ちーとらさん
「ちーとらさん、ちーとらさん」
「あれはみた? きみはみた?」
「ちーとらさん、面白かったよね」
「きみはみた?」
「あの日は昨日で、さようなら」
「ちーとらさん」
「さよならの向こう側に挨拶をする」
「ちーとらさん?」
それは何。なんの話をしているの。分からない。首を傾げて、不審な目で見る。あなたは少し困った顔をする。瞳を見つめて、透視する。
「血ととらさ」
「血と皿さ」
それにはどんな意味があるの。今は求めない。自分で考えてみればいいんだ。答えは一つではない。考えれば考えただけある。さあ、君に答えを教えて。さあさあさ。
「ちーとらさん、ちーとらさん」
「夢はいつ見る?」
「明日は来ない?」
「さっきのことは全部忘れた!」
「ちーとらさん、ちーととさ」
「間違えた?」
そんなことはない。正しい。間違えはない。正しいもない。答えは一つではないから。昨日の次は今日ではない。
答えがあるから問題があるのではない。問題があるから答えがあるのだ。
「ちーとらさん。ちーとらさん」
「ちと乱さ」
乱れている。ちと乱れているの。どこに赤。緑の先に夜。黄が騒ぐ。紫の荒野を月が照らした。星が降る。地面に埋まって、満月の夜に芽を生やす。太陽の光ですくすくと育って、お礼も言わずに空に還った。
「ちーとらさん、ちーとらさん」
「みた?」
「よかったよね、感動したよ」
「なんの話をしているの?」
「ちーとら、とらとら」
「小さな虎さん」
あくびをして寝たフリをした。夢の中でまた出会えるように
ありがとうございます。