30紅葉の木の下で
とうとう 僕がベンチから落ちた
アルに引き上げれれて また 二人で座る
「ねえ アル
このカンテラの中で 風から守られて灯っているのもアルの灯
ここから 採火されて 集落中に散らばっているのもアルの灯
アルも時にはレイさんたちに守られていてもいいけど
もっと 世界を知ってね」
アルが黙って頷く
「僕 旅に出てよかった アルに会えてよかった
ハザマハーラに来て 初めて知ったことが
沢山あるんだ 僕はそれで とっても幸せになれた
ありとうね」
アルは黙ったままだ
「ねえ アル アルの火をつけたら 僕の今の話を思い出してよ そしたら
僕のコトも思い出してくれるでしょ?
僕も どこかでランタンの灯をみたら ぜったいにアルの事を想うよ」
「うん。。。」
やっと アルの声が聞こえた
僕はちょっと笑って アルの左の前髪をアルの耳にかける
顏を合わせて 話を続ける
「僕の故郷では 人は二度死ぬって言われていてね 一度目は身体が死んだ
時 二度目は忘れられた時 なんだって だから 僕の事忘れないでいてくれたら
僕はここにずっと生きているってことだからね」
アルが首を横に振りかけてから 思い直して 頷いて
「俺ことも 忘れるな」
っと 小さな声で言って また 俯きそうになるから
下から顏を覗き込む
「ねえ アル 僕ね 旅にでるのも 夢だったんだ 諦めていた大きな夢
一人では立ち上がることもできなかったけど 本を読んだり
絵を見てあれこれ想像して 心だけで 旅していたんだ でも 今なら
本当に自分の足で歩いて旅に出られるんだ だから ちゃんと送り出してね」
アルはいつだって 僕の事を分かってくれた
嫌いな学校だって連れて行ってくれたし 能力も見せてくれたし
嫌なはずの素顔を見せてくれた
それから 避けていた世界を自分で見ようと決心してくれた
だから 大丈夫 今回だって 分かってくれる
アルが 顏を上げて ニっと笑ってくれたのと同時に
ボっと音がして ロウソクの火が揺らめいて
消えた
「あ」
っと二人で同時に言って カンテラを持ち上げる すこし煙が残っている
けれど ロウソクは終わっている
「さあ 行こうか?!」
僕たちが立ち上がると同時に 後ろから使者の声がして 肩に手が置かれた
「ヒデ いい顏になりましたね これからの旅もこれなら安心です」
使者の少し嬉しそうな顔を見て また 父さんを思い出した
父さん 本当に無口で 必要最低限のことしか言わなかったけれど
僕の仕事机の向うから僕の方を見る顏は 今の使者の様にちょっと
嬉しそうだったな あの時の父さんは幸せだったよね?
僕は父さんを幸せにできたよね?
使者が次に アルの方を向いて
「アルも ありがとう」
とお礼を言った
アルが驚いてから 嬉しそうな顔になって頷いてモゴモゴ言っていた
今日のアルはずっと固い顏をしていたけど
やっと アルの笑顔を見る事が出来た
アルの笑顔はいつだって 僕を幸せにしてくれるよ
3人で アルの家に向かう
このカンテラを家において 最後の最後にアルの家族に挨拶したら
お別れだね
家の前の リンゴの木のところでトロワが待っているのが見えた
僕たちを見つけると 家の中に駆け込んだ
僕たちが家に着くのを
レイさん フィーさん トロワの三人が待っていた
「長 ヒデが世話になった 期待以上に子供らしくなった 感謝する」
短く 使者が告げる
「お弁当や お菓子が入っているからお腹がすいたら食べるのよ」
フィーさんが 僕を抱きかかえるようにして包を背中に括り付ける
最後のフィーさんの 甘やかし に僕を身を任せる
愛情いっぱいのフィーさんの過保護をアルが拒めない気持ちが分かる
トロワが苦笑してこちらを見ていたけれど 括り付け終わって
ポンポンっと 包が緩んでいないかをフィーさんが確認するのを待って
僕に 小さなカンテラを渡して言う
「兄ちゃんが 火を作るのは一日に一回って言われていた時に使っていた
カンテラ 古いけれど 私が今 ぴかぴかに磨いたわ 旅には必要でしょ?」
アルのカンテラ アルにとってもレイさん達にとっても記念のカンテラだろうに?
っと レイさんを見ると 笑って頷いて
「大事なものだから ヒデも大切に扱ってくれよ
使うときは 私たち家族を思い出してくれよ」
っと言った
アルを見ると アルも頷いていてくれた
背中に旅の包
手にカンテラ
本当に 旅に出るんだ 僕
使者を見上げると 使者が頷いた
僕は 頭を深く下げて言った
「ありがとうございました お世話になりました
ずっと わすれません」
そして
「さようなら」
もう少しだけお付き合いくださいませ




