ろうそくの火
火は熱い。
触れると火傷してしまう。
激しく攻撃的で恐怖の色を持つ。
けれど不思議なことがある。
ろうそくに灯る火はあたたかいのだ。
指で直接赤いところに触れると怒ってしまう。
でも慈愛のような優しさで手のひらを撫でてくれる。
暗い狭い息苦しい部屋の中でぽつんと光る。
小さな熱が私を見てる。
溶けたろうが滴る。
またひとつと落ちた。
灯火は静かに燃えた。
この短くも長い時を私は焦る。
とろとろと体が溶けていく。
熱いろうそくがお皿を満たしていく。
皿の縁から溢れた。
白く床を汚した。
そして火は消えた。
見えない煙を追った。
このあたたかい余韻に身を預けた。
寒い。