山が笑った
それはちょっと今の時代よりも昔の出来事。
家電とか機械とかが、世の中に出る前の出来事。
小さな村に、身の回りの色々な物に魂が宿っていると、知っている人達がいた。
その人達は山に囲まれた生活を送っていて、普段とても不便していた。
なぜなら、近くの村や町に行く時には、山を越えていかなければならないからだ。
だから何とか便利にしようと考えた結果、近くにある山を掘って貫通させようという考えが出た。
しかし人々は、その計画を実行する事はなかった。
なぜなら山に魂があると知っていたからだ。
近くにある山は、自分に魂がある事を隠さなかった。
それで人々は、山の声を聞いた事がある者が多かったためだ。
計画がやめになって、削られる事がないと知った山は「がはは」と笑った。
「変わった人間たちだなぁ。人間は弱いのに、便利になって強くなろうとしないなんて」
小さな少年が、答える。
まるでおかしい事だとは思っていない様子で。
「だって友達だもの、便利になるとしても、友達を傷つける事はしたくなかったんだ」
それから時代が変わり、生活が豊かになるまで、その山と人々はずっと仲良く暮らしていった。