28泣くことも大切です
アルが口を開きかけたのを 眼で制して 続ける
「ねえ アル この道草は本当に楽しかった
毎日が本当に楽しくて 嬉しくて
ビックリするくらい沢山泣いた
僕 前は泣かないようにしようと思ってたけど
泣くのもいいかな?
って気になってきた
泣いたら負けって思ってたけど
違うと思えてきた
沢山 泣いた方がむしろ経験値で勝ちかも?
せっかく泣くことができるんだから
むしろ泣いた方が勝ちかな? って」
って言ったら 本当に泣けてきてしまった
今日は 泣かないで話をしようと思ったのに やっぱり僕は泣き虫だなあ
見ると アルも泣きかけているから
「アルもさあ 泣いていいんだよ
悲しくても 悔しくても 嬉しくても
でも 笑うのは もっといいから
沢山 沢山 笑ってね」
って言いながら 今度は笑おう っとしたけれど
泣きながら 変な顔になっただけ だと思う
笑えない
「ヒデ 行かないで 寂しいよ」
アルが 泣きながら言う
小さな子供みたいだね
「ヒデともっと 一緒に居たい 話をしたい
ううん 横にいてくれるだけでもいい」
アルがポロポロを涙を流して泣きだしたから
珍しいくらい子供っぽくなったアルが愛しくて
さっきフィーさんが僕にしてくれたように
アルをぎゅっと抱きしめて頭を撫でる
自然に出る言葉は
故郷で僕が母さんからもらった言葉
「大丈夫 大丈夫 アルはいいこ
大丈夫 いいこ いいこ 」
それから 小さい子で言い聞かせるように付け足す
「もうちょっとだけ 素直になったら
もっと素敵なアルになる
沢山泣いて 沢山笑って いいこ いいこ 」
そのまま アルは眠ってしまった
僕はそうっとアルから離れる
アルの寝顔を見ていると
アルの事を存在だけで自慢なんだって言ってたフィーさんの気持ちが分かる
フィーさんには多分負けるけど 僕にとってもアルは宝物だ
アルが僕を大事に思ってくれるから 僕も負けないくらいアルを
大事に思って
それで いろいろおせっかいしちゃったなあ
ねえ アル いっぱい 甘えな
で 甘えさせてくれるフィーさん レイさんを自慢に思うんだよ
欲しいものもちゃんと言ってさ
願い事も沢山言ってさ
叶ったら ちゃんと感謝してさ
でさ
フィーさんたちはああいうけど
やっぱり 誇りに思ってもらえるように頑張んな
頑張ってるアルは とても素敵だからさ
できるよ
明日 あの父さんに似た使者がお迎えに来るのかな?
そしたら 僕は旅に出るんだから 寝不足は良くないよね
そんなに体力ある方じゃないものね
寝た方がいいけど 寝たらもったいない
アルの顔を見ていられる時間は限られているから
もしも もしも 明日 使者が来なかったら アルと笑おう
こんなことして 明日 使者が来なかったら 恥ずかしく思う
んだろうなあ っと思ったけれど
アルに手紙を書こうと思った
学校にもっていく袋から 石板と石筆を取り出す
あまりうまく書けないから
一番大事なことだけ伝えよう
明るい夜でよかったなあ
石板と石筆を机の上に戻して
それから また 布団に横たわって
アルの寝顔を眺める
夜中 眺めていたいと思っていたけれど
一回 瞬きしただけなのに 朝の光が差していた
子供の僕には徹夜は無理か?
故郷でもしたこと無かったものね
当たり前だけど 流石に太陽の光は月二つ分よりも明るいし
暖かいな
雨が降ったら 月ってどうなるんだろう?
月無の時みたいに暗くなるのかな?
そしたら 雨の中 アルは火を灯しに行くのかな?
フィーさんかレイさんがついて行くって言って
トロワが不機嫌になって
アルも不機嫌になって
でも アル優しいから
レイさんたちを拒むことも出来なくて
結局 不機嫌なまま 誰かと行くことになって。。。
想像したらちょっと笑ってしまう
もし このままの日が続くなら 僕が一緒に行くのにね
アルの顔がちょっと眩し気に歪んで
アルの顔を眺めていた僕と目が合った
「おはよう アル」
「おはよう ヒデ」
朝いちばんにお互いの顔をみて起きるのは始めただけど
いつも通りの一日の始まりだ
…多分…




