3話 世界への入場
本番スタートです。ここからは元作品から変わる流れがあるかもしれません。大筋は変わらないと思います。お楽しみ下さい。
3
目を覚ますとそこは見慣れない所だった。地面は大理石を敷き詰めた石畳だし、周りにある建物もどこか中世ギリシャ(中世ギリシャに行った事があるわけではないが)のような感じだ。建物の大半は美しい光沢を持つ石造りで、周りを歩いている人達も身なりはしっかりしていた。
かく言う俺も服こそただのジャージだが、足に履いているのは薄い革で作られた厚底ブーツだ。両手にはフィンガーグローブを着けているし、背中には一本の小さな両刃の剣をぶら下げている。左手には円型の盾も装着していて、いかにもRPGの初期装備といったかんじだ。
自分でRPGの初期装備と言っておいて、ふと、違和感を感じた。夢にしてはあまりにリアル過ぎるのだ。着ている服から履いているブーツ、持っている剣や盾にまでしっかりと触覚が反応している。石畳を叩けばコツコツと音が鳴るし、道の隅に生えている草も細かい所までディテールが作り込まれている。
しかも、視界の右下にはLPとその下にはSPと書いてある緑と青色のバーが表示されている。その二本のバーの上には見慣れないハートが三つ表示されているが、それもそのうち分かるだろう。
それにしても、「異世界転生なんて信じない」と言っていたにも拘らずこんな夢を見てしまうとは、俺も無意識のうちにそれを望んでいたのだろうか。自分で考えてみて、恥ずかしくなってきたのでもう考えるのはやめようと思っていたら、目の前にいきなり痩せ細った外見の老人が現れた。
その老人は喋り出す。
「よくぞ、この世界に来た。」
ここからは長くなるので割愛するが、要するに、「さらわれた姫を魔王の城から助け出せ。ハートがゼロになるとトンデモない事が起こるぞ。」と言うことらしかった。ベターな異世界系すぎて恐ろしい。少し、いきなり異世界に連れていかれたヒトの感覚がわからなくなった。
だって、目が覚めたら知らない所にいて、何がなんだかと混乱している所にジジイだか女神だかが「お姫様を助けて下さいー」って言ってくるのだ。こちらとしては迷惑もいい所である。だがこんな展開になってしまった以上断るわけにもいかない。それにここは夢なのだ。今後の進退に関わるわけでもあるまい。俺は少し面倒だと思いながらも、これから始まるであろう何かに胸を躍らせ、返事をした。
「わかりました。俺が姫を救います。」
お読みくださりありがとうございます。読みやすく楽しい話を心がけて書いていきます。