄さんたちと一緒にいじめちゃった…」


…………………………。

………………………………………………………どういうことだ。

いじめる?

ポラリスが?

あんなに可愛がってもらって、なおかつ自身もよく甘えていたのにも関わらず?

どういうことだ、理解できない………。


「…………おにぃちゃん、怒らないの?」


怒るも何も、理解できていない。

不十分な情報だけでは怒れないのだ。


「…………よく分からないから、詳しく聞かせてくれ」

「う、うん………」







―――


「なるほど…………」


全て、聞いた。

おそらく、

『魔女は悪者だと聞かされたから、魔女を撃退しようということになった

なので、ある部屋に呼び込み、みんなでミリスのことを蹴ったり、火魔法をかけたりしていじめた』

ということだろう。


「………………あれ………こんなことしたのに、おにぃちゃん、怒らないの?」

「…………怒りたい気持ちもあるさ」


問題は、ポラリスもその行為に参加したということだ。

本来であれば、許さない。

ただ、


「あんなに甘えていたミリスをいじめようとか、撃退しようとか考えるのは、よっぽどのことがあったからだろう?

そう考えたら、下手に怒れないよ……

許すまでは言わない

ただ、ある程度仕方なかったことであるとは認めよう

それに、反省してくれよ?」

「………う、うん……」


こういうことだ。

ここの守護団の奴らに何を言われたかは知らないが、よっぽどのことがないと、こんなことにはならない。

それは分かってやるつもりだ。


「……ねぇ、おにぃちゃん」

「…………なんだ?」

「ここのお兄さんたちは、魔女のせいで火事になったり、殺されたりしてることを知ってるんだって

だから…………その……………………魔女って、怖いの?」


そんなことを言われたのか………。

信じても、おかしくないのかな?

………ただ、全て間違った情報だ。

正確ではないだろう。

ここは、今、真実を伝えなくては。


「前にも言ったと思うが、魔女はみんから嫌われている存在なんだ

そのせいで、ありもしない悪い言い伝えが広まっていたりする

ポラリスが教えられたのもそうだろう

本当は街を守ってくれる、とても良い存在なんだ

怖くなんかない

覚えておきな」


もちろん、俺も本から得た浅い知識だから確実性があるかと言えばそうではないのかもしれない。

ただ、ミリスがこの寮に来たからといって被害にあっているわけでもない。

ならば、その知識で正しいと考えられる。

本が間違っていたとしても良い。

考えるのは魔女による被害があった場合のみだ。


「分かった………」


ポラリスも分かってくれたみたいで良かった。

しかし、まだ解決していないのが、


「…………ポラリス、ミリスはどこなんだ?」


これだ。

ミリスの場所はまだ聞いていないぞ。


「…そうだったね………

おねぇちゃんは……………今も部屋に閉じ込められてるよ…」


…………………………なんだって?

監禁されている、のか?

守護団の奴らか?


「………場所は、知ってるか?」

「うん………」


知っいるのか。

ならば何よりだ。


「案内してくれ」

「分かった、おにぃちゃん」


俺はその部屋へと向かった。








――――――


「………ここだよ…」

「……分かった…」


部屋の周りには誰もいない。

そしていったい、ここが何の部屋かも知らない。

おそらく、あいつらが使う空き部屋だと思うが。


俺はドアノブを握り、部屋をに入った。


「…………ミリス、いるか」


返事はない。

ここに監禁されているんだよな?


「お、おにぃちゃん!」


おっと、どうした?


「ま、窓が開いてるよ」


………本当だ…………………まさか。


「ここから飛び降りたのか?」


高さはあまりないが、飛び降りると足は痛めそうだ。

不安定な体勢で行けば死にそうでもある。


こんなところで、まさか、な………。


「おにぃちゃん、おねぇちゃんがいないよ!」


ここは家具も少ないし、隠れられる場所もなさそうだ。

ということは…………。


「降りた、のか?」

「ここしか逃げ道はないよ

ここに入る時の扉も、中からは開けないようになってたし……」


……………………。

行くしかねぇ。

追うぞ。

1人にはさせられない。


「なぁ、ポラリス、お前は寝ていていいぞ」

「…………どうしたの、おにぃちゃん…」

「今からミリスを探してくるよ

……………安心しろ、絶対に見つけるし、すぐ帰ってくるよ」


俺は部屋を出て、外に向かった。

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