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31旅立ち

「さようなら」


アルの家族がもう一度 僕をギュっと抱きしめて


「さようなら ヒデ」

と声をかけてくれた



ずっと前に故郷で 眼とカメラの比較図解を見たことがある

瞼がシャッターで  画像は脳に取り込まれる


ハカセって呼ばれる白衣のオジサンが子供たちに言うんだ

「君たちは 眼という素晴らしいカメラを持っている」って


僕が ここで沢山瞬きした景色は全部 脳にしまわれていて

好きな時に出す事ができる


紅葉の下から見た集落 や 夜景 アルの優しい顏

学校のチビ達や 生徒たち 田んぼで風にそよぐ苗


色とりどりの月 野営みたいな火に照らされた 

レイさん フィーさん トロワ


それから 今のみんなの優しい顏

ぬくもりと 言葉も ちゃんと僕の記憶にしまっておこう


好きな時に取り出すんだ 整理は得意だからね






これが最後だと さよならと手を振って 

先に歩き出した使者と共に坂を下りる


アルと何回も下った坂 話しながら ふざけながら 時には黙って歩いた道

その時の空気さえも思い出せる




何回も 振り返って 大きく手を振る

アルが トロワが レイさんが フィーさんが手を振ってくれる



先に行く使者に走って追いついたら

また 手を振る

だんだん 人影が小さくなる


別れってこんなに寂しいんだ

友達との別れってこんなに辛いんだ

胸がキリキリ痛んで 涙が出る

振り返って 手を振って 

振り返してくれる人影が涙で滲む


ふと アルらしい人影が動いた気がして

坂の上を見つめる

先に行った使者が立ち止まって振り返る気配がするから

慌てて 使者に追いつく

追いついて 服の袖で涙を拭う



「広場へ寄って このカンテラにアルの灯を移していきたいのですが?」

使者にお願いすると頷いてくれた


アルを連れてはいけないけれど

アルの灯を連れて行こう

どこまで一緒に行けるかわからないけれど

行けるところまで一緒に行こう

そうしたら 

この胸の痛みも少し和らぐんじゃないかな?


広場の灯ろうにアルの火はちゃんと灯っていた

明るくて 優しくて 綺麗なアルの火

そこから 慎重に火を移す


アルはこのカンテラを毎日使ったんだね

トロワが言っていたように アルが火柱を出しちゃって

フィーさんが 泣いて

レイさんが なだめて

そんな事を繰り返して 

今の アルがいるんだよね



アルに「世界を広げろ!」って言ったのに

僕が 旅立つのが寂しいなんて情けないから

アルの灯に勇気を貰う


アルの家の方を見て

本当に これが 最後の最後のお別れ

もう 振り返らない

って決めて

一礼する


アルの灯があるからか

アルの気配を感じる

アルが居るんじゃないかとキョロキョロするけれど

アルどころか 今日の広場には誰もいない



広場を抜けたら ゆるくカーブしながらの下り坂だ

このカーブを抜けたら もう 振り返っても集落は見えないだろう


いつか トロワが話していた泉の横を使者と二人で通る

綺麗な泉があるのに ここにも誰もいない


泉の先 墓所を抜けると森へ続く道が見えてきた


世界に今 僕と使者だけしか居ないような

静かな道 

少しだけ 怖いような気持ちになるけれど

僕は地面をしっかりと踏みしめて歩く

森が近づくと アルの灯が明るく感じられて

励まされている気になる


道草が終わった旅人(ぼく)は 今

僕の道をハーラ(もくてきち)に向かって歩き出している


明日が終話です

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