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無事に墓参を済ませた一行は、旅装に着替えてすぐに馬車に乗り込んだ。
マリオの手配によりサマンサだけメントール家の馬車に乗り、エディはアリアからの親書を携えて、一足先に駆けていった。
「さあ、王都へ帰ろう」
メントール家の全員が見送る中、三台の馬車が動きだした。
予定では夜になってからの到着だが、なるべく早い時間に戻りたいという王太子の意向で、途中休憩を減らし、ひたすら王都へと走っていく。
婚姻式からずっとゆっくり休めていないルルーシアに、アマデウスが声を掛ける。
「ルル、顔色が悪いよ。僕の膝に頭を乗せて横になりなさい。少しは楽だろう」
「いえ、殿下、畏れ多いことですわ」
「僕たちはもう夫婦なんだ。遠慮など必要ないよ。さあ、ルル」
自分の膝をポンポンと打って、ルルーシアを促すアマデウス。
戸惑いながらも頷いたルルーシアが、体をずらしてアマデウスの膝に頭を乗せた。
自分の膝にルルーシアの重みを感じたアマデウスは、嬉しそうに新妻の髪を撫でる。
「ルル、やっと一緒にいられるんだね。僕はずっと寂しかったのかもしれない。でも僕はその寂しさを隠そうとしていたんだろうね。もっと早くに君に全てを曝け出すべきだったのに」
アマデウスの言葉に返事はない。
「ルル?」
侍女が座席の下の収納箱からブランケットを出して、ルルーシアの体にかけた。
「殿下、妃殿下は眠られたご様子です」
「そうか……まあ、彼女が少しでも休めるなら、それに越したことはないさ」
口ではそう言ったが、眉を下げて悲しそうな顔をしたアマデウスは、ルルーシアの髪を弄びながら、すっと窓の外に視線を投げた。
その頃、後続の馬車では、サマンサを除いた3人が頭を突き合わせている。
「さすがロックス侯爵だ。動きが早いな」
「やるときはやるのよ、うちのパパは。最近ちょっとお腹が出てきたけど」
「それにしても、まさに打ってつけの貴族家が見つかったものだ」
アランの言葉にマリオが頷く。
「完璧だよね。一人娘が隣国に嫁ぎ、その夫婦が無くなったので孫娘を引き取る事になったなんて最高じゃない? カレン・ウィンダムか……ウィンダム家って確か隣国との境界辺りじゃなかったかな?」
「そうさ。爵位は伯爵だが領地は無く、隣国との交易で収入を得ている家だ。しかもその孫娘が平民と駆け落ちして逃げたって言うんだろ? もしかしたら誰かが動いたんじゃないか?」
そう言うアランの顔を見てアリアがニヤッと笑った。
「だとしたらフェリシア侯爵あたりが怪しいわね」
アランは何度も頷きながらアリアに聞く。
「サマンサはずっと部屋に籠って死ぬのを待つだけで良いのか?」
マリオが吹き出す。
「言い方が……」
アリアが頷きながらアランを見た。
「そうよ、死に待ち。その間は看病と称してうちの侍女を派遣するから、監視もできるわ」
マリオが感嘆の声を出す。
「これが一晩で整うのか……高位貴族だけは敵に回しちゃダメだってホントによくわかった」
アランが聞く。
「王弟殿下には?」
「メリディアン侯爵が動いているわ」
「それなら安心だ。サマンサはもう一度側近試験を受けることになるから、部屋に籠っている間にその対策もしてもらわないとな」
アランの言葉にマリオが頷く。
「そうだね、ここで落ちたら全てがパァだもんな」
「それとカレンの生い立ちや家族構成、母親の実家との関係や、なぜ引き取られることになったのかも全部頭に叩きこませなきゃ。資料は出来次第ロックス家から届けるわ」
マリオがニコッと笑う。
「僕は鼻血拭きのハンカチを大量に届けるよ」
「それにしても大物が釣れたものね」
「ああ、こっちが本命だからな。サマンサにはもう少し頑張ってもらおう」
アランとアリアの言葉にマリオが頷いた。




