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エピローグ アルの冬

ヒデが何回も振り返って 手を振って 坂を下りていく


坂を下り切った二人を見て 俺は二人を追って走り出す

でも まったく追いつけない


二人が広場に入っていく 休日の今日の広場は賑わっていて

二人を見失いそうになる

人にぶつかりそうになりながら 二人を追う

ヒデが 灯ろうから火を取って カンテラに灯すのが見える

満足げに カンテラを掲げて灯を覗き込む横顔が

近くに見えるのに 追いつかない


ヒデが坂の方を向いて 一礼している

俺が坂の上に居るかのように 視線はまっすぐに俺の家の方だ


俺はここに居るのに??

俺は 今 どこに居るんだ?

ヒデは ヒデと使者は今 どこに居るんだ?


二人は人込みの中を まるで誰もいない中を歩いているように

真っすぐに広場を抜けて行った

二人の背中が 泉へ向かう

緩やかにカーブしながら下る道が 二人の背中さえも隠してしまった






左からツバイとアインの声がした


「アル どうしたんだ? 具合悪いのか?」

「ヒデはどうしたんだ?」


気づけば 俺は 広場の灯ろうの足元に座り込んでいた

二人は買い物帰りらしく 大きな荷物を持っているのに

俺を見かけてわざわざ 声をかけてくれたらしい


「ヒデ 旅に出たんだ 心配してくれてありがとう」

と なんとか泣かずに言って 二人に手を振る


二人は何も言わずに 俺の背中を軽くたたいて去って行った


ヒデに会う前だったら 二人に意地悪をされたと思ったかもしれない

でも 今なら 二人が俺を気遣ってくれたのだとわかる





俺は足取り重く 家に帰り ヒデの部屋に行く


返事があるはずないのに ノックして


「ヒデ?」

と呼びかける いつかの様にそっと覗いてみる


そこにヒデが居ないことにがっかりする


「ねえ アル 」


って話しかけるときのヒデの声が今でも聞こえてくる 

その声がとても好きだった


旅人だし友達だけど

本当は神様だったんじゃないのかな?

俺を助けに来てくれた神様 


望むことさえしていなかった望みを

叶える為に俺のところに来てくれた神様


世界の見方を教えてくれた神様


ガラス張りのカンテラから外へ連れ出した神様

出る事を教えてくれた神様


俺は俺のままでいいんだって

ちゃんと愛されてるって



誰も

俺を傷つけようとはしていないって

気づかせてくれた神様


子供の顔をした泣き虫の神様


ずっと 一緒に居たかった神様




ヒデのいない部屋を見渡す

俺が初めて 俺の火を見せた机に石板がおいてある

字が書いてある


石板なんて使った事ないから うまく書くのが難しい

って 言っていたっけ


あまり上手とは言えない字にヒデらしくないとちょっと笑って


上手じゃないのに 

一生懸命 丁寧に書いてあるのが

ヒデらしくて涙が出てきて


石板を抱きしめて泣いた






*****


短い冬が来た


この短い期間は家の中で家族と過ごすのがハザマハーラの慣例だ

家族と閉じ込められる冬が俺は好きでなかったけれど

今年は変わった

家族という世界を深く知ろうと思ったからだ


父さんは

「人を助ける」という役割で 学校の隣の水田を

作った旅人の一人だった

その時に長(俺の爺ちゃん)の家の娘だった母さんを

好きになったらしい


沢山の旅人が来るけれど 帰ってくる人は珍しい

その 珍しい人になったのは 能力のおかげだと

父さんは言っている


その能力で帰ってきて 母さんと結婚したんだ


ヒデは 能力が無いのを残念がっていたけれど

もしかして 父さんと同じ能力だったら

また会えるといいな と思っている


その時までに 俺はこのハザマハーラ中の事を

深く 広く知ってやろうと思っている


冬が終われば 兄さんが帰って来る


使者が旅人を連れてくるかもしれない



そしたら また 世界を広げよう



*****


俺の部屋は相変わらず散らかっているけど


机の上だけは綺麗にして 


あの日に アルが書いていった石板をおいてある



大事な友達のアルへ


アルが 世界を深く知って

広げていくって信じてる

隣には居ないけれど

ずっと忘れない


ヒデ


今回 最終話です 最後までお付き合いいただきありがとうございました 感謝 感謝 多謝

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