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3おねぇな魔術師は王子様になる?!

 トニー、アントニアはギルバートの目の前から消えてしまった。

 彼の実家ハワード家にも姿は見せていない。


「フランチェコ兄さん、どうしてキスで魔法が解けるって教えてくれなかったの?」

「教える必要はないだろう?すべての魔法は、真実の愛のキスの前では無効になる。基本の基本だろ」

「し、真実の愛のキス……」

「そうだよ。だから魔法が解けた」


 フランチェコにはっきり言われ、ギルバートは言葉を失う。


「ギルバート。俺はお前がトニー、アレクササンドラを好きだったと思っている。だから、魔法も解けた。でも諦めるのか?」

「諦める?」

「あの後、アントニアは向こうの家に見つかって連れて戻された。明日、スロヴィア伯爵の元へと嫁がされる」

「スロヴィア伯爵、あのハゲデブエロ親父。諦めてなかったんだわ。明日なんて!なんで教えてくれなかったの?」

「俺も今日知ったんだ!後お前の気持ちがわからなかったしな」

「私の気持ちよりも先に、スロヴィア伯爵の元へ嫁ぐことを止めるのが先でしょう?」

「止めるのはやはり王子様だろ?」

「王子様ねぇ。私はそういうの向いてないわ」

「外見はぴったりだけどな」

「そうね。外見だけよ」

「ギルバート。俺はこの結果を見越して、アントニアに魔法の薬を渡した。あの子はいい子だったし、お前がきっと好きになるって」

「兄さん」

「お前が女性嫌い、女性に対して恐怖心をいただいているのを知っている。だけど、やはりそばに誰かいた方がいいだろう?だから、俺は賭けてみた。あの子に」

「そう、そうなのね。フランチェコ兄さんの気持ちは嬉しいけど、トニーに対して失礼よ」

「そうだな。利用したみたいで」

「そうよ。でもあの子を一時的にでもあの家から連れ出させることができたのは、兄さんのおかげよ」

「そっか」

「だからトニーも怒らないと思う」

「ならいいが。ギルバート、馬を使え。早い馬を裏に繋いである。場所はわかるな」

「ええ」


 トニーから話を聞いて、彼女の家と、スロヴィア伯爵の屋敷に位置も私調べたことがあった。


「ああ、いいのか。悪いのかわからないが、これも伝えておく」


 馬に乗ろうとした彼にフランチェコが耳打ちした。


「それは私にはありがたいわ。だって、まだ慣れないもの」

「そうだな。大変だろうが、頑張れ」

「ええ」


 ギルバートは馬に乗ると、一気に駆け抜けた。


 彼は結婚式手前、二人が誓いの言葉を交わす前に間に合った。

 馬から降りて、そのまま駆け出し、驚いているアントニアに構わず、口付ける。


「き、貴様は、ギルバート!」


 スロヴィア伯爵は大きな声で喚き立てたが、目の前に現れた存在に言葉を失った。

 可憐な花嫁は、黒髪の青年に姿を変えていた。顔立ちはよく似ており、花嫁のドレスも見に纏っているため、本人のはずなのだが、肩幅は大きく、喉にも隆起があり、花嫁でないのは確かだった。


「貴様は誰だ!アントニアはどこに!?」

「私がアントニアですよ。私、本当は男なんです」

「なんだと!フォリックスめ、騙したな!」

「ええ、父は知ってましたよ」


 トニーはそう断言し、ギルバートと笑い合う。


 その後、結婚は破談になったわけではなく、代わりにアントニアの妹が嫁ぐことになった。元からスロヴィア伯爵の狙いはアントニアではなく、妹のほうだった。借金が重なりすぎており、アントニアの父は選択肢がなかった。

 妹は泣きながら嫁いでいったと噂に聞いた。

 伯爵の元から戻ったアントニアは、再びキスをされ女性に戻された後、ギルバートから告白される。

 おかしな噂が立つ前にと、急かされる様にして二人は籍をいれた。

 ギルバートは元から計画していた通り、家を借り、アントニアと暮らすことになる。


 アントニアによって、効果立証済みの性転換の薬は王家に独占的に買い取られてしまった。しかしそのおかげで、アントニアも綺麗に実家から離れることができた。

 王家が後ろ盾となり、社交の場でギルバートたちが貶められることはない。しかし、ギルバートが女性、男性どちらが本当に好きなのかという議論は、時折社交の場で交わされている。


 (おしまい)






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