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「皆さん、お忙しいところお集まりいただき感謝します」


 いつになく改まった口調の王太子に、全員の視線が集まった。


「実は……」


 アマデウスがモネ公爵について行き、自分を鍛え直したいという話を始める。

 全員が驚いた表情を浮かべたが、茶化す者はいなかった。


「期間は?」


 国王の問いにアマデウスが答える。


「一年を考えております」


「供は誰を?」


 フェリシア侯爵の言葉に、アマデウスは毅然と言い放った。


「ひとりで行こうと思います。もちろん立場上護衛が付くのは受け入れますが、側近は連れて行きません。僕は弱いから、きっと頼ってしまう」


 アマデウスがルルーシアに向き直った。

 啞然とした顔でアマデウスを見続けていたルルーシアと視線が絡む。


「事後報告になって申し訳ない。同意してくれるだろうか」


 じっとアマデウスの顔を見ていたルルーシアがフッと息を吐いた。


「どうぞご勝手になさってくださいまし。殿下のご決心に水を差すつもりはございませんわ」


 王妃が声を出した。


「そうね、私は賛成よ。侯爵達に鍛えて貰わなくちゃとは思っていたけれど、それでは腹黒くなりすぎるからと心配していたの。その点モネ公爵閣下なら安心だわ」


 三人の侯爵は『いや、そっちの方がヤバいだろ』とは思ったが、誰も声を出さない。


「ルルちゃんも一緒にお行きなさない。ロマニア国には学園を卒業した者たちが専門分野を学ぶための上級学校というのがあると聞いているわ。この際だからできなかった学生生活を送るっていうのも良いんじゃない?」


 王妃の言葉にルルーシアの顔がパッと明るくなる。


「よろしいのですか?」


「私は良いと思うわよ? ただしあなたにはアリアをつけます。どうかしら? アリア」


 アリアが正式な礼で応える。


「仰せのままに」


 キリウスが楽しそうな声を出す。


「じゃあ俺が引率で同行しようかな。さすがに1年は無理だけど、半年くらいなら大丈夫」


 キリウスの秘密を知っている三人はシラケた顔をしたが、国王は大きく頷いた。


「ああ、お前が同道するなら安心だ。しかしアマデウスに手を貸してはいけないよ。お前はルルちゃんの保護者だ」


「もちろんだよ、兄上。アマディが自分から鍛え直すと言いだしたんだ。絶対に邪魔はしない。命に関わるほどの大事だったとしても手は出さないさ。もしそれで死ぬならそういう運命だし、そのことで預かって下さるモネ公爵を責めることはない。それでいいね? 兄上」


「ああ、それでいい。しかし、王太子夫妻の不在の間の仕事は誰に頼むかなぁ……この際だから、側近たちも鍛え直してくれるような人材が良いなぁ」


 国王の言葉に大きな溜息をついたのはふたりの侯爵だ。


「娘の不在は父親である私が埋めましょう」


 メリディアン侯爵がどよんとした顔でいうと、ロックス侯爵も続いた。


「わかったよ……わかりました。王太子のお仕事は私がお手伝いします。どうせアランは鍛え直さねばアリアの夫は務まらんと思っていましたからね。公務としてバシバシいかせていただきますよ。アラン、覚悟しろよ?」


 フフフと笑うロックス侯爵の視線に、アランの体がビクッと揺れる。


「そういうことなら、我が娘の一番近くにいることになるマリオも鍛えねばなぁ。マリオ、全力でいかせてもらう。お前も覚悟しろ」


 マリオがコクコクと何度も小さく頷きながら、どんどん青褪めていく。

 王妃がポツンと言った。


「ふたりともあまり私情を挟まないようにね? それと、殺してはダメよ?」


 フッと気が遠くなったふたりをアリアが体で支えた。

 フェリシア侯爵がガハガハと笑いながら声を出す。


「頑張れよ~俺に宰相職を押し付けたバチだ。実に愉快だな」


 国王が口を挟んだ。


「うん、ふたりが苦労してくれるんだ。フェリシアもそろそろ(仮)を外しなさいよ」


「げっ!」


 モネ公爵が立ち上がった。


「この国の王太子夫妻は幸せですな。遠慮なくビシビシといかせてもらいましょう。可愛い孫娘を任せるんだ。強い男でないと困るからね」


「よろしくお願いします」


 アマデウスが立ち上がって頭を下げた。


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