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こんせき

作者: 社怪人

サイト no-seen flower にて開催されていた「闇鍋企画」その「素材」を見ている内に書きたくなって書いた超短編です。


感想お聞かせくだされば、うれしい。


追記……

「闇鍋企画」公開は2010年3月にて終了しました。

 深夜―



 ワンルームマンションの一室。

 ネットサーフィンしていると久しぶりに『コトン』という音がした。

 大体一ヶ月ぶりかな? と思いつつドアに付いている郵便受けのふたを開ける。

 中からは小指の先ほどの大きさの小石。

 綺麗に磨かれた、濁った白い色の、小石だけ。



 ケイからの、久しぶりの、贈り物。



 ◆ ◆ ◆



 ケイとの出会いは、三年前。



 大学の食堂で時刻表片手にどれだけ安く実家へ帰れるか頭を捻っていたところ、通りかかったケイがベストルートを教えてくれたのだった。


 それ以来妙に馬が合い、一緒に旅をするようになった。とは言え旅好きのケイはしょっちゅう出かけていたのでわたしはその内の一、二割程度だったが。


 わたしが同行できない旅の時、ケイは帰る直前、わたしに旅先の出来事を手紙にして送ってきた。

 封筒には手紙と、旅行先で拾ったと言う小石を必ず同封してきた。ケイなりのささやかな『記念品』として。


 そして手紙が届いた日の夕刻かその翌日にはキャンパスで再会する。

 それがわたしとケイとの『決まりごと』のようになっていた。



 ◆ ◆ ◆



 ケイが大学を中退したのはわたしのせいである。



 とは言え、面倒ごとを起こしたとか暴力沙汰とかそんなもんではなく、ケイがわたしに送ってきた『旅行記』をたまたま出版社に勤める伯父が読み、そのユニークさに感動してケイに原稿を書いてみないか? と勧めたことが始まりだった。


 伯父の出版社が発行していた月刊の旅行雑誌にケイの旅行記が掲載され、それが人気を呼び、あれよあれよと言う間にケイは『人気旅行作家』となり、日本全国をテーマにした連載を月一で載せてみないか、と言うことで休学し……



 結局そのまま中退してしまったのである。



 それでも、ケイは雑誌に連載するものとは別にわたし専用の旅行記を書き、その土地その土地の小石を同封してわたしに送ってきたし、受け取った日の夕刻か翌日には二人で会い、旅の話をすることが多かった。



 大学のキャンパスでなく、駅前の喫茶店が主だったが。



 ◆ ◆ ◆



 その日、わたしはケイを空港まで見送りに行った。



 ケイの国内旅行記は単行本化されベストセラーとなり、調子に乗った(失礼…)出版社が『今度は海外旅行記だ!』と航空運賃及び滞在費持ちでケイ(プラス編集者一名)を海外へ送り出すことになったのだ。


 ロビーでケイは『今度は簡単には帰れないけど、小石だけは贈るからね』と微笑みながらわたしに約束すると機上の人となり……



 飛行機ごと行方不明になってしまった。



 ◆ ◆ ◆



 それから……



 ケイはいまだに公的には行方不明のままである。あの時消えた飛行機とその乗員乗客ごと。

 不定期にわたしの元に届く小石がどこから来るのかもわからない。


 でも、これが届くということは、ケイは確かに生きており、旅を続けているのだろう。


 小石を小さな硝子瓶に入れ、日付を記したラベルを貼り、たくさんの同じ形の硝子瓶が並ぶ飾り棚に置く。

 並んでいる瓶の中の小石は様々な色形をしており、中には日本どころか地球上にはあり得ないものもあるらしい(鑑定した地質学者が欲しがったが誰がやるものか!)。



 ケイよ、早く帰って来い。


 また駅前の喫茶店で旅の話を聞かせてくれ。



 待ってるからな。


この作品、思いっきり描写を省くことにより、読者の方々にいろんな想像をしてもらおうという意図の元書かれております。


故にこの二人の関係などは「読者次第」です。


男同士(BL?)、女同士(百合?)、男と女で男が年上、女が年上、どのように取っていただいてもかまいません。


そういう作品であります。

決して手抜きじゃないんだからねっ!

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― 新着の感想 ―
[良い点] リンクをたどってたどり着きました。 ほっこりとする、読み終わりがとても気持ちよかったです。 読者に想像させてくれる余地があるって嬉しいです。 ありがとうございます。
[一言] 印象深い作品です。 少しダークな予感をさせつつ、最後は不思議な安心感で終わって、気持ちいい読後感でした。
[良い点] あえて詳しく情景を描かない事によって、読み手に色々な想像をさせる手法が、こんなに心に残るとは。 目から鱗でした。是非他にも文章を書いて頂きたいです。
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